
元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
先週も様々なドラマが生まれました
2012/3/22(木)
春の風が吹き始め、センバツ高校野球が開幕しました。小さな白球を追いかける球児達の夢、甲子園ではどんなドラマが待っているのか、どんなニューヒーローの誕生があるのかとワクワクしながらテレビに噛り付く日々が始まりました。そのような春の風と共に、遅れていた桜前線が南方より咲き始めましたね。季節の変わり目にはよく雨が降り、最近は道悪の競馬が続いています。馬にも雨が得意な馬もいれば不得意な馬もいて、それもまた競馬を研究する上で大事な要素となってきます。
先週の阪神大賞典ではオルフェーヴルが今年の緒戦を迎えました。昨年の衝撃は未だに記憶に残っており、テレビの前で世界に通用する力に緊張すら覚えました。そんな彼の始動戦は下見所で映った姿を見る限り少々テンションが高く、固くなっていた姿を見て『謙一君、気をつけた方がいい!』と思わず叫んでしまいました。返し馬は上手に廻り、キャンターに移ると良いフットワークに見え、これならレースになると思いましたが、誰もが目を疑った2週目の向正面での暴走…。
これはジョッキーの判断ミスによるものと思います。下見所の段階から予兆はでており、単勝1.1倍の圧倒的支持を受ける重圧は計り知れないモノだと思いますが、何故、正面で辛抱できなかったのか?我慢できなかったのか?レースの中では一瞬の油断が命取りになることを再確認したレースでした。それでも、型破りな直線の末脚で底知れぬ能力を見せつけ2着は立派です。これからの凱旋門に向かって日本代表として戦って欲しい、そして謙一君も皆から応援されていることを忘れないでほしいです。そのレースで早くから大器と注目されていたギュスターヴクライは落ち着いたレース運びで重賞を初制覇し、これで天皇賞(春)へと胸を張って行けると思います。関係者の皆様、おめでとうございます!
また皐月賞トライアルの若葉Sでは西の大器ワールドエースが豪快なレースで勝ち、西から東へと視界を明確にしました。また、中山のスプリングSではグランデッツァがディープブリランテを難なく捕らえて勝利しました。本番でもこの2頭の活躍に期待します。そして中山ではもうひとつの重賞フラワーCが行われ、桜花賞への最終キップを巡り熱い戦いが繰り広げられました。このレースは大きいレースに勝つ実績馬の排出が多いだけに注目して見ていましたが、オメガハートランドが雨に目覚め、馬群の外から豪快に突き抜けた脚色は今後の活躍に注目していかざるを得ないものでした。
今週は中京競馬場の最終週で高松宮記念が行われます。傾向として芝は差し馬が有力であり、同厩舎対決となる横綱カレンチャンに、綱取りを挑むロードカナロアが注目を集めています。それに割って入る馬がいるとするならば、私は大魔神マジンプロスパーがキレのある直球で差し切るか、サンカルロ・ジョーカプチーノの巻き返しがあるか、サンダルフォンの大外強襲があるのかと考えながらレースを楽しみにしています。
今回は鼻出血について説明させていただきます。
レース中に鼻血を出す馬がいますが、原因はまだハッキリしていないというのが現状です。学問的結論は出ていないのですが、ゲートに頭をぶつけたなどの外傷性の単純なものは別として、冬季と夏季に多く発症する傾向にあります。またレースやトレーニング中に激しい運動をすることに原因があるともされています。そして他に考えられる原因としては下記が挙げられます。
● 疾走中の呼吸数、血圧の著しい上昇により毛細血管が破れる
● 鼻・肺などの呼吸器に病気がある場合
● 顔面打撲による鼻粘膜の損傷
● 肺充血、肺臓破裂、心臓病
馬は鼻でしか呼吸ができないため、鼻出血をすると呼吸が困難になり、競争能力に甚だしい影響を及ぼします。レース中に発症した場合の多くは大差で遅れてゴールインするか、途中で競走を中止するなど、騎手は勝負ズボンを真っ赤に染めて帰ってくる場合もあります。また、競走施行規約の中に出走制限があり、中央競馬の競走において鼻出血(外傷性のものを除く)を発症した場合、当該競走の施行日から起算して発症1回目⇒1ヶ月、2回目⇒2ヶ月、3回目以上⇒3ヶ月間と出走できません。それだけ呼吸器にかかる負担は大きく、馬を大事に育てるための法として定められています。
