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騎手コラム

オモテの有馬記念 第53回優勝 ダイワスカーレット

この秋は3回に渡って思い出を語ってきたコーナーやけど今回でファイナル。オモテの有馬記念としては第53回で優勝したダイワスカーレットを語らねえわけにはいかんやろ。まず3歳牝馬で挑戦した前年の第52回は、引退レースのダイワメジャーと番組が被ったんや。本年を言えばオレと抜群に手が合っとったメジャーに乗りたかったけど、同じ馬主さんと言うのもあるし、翌年からのことを考えてスカーレットに乗せてもらったわけ。せやけど当時は距離の心配ばかりしとって、正直なところ②着まで踏ん張れるとは思わんかった。あれはメジャーが妹とオレに遠慮してくれた分もあったんじゃねえかな。とはいえ、能力と適性を再認識したことも確かで、今になって思えば翌年に勝つ糧になった一戦やね。

そして、能力を信じて逃げちゃえば負けねえと臨んだのが翌年の第53回。前走にあたる休み明けの天皇賞(秋)がそれは酷いレースで、あんな競馬をして2着に残るんやから、スカーレットのペースさえ保てば一番強いという自負があった。1回使ってから多少は落ち着いたんやけど、天皇賞(秋)直後からハナ以外は頭になかったね。スカーレットは1回も出していったことがないんや。スタートは抜群に速いし、すぐにトップスピードにのってくる。いつもゲートを出て、位置なんか取りにいったことがない。それで最初は下げることをしてたんやけどね。考えたらデビューから馬任せで行ってたら、全部勝ててたんやないかな。だって、この有馬記念も②着はユウガが死んだふりをしとったアドマイヤモナーク。③着も後藤が欲を出さなかったエアシェイディで、スカーレットを負かしに動いた人気馬は全て掲示板外に沈んだ。いかに厳しいラップを刻んだかが結果に表れとって、歴代の有馬記念でもディープインパクトやオルフェーヴルに負けねえインパクトがあったとオレは思っとる。

有馬記念

逃げ切りで第53回有馬記念を制したダイワスカーレット


ウラの有馬記念 第55回④着 ペルーサ

今年の札幌日経オープンで逃げて、約5年ぶりの勝利を挙げたペルーサ。オレも現役時代は苦楽をともにした、個性派として印象深い一頭やね。とにかく頭が良くてスタートに一癖も二癖もある馬で、この有馬記念から2走前の天皇賞(秋)ではやっぱり出遅れたけど、最後方から勝ったブエナビスタを凌ぐ上がりを繰り出して②着。「五分のスタートさえ切ればG1も勝てるやろと美浦トレセンに通って、ゲート練習に勤しんだもんや。ところが、頭が良すぎるがために、その練習が逆効果になっとることが次のJCで分かった。というのも、ゲート練習は入れてから枠内駐立までを主体にしとって、いつも出すのは競馬と違って後ろから。この時も後ろにもたれたり閉められた扉を蹴ったりすれば出してくれると思ったようで、その仕草を見て「なるほどね」とピーンときたんや。

直後からは厩舎に頼んでゲート練習時も前から出すようにしてもらって、臨んだ第55回の有馬記念は思惑どおりに五分のスタート。藤沢和先生とは「出れば行っちゃおうか」なんて話もしとって、スタート後は4番手、道中で5番手あたりの位置取りに内心は「もらった」とほくそ笑んどった。ところが、いつもとは違う箇所で脚を使っとるもんで、勝負所で仕掛けてもアレアレといつもの反応がなし。結局はダラッーと回ってきただけの④着と、改めて競馬の難しさ、いやペルーサの難しさを実感したもんや。それでも、後になって結果を振り返れば、勝ったヴィクトワールピサと2着のブエナビスタに0秒1差で、ルーラーシップにエイシンフラッシュ、ダノンシャンティやドリームジャーニーに先着しとるんや。結局、相手が悪かったことも確かで、少しの勝負運がオレ達になかったのかもしれないね。

