3強破って金星挙げたディーマジェスティがまず1冠!蛯名「平常心で乗れた」

●4月17日(日) 3回中山8日目11R 第76回皐月賞(G1)(芝2000m)

「3強」という言葉が躍り続けた1週間だったが、大一番の直線で先頭に躍り出たのは、伏兵・ディーマジェスティ(牡3、美浦・二ノ宮厩舎)であった。

これがクラシック初勝利となった二ノ宮敬宇調教師は「びっくりしています。最後は一頭だけ違う脚でしたね」と、驚きを隠せない様子。「日高の小さな牧場で産まれて、育成も日高で。その頃からずっと見てきましたが、非常に手の掛からない馬でした」と、G1馬となった愛馬との記憶を振り返った。今年も4年前のゴールドシップを彷彿とさせるように、共同通信杯から直行の皐月賞馬誕生となったが「今まで経験してきて、いかにロスなくクラシックに挑めるか。それを考えてきました。もし前走以降にレースを使っていたら、今日の結果もこうはならなかったかもしれません」と、考え抜かれたローテーションであった。

「一番いいのは心肺機能の高さ。息の入りにロスがなく、沈み込むような走りをするんですよね」と、愛馬のセールスポイントを真剣に語る師であったが、話題が騎手のことになると、途端に表情を崩した。「今日は馬場が若干渋っているという話でしたが、ジョッキーが冷静に乗ってくれましたよ。初めて蛯名くんには感心したなあ(笑)」と、冗談交じりに話すその裏側には、築き上げてきた両者の信頼関係が確かにあった。


「すべてがうまくいきましたね」と語るのは蛯名正義騎手。しかし、その2000mの道のりは、決して簡単なものではなかった。「こんな強風だから、ペースが速いのか遅いのか読みづらい一日でした。ですが。こういう日だったからこそこんなハイペースになったのではないかとも思います。この展開がこの馬にとって1番のチャンスだと思いましたし、坂を上がってくる時は万全。突き抜けました」

3強と呼ばれた強力なライバルを破っての戴冠。その上、直線完全に突き抜けての勝利だ。29年のキャリアを誇る大ベテランはダービーでは、これまでフェノーメノとイスラボニータで2度2着惜敗の経験があり、未だに勝利を挙げていない。「前走よりもしっかり追い切りができていましたし、次(日本ダービー)も非常に楽しみです」と、やはり大一番への期待もかかる。伏兵から一転、次は人気を集める立場となる。ましてやダービー、大きなプレッシャーが襲いかかるだろう。それでも蛯名騎手はそれに打ち勝つ大きな武器の存在を口にした。「もともと利口で平常心を崩さない馬。だからこそ僕も平常心で乗れましたし、こういう舞台では大きなことですね」

レース後、ウィナーズサークルで行なわれた勝利騎手インタビューでは、熊本で起きた大地震への募金活動を競馬場で行うことを最後に発表した。思えば、東日本大震災のときも、常総地方の大雨のときも、自ら募金箱を持ち、率先して活動を行なってきたのは蛯名騎手だった。来週の競馬場でもその姿が見られることは間違いないだろう。そして、その大ベテランの姿は、1ヵ月後の府中でダービーという大きなタイトルを手にしている、スーパースターかもしれない。

ディーマジェスティ

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