'14~'16年とJRA最多勝利騎手&MVJに輝いた戸崎圭太騎手による、大井競馬在籍時代から続く
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【番外編(下)】戸崎騎手から観たルメール、モレイラのすごさ&2018年のベストレースとは?
2019/1/31(木)
-:去年と言うと、どうしても下半期のイメージが強くなりがちなので、ファンやメディアの間でも外国人騎手の活躍が話題になったと思います。そこについては感じられる部分はありましたか?
圭太:まさにそうですよね。日本人騎手も刺激になっているでしょうし、色々な思いというか、考えさせられる部分というのはみんな持っていると思うので、どんどんレベルアップしていくんじゃないかなと思いますね。ただ、外国人騎手は素晴らしいですし、勝っているだけのことはありますよね。違う部分もありますし、やっぱり勝つということはすごいですよ。結果を出すということはね。
-:ファン向けに解説というか、紹介してもらうと、(クリストフ)ルメールさんの技術で光るところはどんなところでしょうか?
圭太:クリストフは全体のバランスですね。それは馬に乗るバランスだけではなく、競馬に対する考え方であったり、組み立て方だったり、馬への当たり方だったり、コンタクトの取り方、総合面でバランスが良くて、隙がないですね。だから、見習う部分はたくさんありますし、どんな馬にも対応出来ちゃうでしょうし、素晴らしい騎手ですね。
2018年のワールドオールスタージョッキーズシリーズ
ルメール騎手にビールかけで祝福する戸崎騎手
-:その考え方とは具体的にはどうでしょうか。
圭太:考え方というのはレースに対する向き合い方ですか。(レイデオロの)ダービーにしたって、あんなレースが出来るのか、という感じじゃないですか。例を挙げれば、あれが分かりやすいかな。
-:精神的な落ち着きですね。
圭太:そういう部分も含めてですね。考え方というか、感覚というか、でも、遅ければ、自分が行っちゃおうという考え方が出来るから、それが出来る訳であって、ただ闇雲に行っている訳ではないと思うので。
-:あまり逃げるということは多くない方ですよね。
圭太:まあ、そうですね。でも、全然そういうのもありとは思っているでしょうしね。
-:逆に逃げられた時は、ほぼ馬券になっている感じがしますね。
圭太:もともとはヨーロッパのスタイルで乗って来ているので、行くという感覚よりは少しコンタクトを取って、という方が強いんじゃないかなと思いますけどね。
-:また改めてなんですけど、ライアン・ムーアさんはどうでしょうか?
圭太:正直に言えば、去年はモレイラがすごかったので、ライアンの勢いがあまり感じられなかったですけどね。来た期間もかなり短かったですし。
-:2~3週間くらいでしたからね。
圭太:しかし、馬のことは本当によく知っているし、馬のことを考えてレースを組み立てるし、勝ちにも負けにもきちんと説明が出来るというか、勝つべくして勝っているし、負けた時もあるし。
-:それは、同じ検量室にいる訳ですから、他のジョッキーがどう説明しているかというのが耳に入ることもある訳ですよね。
圭太:英語だからそれは知らないですけど、そういう話は聞くのでね。
-:話題が出ましたけど、モレイラさんはいかがですか。去年は一緒に乗る期間が今までより長かったという感じがしましたが。
圭太:すさまじいですよね。
▲2018年は短期免許期間も長かったため、モレイラ騎手とも共に騎乗することが多かった
-:前は北海道で乗っている時にたまに乗るくらいだったせいか、そこまで評していなかった感じがしますけどね。
圭太:そうですね。ただ、頭が良いんですよね。頭が良いし、勝負の世界にいる人ですよね。強さも感じますよね。だから、これくらいで良いやとか、全てが全部全力投球というか、例えると的場(文男)さんに似たところがありますかね。そういう資質を持っている人ですよね。何をやっても成功するんじゃないかなという感じの人ですね。
-:他のジャンルでも、ということですね。
圭太:身体能力も高いでしょうしね。
-:今でも調教で数多く乗ったりされるそうですもんね。
圭太:そうですね。エネルギーもすごいでしょうしね。すごいですね。
-:しゃべることはあまりなかったですか。
圭太:あまりないですね。
-:ファンサービスなども、すごくしているイメージがあったんですけど、ジョッキー同士での会話はそんなに多くなかったと。
圭太:そうなんだ。そういうイメージはなかったですね。検量室の中ではあまりしゃべっているイメージはないですけどね。馬のことは調教師さんと話していますけど、騎手仲間でしゃべっているというのはあまりないかなぁ。
-:もちろん人それぞれですけど、逆にチームスポーツではないので、僕もあまりしゃべり過ぎてもどうか、という感じはしますけどね。
圭太:でも、それは個人差があって良いと思いますけどね。ただ、僕は寡黙というか、すごくクールな人に憧れますよね。石崎(隆之)さんだったり、ライアンにしても「職人」という感じで、格好良いですよね。
-:戸崎騎手は寡黙では…ない。
圭太:僕は寡黙ではないですね(笑)。昔よりは随分そっち風になってきましたけど。
-:何となくわかるところはありますね。
圭太:だから、前にもファンから「笑顔がなくなった」みたいなことを言われましたけど、それはそうだなと思いますよ。
-:他の外国人騎手で、オイシン・マーフィーさんはどうですか。
圭太:何か良い青年という感じですね。日本語をすごく覚えたそうな感じで、話していますけどね。声を掛けてくれるし、みんなにも声を掛けていますし、フレンドリーな感じはありますね。技術的にはやっぱり達者ですよね。それに、まだ若いですから、楽しみじゃないですかね。
-:まだ24歳で、色々な国に行って仕事をして、簡単ではないですよね。
圭太:それで、結果を出しているというのは素晴らしいことですよ。
-:続いてファンの方から「2018年で、この勝利が会心だったなというレースがあったら教えてください」ということですが。
圭太:やっぱり皐月賞(G1)ですかね。あれは思い通りというか、上手くいったレースだったので。G1を勝ったからと言うよりも、あんなにG1で上手くいくのか、と思いますね。
-:戦前から、ある程度ああいう展開になるというのは想定されていた訳ですか。
圭太:いや、あんなに速くなるとは思わなかったですよね。展開的には自分が主張するという考えもありましたけどね。
-:正直言えば、戦前は決して自信があるというお話はなかったじゃないですか。
圭太:はい。やってみないと…というのはありましたね。だから、ゴールするまで分からなかったですよね。何か来るんじゃないかと思いましたし、前は捕まえられるなというのは感じていましたけど、自分から仕掛けていっていますし、後ろに来られたらというのも少なからずあったので。
-:後々、クラシック勝ったことに対する影響も違ってくるものですか。
圭太:そうですね。周りの人の声掛けというのは大きく変わりましたからね。クラシックが付きますからね。さらにダービーはもっと違う世界なのかなと感じました。
-:平場でもそんなレースはありましたか?
