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騎手コラム

菊花賞のテーマは「魔の3冠目」

今秋はオレが勝ったことがある菊花賞、天皇賞(秋)、マイルCS、有馬記念で、それぞれの思い出とともに、レースの展望を語ってほしいってオーダー。馬券の参考になるかは分からねえけど、騎手目線でこんな要素があるってことを伝えていければと思っとる。その一回目になる菊花賞やけど、テーマは「魔の3冠目」やね。それはザッツザプレンティで勝った第64回ではネオユニヴァースの3冠を阻止して、ウインバリアシオンで2着に敗れた第72回ではオルフェーヴルに3冠を達成されてしまったため。奇しくも今年はドゥラメンテが2冠を達成しているものの、故障で3冠目に出走すら叶わず、波乱が謳われているという状況。ここで手記を公開となると「魔の3冠目」との縁は語らずにはいられんね。

『相手が下手に乗ってくれた』

この年の大本命は3走連続で先着されとった2冠馬のネオユニヴァース。ダービー2着馬のゼンノロブロイしかり、能力はライバルのほうが明らかに上やったと思う。ただ、ザッツにスタミナが抜群にあることはかねてからのレースで感じとって、とにかく相手は意識しないで、自分の競馬だけを貫こうという作戦やった。スタートを切ってから終始、馬の行く気に任せて、中でも一番の勝因やったんが、それまで「京都の坂下ろしはソロっと」と言われていたセオリーを無視して、あそこからロングスパートをかけたこと。これによって後方のミルコが焦って追い出して、それを待っていたペリエまでが自滅してくれた。リンカーンのノリは出し抜けって競馬やったし、ようはオレが上手く乗ったというよりも、相手が下手に乗ったというイメージが強かったね。それこそ、負けてればクビにされてもおかしくないレースやもん。こういったプレッシャーに打ち勝って3冠馬になったディープインパクトやオルフェーヴルはとんでもなく強い馬であることを改めて強調しておきたい。

菊花賞

安藤勝己の「名騎乗の一つ」とうたわれる2003年の菊花賞だが、自身の評価は…


第72回②着 ウインバリアシオン 議論を呼んだ最後方待機の真相

菊花賞

打倒オルフェーヴルの秘策実らず2馬身1/2敗れたウインバリアシオン


そんなオルフェーヴルの3冠を何とか阻止しようと挑んだんがウインバリアシオンや。夏を越した秋緒戦の神戸新聞杯は春に比べて歩様が良うなっとって、正直なところ「本番前の仕上げのオルフェなら勝てる」と思っとった。それが2馬身半差の完敗…。あのレースが幾度もの対戦で能力の差を最も実感した。そこで菊花賞に向けての秘策は、もう「出し抜け」しかないと思って、最後方からのレースを選択することに。後にオルフェは凱旋門賞で、抜け出して遊んだところをソレミアに差されるという失態を犯すけど、あの競馬こそがオレの菊花賞での狙いやった。ところが、内を捌くと決めとった直線は前が開かず、馬群を縫うように2着を確保するのに精一杯。あの連対はバリアシオンの力でもぎ取ったようなもんで、普通の年であれば菊花賞馬になっとった。あえて敗因を挙げれば、オレ自身が3冠馬の力に戦前から屈していたのかもしれない。デキは本当に良かっただけに、真っ向勝負でぶつかっとったら……と考えると、今でもモヤモヤした気分になる。来週も書かせてもらうけど、ダイワスカーレットでウオッカに負けた天皇賞(秋)に次ぐ苦い思い出やね。

暫定2強の取捨をこう見る

2冠馬ドゥラメンテが両前脚の骨片摘出手術で戦線離脱して、前哨戦で最も中身がある内容をしよったトーセンバジルが外傷で回避。こうなると、神戸新聞杯を快勝したリアファル、同2着で既成勢力のリアルスティールが本番でも人気を集めそうや。まず、芝への転戦とルメールで2戦2勝のリアファルやけど、ダート中距離を主戦場にしてきただけあってスタミナは抜群にありそう。前2走も逃げたくて逃げたという感じはなかったで、スピリッツミノルあたりが主張するようなら2番手でも収まるはず。マークされるという懸念はあるけど、他も死角を抱える相手関係やからね。ルメールがプレッシャーで硬くなるとも思えねえし、上がり馬の勢いを見せ付ける可能性は否定できない。

考えることが多そうなのはリアルスティールのほうや。こっちは折り合いに不安があって、ただでさえ慎重に乗るユーイチがこの距離でギャンブル的な乗り方をするとは思えんのや。エピファネイアほどの怪物的なエンジンを積んどるわけでもないしね。ただ、内々をピッタリ回れる枠を引ければ分からねえ。それこそ前にいるライバルをマンマークで競馬できるわけやから。ザッツとバリアシオンを比べれば正解だったのは馬任せに乗った前者やけど、その2頭を比べれば能力はバリアシオンのほうが上。すなわち、ジョッキーには弱点を気にしすぎず、負けた時に納得する競馬を選んでほしい。今年は、それこそ上手く乗った人馬が制しそうなメンバー構成やけど、展開に関しては2頭が鍵を握っとることは間違いない。枠順と馬場まで加味したオレの最終結論は、土曜夕方にメガ盛り競馬新聞で公開やね。

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