アルティシムスなど《平林雅芳 3歳観戦記》

トピックス

土曜京都4R
3歳新馬
ダ1800m
勝ちタイム1.56.0
勝ち馬
マリブスター(牡3、栗東・吉田厩舎)

道中は3番手の外め。4コーナー入口では、もう楽な手応えで先頭に出てきたマリブスター。直線に入ると内ラチ沿いを進み追い出して、最後はオーロラビジョンを見て後続を確認する余裕さえ見せてのゴールであった。着差以上の楽勝となるデビュー勝ちであった。

好発から先手を取って逃げたヤマイチサプライズが、1000メートルを1.05.6とユッタリとしたペース。2番手がマイヨオロ、3番手の外めにマリブスターが続く。しかしそんなペースでも、マリブスターの鞍上の川田Jは押し気味の追走。その少し内めにブラックアテナが絶好の手応えで続く。
3コーナー手前から外めをバンブーアーセナルが上がって行き、先行馬集団は固まって4コーナーへと近づく。大外をソルビアンコが上がって来た。カーヴを回る時には、先頭のヤマイチサプライズよりマリブスターの方がむしろ前気味となった。直線のラスト1ハロン手前あたりでは、もうマリブスターが追い出しにかかる。それを追いかけるブラックアテナとロットトゥウイン、外ではソルビアンコの3頭が並び加減で前を追う。
マリブスターは一瞬の間に3馬身ぐらい差をつけた。2着争いの中から、ブラックアテナの伸びが鋭くマリブスターに少し接近しては行ったが、すでにセーフティリードとなっていた。

向こう正面でマリブスターを少し追い気味だったのは、どうやらあそこで絶好のポジションをキープする動きだったのだろう。まだペースも速くなっていない時であったのだから。直線の2ハロンが12.0~12.3とかなりのトップスピード。マリブスターがほとんど刻んだラップである。
2着のブラックアテナは、勝ち馬の内でレースを進め4コーナーもマリブスターが抜けた後を通って来たものだが、相手が主導権を握っていただけに、その差が出た感じだ。
3着のロットトゥウインは、枠順も影響で外々が響いたか。惜しいのが4着のソルビアンコ。4コーナーを上がってくる脚は良かったが、少し外へ流れ気味。そこでのロスタイムがなければもっと肉薄した2着争いとなったかも。
勝ったマリブスターが向こう正面から動いて行ったのが目立った一戦だった。


土曜京都6R
3歳500万下・牝
ダ1400m
勝ちタイム1.23.9
勝ち馬
アイアムアクトレス(牝3、栗東・長浜厩舎)

単勝配当が120円と、圧倒的な支持を集めたアイアムアクトレスであるが、最後はカラフルデイズにだいぶ詰め寄られヒヤっとしたものだが、走破時計も優秀でまずは順当に勝ち上がった。ダートの短ならばかなり強い馬だと思えるもの。牝馬限定戦とは言え、レベルの高い一戦であったと感じたものである。

福永Jの積極策が目立つ近走である。スタート自体はアイアムアクトレスの方が良かったかと思う。しかし、福永Jのクイーンズバーンが先手を取って行く。ダートに入ってクイーンズバーンの内から、やはりアイアムアクトレスが出てきて、やや前に出て行く。3番手にはエーシンギムレットと外にミヤジメーテル。その直後にカラフルデイズが続く。
3ハロン標では、内アイアムアクトレスに外クイーンズバーンが半馬身差で続く。前半が34.3と速い入りだ。その1馬身少し後ろに2頭が続き、さらに1馬身後ろにカラフルデイズと、先行集団の5頭はそんなに離れていない。
4コーナー手前ではエーシンギムレットの手応えがかなり悪くなって追い通しとなっている。カーヴをアイアムアクトレスが先頭で回る。2番手はまだクイーンズバーンであるが、もう脚色はなさそう。その直後のエーシンギムレットがバテてミヤジメーテルとの間隔が開いたところへ、絶好の手応えで待っていたカラフルデイズが入って来る。しかし前を行くアイアムアクトレスとは3馬身ぐらいの差があっただろう。
もう直線1ハロンを過ぎていたかも知れない。必死で追う岩田Jの動きに合わせて、カラフルデイズもグイグイと伸びていく。アイアムアクトレスも左ステッキから右に持ち替えてから3、4発入れてフィニッシュを迎えた。前の2頭から後続はかなり離れてしまう。7馬身差でグランスが入っていた。

