桁違いな力を感じる、エイシンキンチェムの圧勝劇!《平林 2歳観戦記》

トピックス

土曜京都5R
2歳新馬・牝
芝1200m
勝ちタイム1.11.0

エイシンキンチェム(牝2、父フジキセキ・栗東・高野厩舎)

先頭に抜け出した1ハロンからゴールまでの間で、何もしないでただ捕まっているだけのフィニッシュとなったエイシンキンチェムの勝ち方であった。だから2着のキクエチャンが迫って来たかの様なゴールだが、実際には凄い着差になっていただろうと思える力差だった。タイムもそんな訳で1分11秒フラットだが、まともに追っていたならば9秒台も楽に出ていたのではないかと思えるもの。それほどに桁違いな力を感じる牝馬限定の新馬戦、エイシンキンチェムの圧勝、楽勝であった。

スタートはキクエチャンが良かった。その後でエイシンキンチェムが中から、外ではプレシャスペスカも差なく前へと出て行った。と、今度はゲート自体は速くなかったタイキプリマドンナだが、ダッシュがついて内めをいい勢いで上がって先頭となって行く。エイシンキンチェムも2番手だが、差なくついて行き、プレシャスペスカがやや下げたのか3番手、しかも少し外へ逃げ気味な感じながら辛抱してと、位置取りも落ち着く。前半の3ハロン35.0とまずまずのペースだ。

しかし4コーナーに入る時は、それまでも外へと膨れ気味であったプレシャスペスカが、カーヴへと入る時にはやや外へもたれ気味な感じ。中を行くエイシンキンチェムとは全く手応えが違っていた。
そのエイシンキンチェムは、カーヴも小さく回って抜群の手応えで持ったまま。直線に入って来た時には、もう楽に先頭に立つ勢いだ。そのまま楽々と一番前に出て行ったエイシンキンチェムだが、鞍上の川田Jは何もしない。本当の馬なりとはこれだといった感じでゴールへと向かう。

注目は2着争いとなったが、残り1ハロンで、2番手グループのタイキプリマドンナとプレシャスペスカがやや脚が上がり気味となる。その後ろの外に上がって来ていたキクエチャンが脚を伸ばして来て2番手へと上がり、さらにその前へと進んで行く。止めにかかっている様なエイシンキンチェムと追っているキクエチャンとの差で、かなりあった間隔がみるみる縮まったものだが、差は歴然であり安泰で、3馬身少しの差を残してゴールとなった。

そんな感じだけに、勝ち時計に着差も全く参考にならないもの。上がり1ハロンの13.0が物語っている。
これはエイシンキンチェムがゴール前は流したもの。これを追っていたらあと1秒の短縮は絶対に可能であったはずだし、当然、12.0で上がれたはず。だから1.10.0では走っていられたはず。いや、もっと縮められていたのではと思うものだ。

JRAのセリで2100万とけっこうな値段で取引された馬で、完成度も素質もかなりあるものだろう。
そして中身もかなりいいものを持っているエイシンキンチェム。次走は当然1勝クラスでの戦いで、しっかり追う競馬になるものと想像できる。その時にどんなパフォーマンスを見せてくれるのだろうかと、期待が膨らむエイシンンキンチェムの勝利であった。

そうそう、2着のキクエチャンは388キロと昨今、中型以上の馬ばかりで、こんな400キロ割れの馬は少ない方。
でもなかなかにいい走りをするものであり、決して小柄で仕上がり早やだけではない感じはある。次走注目であろうか…


土曜函館5R
2歳新馬
芝1800m
勝ちタイム1.51.2(レコード)

ゴールドシップ(牡2、父スティゴールド・栗東・須貝尚厩舎)

『ダービー馬と同じ配合なんだよ~』と須貝師に函館で乗らないかと誘われた馬、それがゴールドシップだった。すでに先約があったので丁重にお断りをしたのだが・・。ゴールを過ぎてしばらくしてから思いだしたのであった。
それにしても、サトノヒーローが4コーナーに入る時にはすでに手応えがなくなっていたのは何だったんだろうか?新馬戦は難しいのは判ってはいるが、よもや、ここまで期待を大きく外すのも珍しい…。

長丁場の2歳戦だけに、当然にユッタリの流れ。武豊Jの逃げでサトノヒーローが造ったペースは1000通過で1.03.3と、これ以上ないもの。2番手のコスモユッカだけが楽について来ているが、その後ろはだいぶ手応えが怪しくなってきている。ところが4コーナーに入るあたりで、先頭のサトノヒーローとコスモユッカの間がほとんどなくなり、カーヴを回る時にはもう順番が入れ替わっていた。
直線に真っ直ぐ向いた時には、コスモユッカが半馬身ぐらい出ていた。そのまま脚を伸ばして行くコスモユッカ。当然、楽な勝ち方だと思って見ていた。事実、あと1ハロンあたりでは、後ろとは勢いが違う様にも見えたものだ。
しかし芦毛のゴールドシップだけがグングンと差を詰めていった。そしてゴール寸前でキッチリと頭差かわして新馬勝ちとなったゴールドシップであった。

ペースが速くなったのは上がりの3ハロンあたりからで、最後の3ハロンのペースは11.8~11.5で、ゴール前最後は12.2とかかっている。
サトノヒーローは、このゴールから2ハロン前の11.5のあたりで失速しているわけで、スピードに対応できなくなったのだろうか?全く伸びて行く脚色ではなかった。

3着マイネルサムアップとは4馬身もの差があっただけに、2着コスモユッカとしては実に惜しまれる競馬となった。しかし早めに仕掛けたわけでもないし、勝ったゴールドシップの伸びが優ったものだけに仕方なかろう。

母のポイントフラッグは、須貝彦(尚師の父)厩舎で新馬2戦目めで勝利(当時は新馬戦は負けてまた出られた)を、須貝尚師が自ら乗って勝った馬。その後、紅梅賞、エルフィンS、チューリップ賞といずれも2着。桜花賞はあのテイエムオーシャンの13着完敗となった実績の1勝馬。その初めての子供での新馬勝ち。ここらが競馬が脈々と受け継がれてきた歴史を感じるもの。
勝負運の強さを持っている感じのゴールドシップだけに、この後も注目していきたいと思う。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。