【オークス】距離が長い?桜花賞馬エンブロイダリーは東京芝2400mを克服できるのか

オークスは8着だった桜花賞馬ソダシ

オークスは8着だった桜花賞馬ソダシ


突然ですが記事をご覧になっている皆さんの競馬ライフで、「なんでやねん!」と叫びたくなったレースはありますか?(「そんなこと毎週だよ!」というのは無しでお願いします)。

不肖・競馬ラボのイチ研究員として毎週お馬さんの記事を書いている筆者は、1997年オークス(G1、東京芝2400m)で11着に敗れたキョウエイマーチです。

前走の桜花賞は旧・阪神競馬場で不利な大外18番枠から、2着メジロドーベルに4馬身差を付ける圧勝。当時から2400mに距離延長を不安視する声はあったものの、単勝2.2倍の1番人気に支持されました。

単勝馬券を握りしめ抜群の手応えで直線を迎え、カメラが直線映像に切り替わった途端、馬群に飲まれていくシーンは、まさに“なんでやねん”でしたね……。

ちなみにキョウエイマーチは古馬になってから短距離路線に転じ、芝1200mの重賞を勝ったスピードタイプ。距離が長かったのは誰の目にも明らかで、最近だと21年のオークスで8着に敗れた白毛の女王ソダシ(後に桜花賞など芝1600mのG1競走3勝)が近いかもしれません。

いま振り返ると我ながらセンスの無い予想だと苦笑する反面、それは“後の歴史”を知っているからこそ。当時は筆者も含めて多くのファンがキョウエイマーチの可能性を信じていたからこその1番人気であり、21年ソダシに関しても同様のことが言えます。

距離適性を含めて予想するのが競馬の醍醐味ながら、タイムマシーンや未来人でも無い限り百発百中は至難の業。それは過去10年で桜花賞馬の成績が[4-1-0-3]という両極端な結果からも、オークスの難しさを表しています。

▼桜花賞馬のオークス成績(過去10年)
[4-1-0-3]勝率50% 連対率62.5%

▼オークスで馬券外に敗れた桜花賞馬
21年 8着 ソダシ(1人気)
17年13着 レーヌミノル(4人気)
15年10着 レッツゴードンキ(3人気)

果たして今年の桜花賞馬エンブロイダリーは、東京芝2400mを克服できるのか。ここでファンを悩ませるのが同馬の血統背景でしょう。

父アドマイヤマーズはG1競走3勝を含む全6勝を芝1600mで挙げた生粋のマイラー。産駒成績も1600m前後に集中していて、辛うじて2000mを勝った馬が1頭のみ。2200mを超える距離で勝利した馬はゼロです。

母ロッテンマイヤーは16年忘れな草賞の勝ち馬も、同年のオークスでは13着に大敗。その後は短距離路線にシフトして2勝クラスの芝1400mを勝利、芝1200mでも2着に入ったことがあります。この辺は冒頭で紹介したキョウエイマーチを彷彿とさせますよね?

お世辞にも血統的に芝2400mは歓迎とは言い難く、エンブロイダリー自身が芝1800mの未勝利戦をレコード勝ちした経験ありも、22年8着ソダシも芝1800mの新馬、札幌2歳Sを連勝していました。これにより「中距離戦で勝利=オークスでも好走」という図式は当てはまりません。

エンブロイダリーも距離の壁を克服できず敗れてしまうのか。ズバリ、キョウエイマーチでの苦い経験から得た筆者の結論は「ノー」です。

その根拠となるのがオークスで馬群に沈んだ桜花賞馬3頭の『脚質』です。21年ソダシ、17年レーヌミノル、15年レッツゴードンキは、前走桜花賞で「4コーナー1~4番手」から勝利していました。

古い話ながら1997年キョウエイマーチも、桜花賞は道中2番手から抜け出し。オークスではスローの流れを押し出されるようにハナを切っており、スピードを生かして前々で競馬をするタイプにとって、東京芝2400mの舞台替わりは大幅な割引材料となります。

翻ってエンブロイダリーは、桜花賞で見せた鋭い切れ味が最大の武器。つまり、控えて末脚を活かす競馬ができる同馬であれば、前に行きオークスで馬券外に敗れた桜花賞馬とは異なり、距離の壁を克服できると判断しました。

この見立て通り、エンブロイダリーが府中の長い直線で差し切れるのか。樫の女王の座を賭けた乙女たちの熱戦に注目しましょう!