-みやこS-平林雅芳の目

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日曜京都11R
みやこS(GⅢ)
ダ1800m
勝ちタイム1.49.8
勝ち馬
トランセンド(牡4 栗東・安田隆厩舎)

※ 重賞初制覇、トランセンド。綺麗に逃げ切る!!

スタートを決めて出ていくトランセンド。最初のカーヴまでに主導権を得て後はマイペース。こうなったら藤田Jのもの。ゴール前でキングスエンブレムだけが迫っては来たが、それでも1馬身と少し差はあった。完勝劇を演出して次なるステージへと進める。阪神のJCダートでさらなる上を狙うこととなる勝利であった…。

いつもの事なのか、パワーストラグルがかなり汗をかいて真っ黒な馬体が濡れて見える。キングスエンブレムは今日も落ち着いている。スタンド前のゲートから、スッと好発を決めたのがトランセンド。外からドリームライナー等も前を伺うが速さが違った。
そのまま迷わずに先手を取って行くトランセンドと藤田J。結局、最初のカーヴに入るまでに完全に態勢を造ってしまった。
向こう正面に入ったが7、8頭固まった後に、パワーストラグルだけがポツンと1頭だけ続く。後続馬はさらにそこから2馬身ぐらいの間がある。

クリールパッションの少し後ろ内めに、キングスエンブレムがいる。パワーストラグルが絶好のポジションにいるように見える。外へ出したそうにしている後藤Jの仕草が見える。
そして3コーナーへと向かうあたりで、トランセンドと2番手ドリームライナーとの差が少しだけ縮まるが、ドリームライナーの手応えがちょっと悪い。キングスエンブレムが内々をついて前へと出てきて、パワーストラグルに接近する。馬群のちょうど半分あたりだ。
先頭のトランセンドは、1馬身のリードを保って4コーナーへと向かう。2番手ドリームライナーの手応えがいよいよ怪しくなっている。その外へダイシンオレンジ、さらにアドマイヤスワットが並びかけてきた。パワーストラグルはその直後にいる。キンングスエンブレムはまだ馬群の中だが、手応え十分に静かに忍び寄っている感じだ。

そして4コーナーのカーヴをトランセンドが先頭で回って直線へと入ってきた。カーヴを回りきったあたりで、むしろ後ろとは少し差が開いた感じのトランセンド。鞍上の藤田Jも、手綱をしゃくり出してラストスパートに入る。
残り1ハロンの標識前あたりからステッキで追い出す。ここらで2番手にはアドマイヤスワットが上がっていたが、直ぐ後ろにパワーストラグル、そしてやっとキングスエンブレムが外へ出して追撃開始だ。しかしトランセンドとの差はまだ4馬身ぐらいあったか。残り50メートルを割ったあたりで2番手に上がったキングスエンブレム。なかなかの脚ではあるが、前を行くトランセンドとの差が急速には縮まってこない。藤田Jの左ステッキの連打に応えてトランセンドはスピードを保ったままゴールへと向かう。

直線に入ってもトランセンドの勢いは止まらない。と、いうよりも終いまで持たすのが上手い藤田Jの先行術だ。むしろ後続との差が開いた様子にまで見せた直線入り口だ。一方のキングスエンブレムは、道中の手応えも抜群で、4コーナーまで内めで直線で外へ出す作戦は予定どおりだったはず。ただ出すまでに少しだけ時間がかかって、仕掛けてない瞬間を造ってしまいトランセンドとの差が開いた。
追い出されたキングスエンブレムの伸びも半端ではない。かなりあったトランセンドとの差を確実に詰めていった。しかしもうゴールまでの時間と距離がなさ過ぎた。かくしてトランセンドの初重賞勝ちとなった《みやこステークス》であった。

上がり3ハロンが12.0~12.1~12.7と、ダートでこの上がりでは後続馬にはつけいる隙のないペースである。いかにキングスエンブレムの切れでも、この数字を上回るのはかなり難しい。そんな流れを演出した藤田Jの先行術。もっとも追わせても素晴らしい腕だが。
トランセンドは、新潟でのレパードSが重賞に格上げされる前の初回のチャンピオン。そして今回が第一回の《みやこステークス・GⅢ》である。前走の日本テレビ盃でフリオーソには負けたが、スマートファルコンは抑えた。スマートファルコンの先日の快勝と秋2戦目で、この馬も大きく前進した。
次なるステージは、阪神のJCダートなのか浦和記念なのかは知る事が出来ないが、本格化してきたトランセンド。先行策を持つ馬だけに自分で流れを造れる強みがある。これからがますます楽しみとなってきたダート界であろう。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。