モズカッチャン

ドバイで調教を行うモズカッチャン

●初の海外&コース調教にも順応

大一番・ドバイミーティングがいよいよ今週末に迫ってきた。日本から挑むのは総勢14頭の優駿たち。どの馬にも力を存分に発揮してもらいたい。その中でもドバイシーマクラシック(G1)(芝2410m)に出走予定のモズカッチャン(牝4、栗東・鮫島厩舎)は、検量室前パトロール隊員にとって、昨年秋に"密着取材"し、G1獲りの感動を味わわせてもらった『特別な存在』だ。今回、遠征の検疫に入る当日という、まさに遠征直前の心境を、担当する古川秀太調教助手に聞いた。

モズカッチャンは今年緒戦となった京都記念で惜しくも4着という結果に終わった。「厳しいレースだったと思います。スタートで寄られて、外を回され、最後は荒れた馬場の内を突いて……。それでも上位とは差がない、いい内容だったと思います」と古川助手の表情は明るい。昨秋からの成長については「ちょっと体重は増えていましたね。しっかり乗り込んでいましたが、追いきりでもまだ少し余裕を感じていたのも事実です。ただ身体が大きくなってパワーが付いた分、力強くなったのは乗っていても感じます。テンションも上がらず、気性面の成長も感じています」と目を細めた。

昨年の春と秋の戦いぶりを見ても、使えば使うほど良くなる。「前に目標がいたほうがいい馬ですから、京都記念のように早めに抜け出したり、1頭になるとそこまで良くないですね。あと厳しい展開に加えて休み明けの分、最後バテてしまったとミルコ(デムーロ騎手)も言っていました。反動はなかったですよ。使ってから10日ほど放牧に出したところ、身体が絞れて凄く良くなったんです。状態はかなり上がっています」と力強い言葉を口にする。

『シンデレラガール』モズカッチャンにとって、今回は初めての海外遠征。3月13日に検疫入りし、20日に出国。そこから2週間のドバイ滞在となる。検疫に入る直前に栗東トレセン伺った今回、古川助手が忙しそうに馬具を運んでいる姿を見かけた。「検疫馬房に入ると他の馬より2時間前に調教しないといけません。それに加えて途中から馬具を持ち込むのもダメなんです。最初に持っていかないといけないんですよ。頭絡やハミ、メンコも、現地で使うものも含めて先に予備と一緒に持っていきます。1日5キロ食べる子ですが、餌もこちらのものを持っていきます。水は現地のものです。そこを気にするタイプではないから、ここはたぶん大丈夫」という。我々にとって普段検疫、そして遠征時の日常生活は馴染みのない事柄であり、話を聞いているだけで面白い。事前に遠征馬の関係者、輸送会社を集めてJRA事務所で競馬場やコースの説明会があることも今回初めて聞くことばかり。こちらも勉強になる。

「不安があるとすれば……」と古川助手が挙げていたのは『調教コースの問題』だった。「輸送でどうなるか分かりませんし、日本でしっかり仕上げてドバイへ行きます。カッチャンはずっと坂路でしか乗っていなかったんです。CWコースにはほとんどいれていませんでした。でもドバイはコースだけなので、そこが大丈夫か不安はあります。試しにこちらでCWコースに入れてみましたが、レースだと思って力んでしまうのか、ハミ噛んで行きたがっていましたよ」と出国前に不安を口にしていたが、現在は現地のコースでリラックスして走れているとのこと。至極順調にスケジュールをこなしている。

●目標は「有馬記念ファン投票1位」

栗東トレセンに入厩したのが2017年の1月末、それからわずか1年余りで担当馬とドバイ遠征を迎える『シンデレラボーイ』である古川助手自身も、今回が初めての海外渡航となる。「馬の遠征で初めてパスポート作るのも珍しいですよね。馬にいい経験をさせてもらえてると思います」と言いながら、2月にパスポートを取りに行った。「厩舎スタッフの皆さんにも『こんな機会はそうないから楽しんで来いよ』と言われています。あとは朝と昼と夜の作業の時間以外何をしようか考えていて……。ホテルにはプールもジムもあるようで楽しみです!」と話していたが、ここ数日連絡を取る限り、相当ドバイをエンジョイしている様子だ。

そんな『シンデレラ・コンビ』は日本時間3月31日(土)の深夜、決戦を迎える。「いい反応をするのですぐに抜け出してしまうのですが、ドバイの直線は平坦なので早めに抜け出してもバテずに走れるのではないでしょうか。リラックスしていて、いい時のカッチャンです。このままいってくれたら100%に近い状態で走れると思います。相手は強いですが、操縦性がいいですし、反応も良く、ジョッキーも乗りやすいと言ってくれます。勝負根性もあるので、僕は全然やれると思っています。内枠が欲しいですね。エリザベス女王杯のように内でじっと溜める形が理想です」と青写真を描いていた。

枠順抽選会で当たった馬番はなんと1番。まさに絶好枠。これにはさすがに驚きを隠せないようで、「ゲートを出て両方から挟まれる心配のない最内はいいですね!あとはゲートさえ出て好位で運べれば勝負になると思います!」と本番を心待ちにしているようだった。

2018年は「モズカッチャンを有馬記念のファン投票で1位にする」という目標を掲げる古川助手にとって、最近嬉しいこともあったという。「エリザベス女王杯を勝ってから、応援してくれる人が増えたんです。ここを勝って、ファン投票上位で宝塚に行きたいですね」と語り、最後にこう締めた。「カッチャンなら、全力を出し切って1着を獲ってくれるはずですよ。勝ちに行きます!」。このコンビなら、世界の頂点に立つことも夢ではない。

モズカッチャン

ドバイで調整されているモズカッチャン