いよいよアメリカクラシック三冠最後のレース、ベルモントSである。ケンタッキーダービー、プリークネスS、そしてベルモントSと、1ヶ月で3戦する過酷なクラシックが今年も終わる。

2015年、アメリカンファラオが1978年アファームド以来37年ぶりに三冠を達成し、昨年ジャスティファイが13頭目のアメリカクラシック三冠馬となった。100年で13頭、ここ70年に限れば5頭しか三冠馬が誕生していないように、三冠のハードルは高い。ハードルを上げているのは間隔に加え、各レースのカテゴリーの違いによる。中でもベルモントSは他の二冠に比べれば異色の存在である。

約2000mのケンタッキーダービーは1周約1600mのチャーチルダウンズ競馬場で、約1900mのプリークネスSは1周1600mのピムリコ競馬場で行われるが、ベルモントSは1周2400mの巨大なベルモントパーク競馬場で行われる。そのため他二冠とは距離も大幅に違う他、コース設計がまるで違うコースでのレースとなるため、適性が異なりやすい。

78年アファームドと15年アメリカンファラオまでの37年間、ケンタッキーダービー、プリークネスSを勝って三冠リーチをかけた状態でベルモントSに挑んだ馬は実は13頭おり、出走取消のアイルハヴアナザーを除く12頭が敗北を喫している。それだけ"ここでしか求められない適性"が求められる。


北米を代表する種牡馬・タピットはケンタッキーダービーと縁がないことで知られている。産駒は実力はあるものの器用さを欠き、かつ気性の難しい馬が多く、多頭数で激流となるケンタッキーダービーと本質的な適性が合わないのかもしれない。逆に頭数がそこまで多くなく、広いベルモントパークで行われるベルモントSはフィットするのだろう。

近5年を見ても、14年1着トゥーナリスト、15年2着フロステッド、16年1着クリエイター、16年3着ラニ、17年1着タップリット、18年3着ホーフブルクと、ベルモントSはもはやタピットのためのレースと化している。まずタピットを買う、話はそこからだ。


今年はタピット3頭出し。実績的にもタシトゥスが無難ではあるが、当コラムに無難な発想はどうやら求められていないようなので、同じくタピット産駒の◎イントレピッドハートを推す。前走のピーターパンSは5頭立て。ベルモントパークの1800mということでワンターンの競馬だったが、スタート後思いっきり躓き、落馬するかと思えるような不利があった。加えて経験不足か若さか、道中の反応も鈍く、4コーナーでも追ってもなかなか進まない。直線では内に切れ込む面も見せていた。

母の父はこのレースに相性のいいデピュティミニスター系で、自身もベルモントSを勝ったタッチゴールド。血統背景からいえば、明らかにピーターパンS<ベルモントS。決して強いメンバーではないピーターパンSでコロっと負けたのは不安材料だが、距離延長は大きな強調材料だ。

同じくタピット産駒でケンタッキーダービー3着から臨むタシトゥス。前走はスタート後接触し、位置取りを下げる不利があった。3コーナーから外を回す苦しい競馬になりながら最後まで伸びたあたり、距離延長も大丈夫だろう。昨年ベルモントパークの未勝利戦で4着に敗れているとはいえ、あれは本格化前の話。走り方を見る限りこのコースは合っていそうだ。間隔が詰まっていただけに、プリークネスS回避も追い風だろう。

そのプリークネスS勝ち馬ウォーオブウィルは母父サドラーズウェルズと距離が持ちそうだが、兄は短距離馬。父も短距離馬。距離延長が歓迎かというとそうでもない。プリークネスSはハイペースを内枠から内内を回って追走できたことも大きかった。タシトゥスと違い、ケンタッキーダービーから三冠皆勤となるため、疲労も心配になる。

プリークネスSでウォーオブウィルに敗れたバーボンウォーは勝ち馬と違い外枠からのスタートで、ハイペースを終始外を回りながら追走していた。これでは苦しい。今回は距離延長、そして鞍上は大レースに強いM.スミスに替わる。要注意の存在と言えるだろう。

日本から挑むマスターフェンサー(牡3、栗東・角田厩舎)はケンタッキーダービーの負け方が悪くない。外枠不利になりやすいケンタッキーダービーで、後ろから1頭ずつではあるものの交わし続け、最後まで脚を使う内容は立派の一言。距離延長がどうか不安なところもあり抑えに留めるが、一競馬ファンとして、新たな歴史を作るシーンを見てみたい気持ちはもちろんある。

ベルモントS
◎イントレピッドハート
〇タシトゥス
▲エバーファスト
☆バーボンウォー