2着のカラフルデイズとは1馬身もない着差。そのカラフルデイズは、4コーナーで前が開くのをだいぶ待っていた時間があっただけに、もしかすると逆転の目もあったかも知れない。しかしアイアムアクトレスは、いくらダート重で脚抜きのいい馬場とはいえ、スタートからの1000メートルを59.0のラップで、その後の1200メートル通過でさえも1.11.3と、勝ち時計に匹敵するもの。だから最後に接近されたと見ていい。
いずれにしろ、この2頭はハイレベルなダート巧者と言えよう。アイアムクトレスは芝でも新馬戦でマルセリーナの2着であるが、ダートはより確実なのは間違いない事であろう。


土曜京都9R
こぶし賞
芝1600m
勝ちタイム1.35.1
勝ち馬
アルティシムス(牡3、栗東・野村厩舎)

ディープインパクトの子供アルティシムスを、JRAの馬名意味のコーナーで調べた。ラテン語で《もっとも深い》とある。そんな言葉どおりに、なかなか渋くて深~い勝ち方で2勝目を挙げたアルティシムス。デビュー戦の強烈な印象はやはり変わっていなかったアルティシムスだ。秋山Jは直線半ばで勝利を確信していたふうだったが、直ぐ内から伸びてきたカルドブレッサの勢いを見て、再度追った様に見えたパトロールビデオの内容。着差以上に余裕を持っての1ハロンの動きと見えたのだが…。

1番人気はアドマイグルーヴの子供アドマイヤセプター。2番人気のダコールは、休み明けの前走より馬体は12キロ減っていたが、そんな風には感じなかった。スタート直後はマイネルロガールの先手かと思えたが、内からハーバーコマンドが押して出て行き、その外にエンジョイタイム、さらに外マイネルロガール、その外にアドマイヤセプターの4頭が並ぶ4コーナー手前。
前半1000メートルが58.9と少し速い流れではあったか。メイショウナルトが中団の一番前にいて直後がダコール。その内めにアルティシムスと、3頭がごく間近に位置していた。
直線に入って前の4頭の脚色がやや鈍り出したのが、ラスト1ハロン手前ぐらい。その馬たちの外めからアルティシムスが、馬場の真ん中を脚色良く抜け出てきた。その外めにビップセレブアイとダコール、さらにメイショウナルトと外に3頭がいて壁となったか、直後に上がって来ていたカルドブレッサが進路を中に取る。アルティシムスが抜けて行く直後の内めを急接近して行く。馬群を抜き去ろうとしていたアルティシムスの秋山Jが、その動きに気が付いた様子だ。そこから手綱だけでもうひと押しして、先頭をキープしての勝利であった。

3着争いは、ビップセレブアイとダコールの戦いとなったが、ここもクビ差ダコールが先着。アドマイヤセプターは6着。4コーナー入口あたりでは、やや掛かる様な行きっぷりを見せている。あのデビュー戦の様な大人びたレースぶりにならない。メイショウナルトの前走は止まったが、今日も直線の入口でもう反応が悪い。体調が本物でないのだろうか。アルティシムスの渋い競馬内容と、カルドブレッサの長い脚の使い方が印象的だった一戦であった。
まだまだ続く牡牝のサバイバル戦。一戦一戦が毎回熾烈な争いになってきているのを感じるものである。春は近いが、まだその足音までは聞こえてこない…。


日曜京都6R
3歳新馬
芝1600m
勝ちタイム1.37.2
勝ち馬
ブライトバニヤン(牡3、栗東・小崎厩舎)

