三冠馬の次走はハスケル招待S[和田栄司コラム]

三冠最終戦のG1ベルモントSで5馬身半の歴史的トライアンフから2ヶ月が経とうとする2日、「三冠馬アメリカンファラオの新しいスタートが、8月2日モンマスパーク競馬場で行なわれる100万ドル競走のG1ハスケル招待S(D9F)に決まった」と、オーナーのアーメド・ザヤット氏が発表した。「私はまだ3歳馬相手に走り続ける彼のレースを見たい。三冠達成後のレースで簡単に勝ってくれる彼の走りを見たい」と話す。

アメリカンファラオは、6月26日サンタアニタパーク競馬場で殿堂入りボブ・バファート調教師の為に3ハロンの調教に戻った。カリフォルニアの調教師は01年ポイントギヴン、02年ウォーエンブレム、05年ローマンルーラー、10年ルッキンアットラッキー、11年コイル、12年ペインター、そして14年バイヤン、計7回優勝しているハスケル招待Sに目標を置き、ニュージャージー州オーシャンポート近郊にあるモンマスパーク競馬場に向かうことになる。

バファートは調教師としてハスケルの勝利記録を持っているけれども、彼は2011年以来モンマスパーク競馬場に行っていない。62才のバファートは、2012年の3月にドバイで心臓発作を起こした後、その代りを務めているのがアシスタントトレーナーのジミー・バーンズである。2012年ペインターでザヤット氏と旅をしたのもこのバーンズだった。そして2014年のバイヤンでカリーム・シャー氏と旅をしたのもバーンズだった。

今シーズン初め、ボブ・バファート調教師はアーカンソー州のオークローンパーク競馬場へアメリカンファラオと一緒に行っていない。アメリカンファラオはそこでG2レベルSとG1アーカンソーダービーを連勝したのである。今彼はトリプルクラウンチャンピオンになった。そして「勿論私もそこにいるでしょう」とボブ・バファート調教師は明言した。

ハスケル招待Sに書かれている条件には、三冠レースを勝った勝馬のオーナーとトレーナーに2万5000ドルのボーナスがそれぞれ支払われることになっている。三冠馬であるアメリカンファラオは、かける3となり7万5000ドルのボーナスが、それぞれアーメド・ザヤット氏とボブ・バファート調教師に用意され、優勝と同時に支払われることになる。

10月31日、ケンタッキー州レキシントンのキーンランド競馬場で行なわれるG1ブリーダーズカップクラシックを最後に引退(引退後はアシュフォードスタッドでの繋養が決まった)への道が敷かれるアメリカンファラオ、三冠馬の残されたレースは限られている。ハスケル招待Sの後、ザヤット氏は125万ドル競走のG1トラヴァーズSを走らせるとも言っている。

ザヤット氏は、サラトガ競馬場の歴史と温泉に強い敬意を払っている一人である。トラヴァーズSは真夏のダービーとして知られている。しかし、望んでそのタイトルを取りに行く馬は少ない。ボブ・バファート調教師にとっても2001年のポイントギヴンで挙げた1勝のみである。異なる6つの競馬場で7つのレースを勝ち、その内の6つがG1レースというアメリカンファラオ、避暑を兼ねたサラトガ競馬場でのトラヴァーズS出走は全くあり得ない話ではない。

この14日にはデルマー競馬場でパレードが行なわれ、相変わらず三冠馬は競走以外で忙しいスケジュールを熟している。ハスケル招待Sには、G1ホープフルS勝馬で5月にチャーチルダウンズ競馬場のG3パットデイマイルSを勝っているコンペティティヴエッジ(牡3歳/父スーパーセイヴァー)、トッド・プレッチャー厩舎からはG2ルイジアナダービー2着馬で最近モンマスパーク競馬場の準重賞ロングビーチSを圧勝したスタンフォード(牡3歳/父マリブムーン)が名を連ねている。

6月21日モンマスパーク競馬場のG3ペガサスSで重賞初優勝したミスタージョーダン(牡3歳/父カンサロス)、ペガサスS2着のテクトン(牡3歳/父バーナディーニ)、ペガサスS3着のグッドピックニック(リジ3歳/父タピット)も登録、その他G1ベルモントS3着のキーンアイス(牡3歳/父カーリン)、G3アイオワダービーで重賞初制覇したベントオンバーボン(牡3歳/父アーチ)、G2リズンスターS2着でオハイオダービー4着のウォーストーリー(セン3歳/父ノーザンアフリート)が出走の構えである。


海外競馬評論家 和田栄司
ラジオ日本のチーフディレクターとして競馬番組の制作に携わり、多岐にわたる人脈を形成。かつ音楽ライターとしても数々の名盤のライナーを手掛け、海外競馬の密な情報を把握している日本における第一人者、言わば生き字引である。外国馬の動向・海外競馬レポートはかねてからマスメディアで好評を博しており、それらをよりアップグレードして競馬ラボで独占公開中。