ジャスタウェイ、一気に差し切って天皇賞(秋)を制覇!…平林雅芳の目

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13年10月27日(日)4回東京9日目11R 第148回 天皇賞(秋)(芝2000m)

ジャスタウェイ
(牡4、栗東・須貝厩舎)
父:ハーツクライ
母:シビル
母父:Wild Again


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前日の重馬場から大幅に回復して良馬場となった天皇賞(秋)。トウケイヘイローの逃げから始まったが、2番手にジェンティルドンナがつける全体に速い流れとなった。中団の1頭だけ揉まれない絶好のポジションで進められたジャスタウェイが、直線に向くと残り300あたりから馬群の外目を一気に加速して前を捕え、あっと言う間に決定的な差をつける4馬身の差で天皇賞を制覇した。3着にエイシンフラッシュが追い上げてきて確保はしたが、直線で馬群の切れるのを待たされる時間が長くなってしまっていた。よく最後に突っ込んではきたが、勝ち負けには関係ない脚色となっていた。
それにしてもジャスタウェイの強さよ。1頭だけ違う脚色で、最後は4馬身差の楽勝劇で楯を制したがこの馬自身、過去最高の競馬ではなかった…か。


前日の土曜は雨が降り続き、かなり悪いコンディション。直線では内を避けて、馬場の真ん中ぐらいでの戦いであった。そして伸びも外にいく程に伸びていた。それが、一夜明けてこれほどに回復するとは。風もあっただけに、けっこう馬場の乾きを早めたのだろう。朝から内ラチ沿いを伸びて行く馬が、ゴールへ真っ先に入っていた。そしてついに馬場発表も良馬場となった。
スタンドから一番見えにくい1コーナーのさらに奥まった処からのスタート。ゲートだけは良く見える。外めがかなり不利だなと、一目歴然の造りだ。

ゲートが開いた。トウケイヘイローがいつも程のダッシュ力がない。と言うより、さすがにこのクラスの馬達は、ゲートの出も遅くないのかも知れない。真っ先に飛び出したのがジェンティルドンナ。馬群から1馬身は抜けていた。トウケイヘイローが先手を取っていくまでに、3完歩ぐらいはあったのではなかろうか。
最初のカーヴへと入って行ったトウケイヘイロー。2番手にジェンティルドンナが続く。北海道で、イヤと言う程にトウケイヘイローが渋太い事を知っている岩田Jらしいマークの仕方であろうか。内からダイワファルコン、外からレッドスパーダ、この3頭が2番手グループとなっていく。その後ろにコディーノ。今日はゲートも五分に出ていた。隣りにアンコイルド。外にダノンバラードで、エイシンフラッシュはこれらの後ろ。そして後ろがナカヤマナイトトゥザグローリートーセンジョーダン、ジャスタウェイと続く。トウケイヘイローはスローで逃げる馬ではない。けっこうなラップを刻んでいっている事だろう。そして向こう正面に入っていった。

トウケイヘイローの逃げが、後ろを1馬身から2馬身と、差を少し広げてきた。けっこう縦長の展開になっている。2番手グループに7頭が連なってきている。エイシンフラッシュがその直後の8番手ぐらいの内めにいる。ナカヤマナイトとジャスタウェイの位置で、ちょうど真ん中ぐらいである。1000メートル通過が《58.4》と出る。これが速いのかが判らない。
そして3コーナーへと入っていく。4コーナーへと向かう程に、馬群がだいぶ短くなってきている。2番手グループがさらに固まり、その後ろのエイシンフラッシュの外へジャスタウェイが接近してくるのが見える。そのジャスタウェイが外めへと上がっていって、最後のカーヴを廻った。もう手応えが悪くて追っている馬もいる。

直線に入ってきたトウケイヘイロー。残り400まで待って追い出した。すぐにジェンティルドンナが近づいてきている。と、その時、外から一気にジャスタウェイが違う脚色で上がってきた。ジェンティルドンナがトウケイヘイローを交した時に、同じタイミングで一番前へと出て行った。
残り200のハロン棒を先頭で通過のジャスタウェイ。みるみるジェンティルドンナとの差を広げていく。抜け出ていっても、福永Jの右ステッキは入れられていく。ジェンティルドンナの後ろではコディーノ、アンコイルドが3番手争いをしている処へ、やっと外へ進路を見出したエイシンフラッシュが上がってきて交して入った。

引き上げてきた馬を待つ。ジャスタウェイのオーナーと、社台の吉田照哉氏との会話が聞こえる。《セリで1200万で買った馬ですよ》が真っ先であった…。トウケイヘイローの武豊Jが、《リキんでしまっていた…》と鞍を小脇に抱えて検量室へと引き上げていった。
そしてパトロール・ビデオを何度も繰り返し観る。昨年の年度代表馬を4馬身。天皇賞馬エイシンフラッシュを、さらに2馬身も負かしたジャスタウェイ。毎日王冠で2着だったが、脚色は勝ったエイシンフラッシュへとただ1頭だけ迫っていく脚色ではあった。そして今週の追い切りで、ゴールドシップがまだまだ先の目標がある段階だったとは言え、文句なしに手応えで圧倒した動きを見せていたジャスタウェイ。

これで3勝。新馬、3歳時にアーリントンC。そして今回の天皇賞(秋)と、福永Jとのコンビでの集大成。先週の菊花賞に続いて牡馬での頂上制覇と、只今絶好調の福永Jである。そんな秋の好天に恵まれた天皇賞(秋)であった。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。