圭太:う~ん、分かんないですね。あとは会心というのは、自分からよりも周りで感じてくれれば。
-:その時、その時で上手くいって勝ったなと思えるものもあれば、上手くいっていないけど勝ったなというのもやっぱりある訳ですよね。
圭太:それはそうですね。本当に、まずは馬の力ですよ。
-:長らく伺ってきましたが、最後に「去年一番悔しかったこと」はありますか。
圭太:(しばらく考えて)分からないです…。
熊野マネージャー:天皇賞(秋)除外で良いんじゃないの。
-:といっても、現場で観ていて馬がメチャクチャ煩かったですからね。
圭太:煩かったけど、最悪ですよ。悔しかったことと言うよりは、残念過ぎるよね。G1の返し馬で放馬というのは…。
マネ:走らせてあげられなかったというのは、参加することすら出来なかった訳ですからね。
圭太:仕事で言えば、失敗ですからね。仕事なんですから。
-:もちろんそうなんですけど、厩務員さんも、担当の方じゃなかったですもんね。
圭太:色々やり方はあったでしょうけど…。
マネ:どうこう言っても、そこはダメなんですよ。
圭太:乗ってなきゃいけないんですよ。それが仕事ですから。
-:僕はヤジをうるせえと思いながら聞いていましたけどね(笑)。
圭太:それは仕方ないですよ。しょうがないです。悔しいという感じではないですけど、それにしておきます。
-:僕はその時、見えなかったですけど、放馬した直後に正座をしたらしいですね。
圭太:そうそう。それがネットに出ていましたね。しかも、あの後、ハロウィーンパーティーがあったんですよね?渋谷の交差点で、あの勝負服を着て、正座をして「今週の戸崎圭太」ということで出ていたらしいからね。
-:それは初めて聞きましたね。
マネ:お手製の勝負服を作って、渋谷の人は大半「何だ、あれ。」という感じでしょ。みんなが笑ってくれるくらいメジャーなら別だけどね。
-:もう一度、伺うと、今年の目標は数字的なものはないということでいいですか。
圭太:ないというか…たくさん勝ちたいですよね。そのために色々取り組んでいる部分もありますし、結果は出したいというのが目標ですかね。数字的には毎年出していないし、その時々によってまた違いますからね。勝てるなら、年間200でも216でも勝ちたいですね。
-:今年も30代の子がけっこう活躍してきていますし、楽な争いにはならないと思いますが。
圭太:そうですね。レベルアップしていることは良いことですし、負けじと頑張りたいなと思いますよ。
-:その手応えももちろんあるということですね。
圭太:ありますね。
-:ちょくちょくそういうのも聞ければと思いますので。
圭太:まあ、ちょくちょく言う話でもないと思いますけどね(笑)。
-:ありがとうございました!
(聞き手:競馬ラボ・小野田)
※アガラスに騎乗予定のきさらぎ賞(G3)などの話題は通常通り2月1日(金)に公開します!
【番外編】(1/3)戸崎圭太騎手の2018年プレイバックはコチラ⇒
プロフィール
戸崎 圭太 - Keita Tosaki
1980年7月8日生まれ、栃木県出身。99年に大井競馬の香取和孝厩舎所属としてデビュー。初騎乗、初勝利を飾るなど若手時代から存在感を放っていたが、本格的に頭角を現したのは08年で306勝をマークし、初めて地方全国リーディング獲得した頃から。次第に中央競馬でのスポット参戦も増えていった。
11年には地方競馬在籍の身ながらも、安田記念を制して初のJRAG1勝ち。その名を全国に知らしめると、中央移籍の意向を表明し、JRA騎手試験を2度目の受験。自身3度目の挑戦で晴れて合格し、13年3月から中央入りを果たした。移籍2年目はジェンティルドンナで有馬記念を制す劇的な幕引きで初の中央リーディング(146勝)を獲得。16年も開催最終週までにもつれた争いを制し、3年連続のJRAリーディングに。史上初となる制裁点ゼロでのリーディングだった。19年にはJRA通算1000勝を達成し、NARとのダブル1000勝は史上4人目の快挙を挙げた。プライベートでは2022年より剣道道場・川崎真道館道場の総代表を務めている。