先週の阪神大賞典ではオルフェーヴルが今年の緒戦を迎えました。昨年の衝撃は未だに記憶に残っており、テレビの前で世界に通用する力に緊張すら覚えました。そんな彼の始動戦は下見所で映った姿を見る限り少々テンションが高く、固くなっていた姿を見て『謙一君、気をつけた方がいい!』と思わず叫んでしまいました。返し馬は上手に廻り、キャンターに移ると良いフットワークに見え、これならレースになると思いましたが、誰もが目を疑った2週目の向正面での暴走…。
これはジョッキーの判断ミスによるものと思います。下見所の段階から予兆はでており、単勝1.1倍の圧倒的支持を受ける重圧は計り知れないモノだと思いますが、何故、正面で辛抱できなかったのか?我慢できなかったのか?レースの中では一瞬の油断が命取りになることを再確認したレースでした。それでも、型破りな直線の末脚で底知れぬ能力を見せつけ2着は立派です。これからの凱旋門に向かって日本代表として戦って欲しい、そして謙一君も皆から応援されていることを忘れないでほしいです。そのレースで早くから大器と注目されていたギュスターヴクライは落ち着いたレース運びで重賞を初制覇し、これで天皇賞(春)へと胸を張って行けると思います。関係者の皆様、おめでとうございます!
また皐月賞トライアルの若葉Sでは西の大器ワールドエースが豪快なレースで勝ち、西から東へと視界を明確にしました。また、中山のスプリングSではグランデッツァがディープブリランテを難なく捕らえて勝利しました。本番でもこの2頭の活躍に期待します。そして中山ではもうひとつの重賞フラワーCが行われ、桜花賞への最終キップを巡り熱い戦いが繰り広げられました。このレースは大きいレースに勝つ実績馬の排出が多いだけに注目して見ていましたが、オメガハートランドが雨に目覚め、馬群の外から豪快に突き抜けた脚色は今後の活躍に注目していかざるを得ないものでした。
今週は中京競馬場の最終週で高松宮記念が行われます。傾向として芝は差し馬が有力であり、同厩舎対決となる横綱カレンチャンに、綱取りを挑むロードカナロアが注目を集めています。それに割って入る馬がいるとするならば、私は大魔神マジンプロスパーがキレのある直球で差し切るか、サンカルロ・ジョーカプチーノの巻き返しがあるか、サンダルフォンの大外強襲があるのかと考えながらレースを楽しみにしています。
今回は鼻出血について説明させていただきます。
レース中に鼻血を出す馬がいますが、原因はまだハッキリしていないというのが現状です。学問的結論は出ていないのですが、ゲートに頭をぶつけたなどの外傷性の単純なものは別として、冬季と夏季に多く発症する傾向にあります。またレースやトレーニング中に激しい運動をすることに原因があるともされています。そして他に考えられる原因としては下記が挙げられます。
● 疾走中の呼吸数、血圧の著しい上昇により毛細血管が破れる
● 鼻・肺などの呼吸器に病気がある場合
● 顔面打撲による鼻粘膜の損傷
● 肺充血、肺臓破裂、心臓病
馬は鼻でしか呼吸ができないため、鼻出血をすると呼吸が困難になり、競争能力に甚だしい影響を及ぼします。レース中に発症した場合の多くは大差で遅れてゴールインするか、途中で競走を中止するなど、騎手は勝負ズボンを真っ赤に染めて帰ってくる場合もあります。また、競走施行規約の中に出走制限があり、中央競馬の競走において鼻出血(外傷性のものを除く)を発症した場合、当該競走の施行日から起算して発症1回目⇒1ヶ月、2回目⇒2ヶ月、3回目以上⇒3ヶ月間と出走できません。それだけ呼吸器にかかる負担は大きく、馬を大事に育てるための法として定められています。

プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。