4コーナーではもう先頭に立ったブライトバニヤン。馬場の真ん中を、鞍上の浜中Jが繰り出す小さなステッキの動きで促されて前進していたのも、直線ラスト1ハロン過ぎまで。最後の50メートルはもう流し気味でのゴールとなっていた。2着にはディープインパクト産駒のディープフィールドが、しっかりとした伸び脚を見せていたが、前半の差が大きかった様子だ。

逃げたメイショウクロシオニホンピロナナコと2頭が出て行くが、相変わらずユッタリと進む流れ。そこへ3コーナー過ぎからタイアップも絡んで来てはいたが、1000メートルが1.01.4とやっぱり遅い。そのグループの直ぐ後ろにブライトバニヤンが上がって来ていた。4コーナーでは押し出される様な感じでタイアップが出たが、直後にはもうブライトバニヤンが急接近。仕掛けて前に並び、馬場のいい外めを選んでいる。その2馬身ぐらい後ろに、芦毛のヤマニンモンスターも近づいて来ていた。直線半ばでは、先頭はブライトバニヤン。そこへ、やっとエンジンがかかったのか、ディープフィールドがいい脚で追い込んできた。しかし前のブライトバニヤンとの差は縮まらない。3着のヤマニンモンスターを差して2着。タイアップが4着だった。

勝ち時計の1.37.2はこんなものかも知れない。上がり3ハロンが11.7~11.9~12.2である。最後の1ハロンは浜中Jが流していたものであるので、あと0.2秒ぐらいは縮まるか。
4コーナー先頭の積極策で勝ち上がったブライトバニヤン。ソコソコに先行できて終いもしっかりがいい。
2着ディープフィールドは、坂路ではあまり時計が出ないタイプだが、実戦に行っていい。もう少し前々でレースが出来ればなおいいのだろうが、次走はさらに変わってきそうだ。


日曜京都7R
3歳500万下
ダ1800m
勝ちタイム1.53.9
勝ち馬
ナムラダイキチ(牡3、栗東・目野厩舎)

ゲートで大きく立ち上がった時にスタートを切られたテイエムドンマイが、遅れてしまう。1000メートルが1.04.1と相変わらず遅いペースを、3コーナー手前から外をマクって先頭に並んだスカイスクレイパーだが、その動きに合わせたナムラダイキチ。その2頭が4コーナーを先頭で回り、結局は前に行っていたナムラダイキチがもう一度伸びての勝利となった。

ゲートが開くほんの少し前に、テイエムドンマイが立ち上がってしまった。一斉に出て行った各馬のかなり後からのスタートとなったテイエムドンマイ。内からハギノダルタニアンがコーナーワークで先頭に立って行く。外からナムラダイキチが2番手。3番手に最内サングップが続き、ペガサスフラッシュが外に並ぶ。そのまんまの態勢で2コーナーも回り、向こう正面を過ぎて行く。内でサングップが絶好な手応えだなと思っていた瞬間に、外で動きがあった。一気にスカイスクレイパーが進出して行く。先頭のハギノダルタニアンをも抜いて一番前に出たのが、3コーナーを回ったあたりか。その外からの動きに合わせた様に2番手だったナムラダイキチも動いて、内で受け止める格好だ。その2頭がそのままの態勢で4コーナーも回ってきた。スカイスクレイパーの方が手応えは優っていたのだが、いざ追い出されるとナムラダイキチが伸び出して行く。
結局、スカイスクレイパーは2着。離れた3着には、コスモリゾルヴが外から伸びて来ていたが、その差は3馬身あった。一旦は3着争いまで加わったテイエムドンマイだが、さすがに最後は脚が止まったのか、4着が精一杯となった。

ナムラダイキチは、2戦目で先手を取っての勝利。昇級して即のレースが、トレンドハンターとスマートルシファーの一騎打ちの結果となった一戦で、4コーナーまで粘りを見せての3着。前の2頭とは切れ味の差で勝負がついていた。前走小倉に飛んで4着だったが、現級でも十分な粘りを見せていたもの。先行有利な京都競馬も、この馬の脚質と合っているのもあろう。
そして2着のスカイスクレイパーだが、昇級緒戦で味な競馬内容。ダートはかなりいい馬なので、今後も確実な成績を残せそうである。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)

競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。