
元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
孝行息子達
2025/9/29(月)
皆様、こんにちは。すっかり秋の気候となり、朝晩は涼しく過ごしやすくなってきました。滋賀県では国民スポーツ大会も開催され、街が賑わいを見せています。スポーツの秋、食欲の秋、そしてG1レースの季節を存分に楽しみましょう。

その秋のG1シリーズが中山競馬場で行われたスプリンターズSで幕を開けました。ウインカーネリアンと三浦皇成騎手のコンビが、念願のG1初制覇を達成しました。鹿戸雄一調教師にとっては弟子と管理馬によるG1制覇、さらに勝ち馬の父も自身が管理したスクリーンヒーローという、孝行息子たちによる恩返しのような勝利となりました。
レースはスタート直後、ジューンブレアと武豊騎手が飛び出しましたが、前走から控える競馬を試みていたピューロマジックと松山弘平騎手は早々とポジションを下げる選択をしました。武豊騎手としてはピューロマジック陣営が今後を考えて出した逃げたくない意図を理解した上での逃げでした。これにピタリとつけていったのがウインカーネリアンと三浦騎手です。
武豊騎手は1コーナーの入りでグッとペースを落とし、後続が動けないマジックをかけたかの巧みな騎乗を見せました。これを見ながら三浦騎手は馬のリズムを大切に乗ったことで、最高のポジションを得ることができました。G1としてはかなり遅いペースで上がりが速いラップ構成となり、前の2頭で決着するのが直線に向いて見えたレース展開。
そこからは激しい叩き合いの末、三浦騎手の執念に応えたウインカーネリアンが勝利を掴みました。三浦騎手自身、ここまで多くの勝利を重ねながらG1タイトルに手が届かない悔しさに、時には諦めかけたこともあったかもしれません。それでも挑戦し続け、ついに掴んだ心からの称賛に値する素晴らしい戴冠でした。

今週からは東京競馬場、京都競馬場での開催。東京では毎日王冠、京都では京都大賞典が行われます。とりわけ毎日王冠ではエルトンバローズと西村淳也騎手のコンビが復活し、3歳馬サトノシャイニングも武豊騎手で予定されています。開幕週で楽しみなホウオウビスケッツやロングランなど、好メンバーが揃い踏みでワクワクしています。是非、現場でお楽しみください!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。