有馬記念

安藤勝己とのコンビは8戦も数えるペルーサ


優秀の美を飾れるか!? ゴールドシップの引退レース

そんなペルーサ陣営が今年も参戦を表明も出走叶わず……。この馬に関しては来年も応援するとして、ここで語らなければいけないのは、ついに引退レースを迎えるゴールドシップやろね。オレも2歳時に2回乗ったことがあるけど、まさかこれほどまでの馬になるとは思わんかった。ただ、当時からやんちゃでゲートに課題はあったし、馬力がついたというだけで、タイプ的には大きく変わらない。重賞を勝たせられんとクビになって内田とのコンビが誕生したわけやし、この馬に関してはレース毎に盛り上げ役として特徴を発信できたで、それはそれでよかったと思っとる。事実として「アテにならねえ」ところがあるで、その発言ばかりがクローズアップされて「アンカツはゴルシ嫌い」なんて言われたりもしたけど、それは大きな誤解で、心底から「無尽蔵のスタミナはケタ違い。記憶に残る名馬」やと思っとる。本音を言えば、オレが乗ったことがある同じ芦毛のオグリキャップのように有終の美を飾ってほしいよね。

そして、その有終の美というのも実際に可能なんやないかな。能力的なものに関しては3走前の天皇賞(春)が示すとおりに衰えがねえし、2走前の宝塚記念は歴史にも残る大出遅れ。前走のジャパンカップはただでさえ不向きなコースで休み明けに加え、ディープ産駒がワンツーで来るような馬場と展開。一番の課題はゲートをやらかさないことであって、状況次第ではこの有馬記念を迎えられなくなる可能性もあったわけやからね。安全パイならぶっつけグランプリか、ゲート再審査明けでも間に合う天皇賞(秋)を選んどったはずで、ある意味で陣営にとって勝負の一戦やったと思う。これで状態は上向くやろうし、実際に制している舞台やで、暮れの中山2500mはゴールドシップにとって最適のコース。スタートさえ普通に出れば、十分に勝ち負けできるんやないかな。また、そういった奇跡が起きるのが有馬記念というレースやね。

有馬記念

2011年のラジオNIKKEI杯(後方に映るのが安藤勝己とゴールドシップ)


引導を渡すべくライバルたち 様相は「JC組 VS 3歳馬」だが…!?

ゴールドシップに立ちはだかるのがJCの②③着馬。切れ味が身上のディープ産駒ラストインパクトに本格化したラブリーデイ。共通して言えるのは距離が延びるのはプラスではねえことなんやけど、コーナーで息が入るもんで、冒頭のダイワスカーレットとメジャーのように能力でこなしてしまう馬も少なくない。そういった意味で、この2頭は強行軍で状態を維持しとるか否かのほうが重要やね。

3歳の菊花賞組からはキタサンブラックとリアファルが参戦。キタサンの菊花賞はその他の上位入線馬がスムーズな競馬ができとらんかったのとは対照的に、北村宏が「同じ競馬を二度やれといっても無理」というレベルの好騎乗をしとる。いくらノリとはいえ、このテン乗りはプラスとは思えねえし、それなら人気面からもリアファルのほうが面白い。今回は気楽な立場やから、メンバー的にマークがそうキツくなることはないやろ。ルメールもJRAに移籍してG1をひとつ勝って、脂がのってきたころや。こっちは牝馬やけどルージュバックも気になる一頭。エリザベス女王杯のときは、オークスからのぶっつけやったうえ、秋華賞に間に合わなかったって事情があったほど。それでも後方から思いのほかいいレースをしとって、力を示したといえる内容。この馬に関しては状態が悪くなるわけがねえと思うし、ケイタにしても昨年勝っとるレースやからね。

別路線から挙げとくならゴールドアクター。能力の裏付けは昨年の菊花賞③着が示すとおりやし、前走のアルゼンチン共和国杯は人気を背負った上で、とても届かんって思えた位置から差し切っとる。それも道悪でや。いい脚を長く使えるタイプでこの馬は2500mもドンピシャ。ここにきて順調に使われるようになった点にも好感が持てるし、悪くねえローテーションやと思うけどな。現時点では核心には触れねえ展望にしとくけど、話題には事欠かねえのがグランプリウィーク。この後は枠順が出とる金曜にニコ生で討論して、馬場状態まで加味したオレの最終結論は、土曜夜にメガ盛り競馬新聞で公開やね。

アンカツの有馬記念◎最終ジャッジは
レース前日12月26日(土)夜に公開します!