プリンスオブウェールズSが行われるアスコットの1990mは非常にタフな舞台として知られている。実際筆者もかつてアスコット競馬場に行ったことがあるが、最初は下り坂。向正面、三角形の頂点である通称『スウィンリーボトム』まで駆け下りると、その後はゴール約20m以上の上りとなる、極めてタフなコースだ。

加えてアスコットは初日から雨。よりタフなレースとなるだろう。元々距離短縮馬が強いこのレースだけに、◎クリスタルオーシャンにより追い風が吹いているのではないか。これまでG1を勝ったことはないが、通算14戦して全て3着以内という堅実派で、コース、馬場を問わない。ゴードンリチャーズS→アストンパークS→ロイヤルアスコット開催のローテは昨年と同じ。先行抜け出しという安心感ある戦法なのも心強い。

1番人気になりそうなマジカルは現在3連勝中。前走のタタソールズゴールドCは2着に7馬身の差をつける圧勝劇で、この路線のアイルランド最強牝馬と言っていい。道悪もこなし、血統的にこの舞台はなんら問題ないものの、これが今年4戦目。調子がいい時は立て続けに使うことが多いA.オブライエン厩舎だけに心配はいらないかもしれないが、少々気になる点ではある。

イギリスを代表する牝馬の1頭であるシーオブクラスは昨年の凱旋門賞以来8ヶ月ぶりの出走となる。凱旋門賞では世界最強牝馬のエネイブルの2着に後方から迫って2着と、実力はメンバー最上位。ただ熱発で始動予定だった5月のミドルトンSを回避し、今年初戦がこの舞台となってしまったのはマイナスだ。

前走フランス組のザビールプリンスヴァルトガイスト。イスパーン賞は正直レースレベルに疑問があり、であればまだ前走のガネー賞を圧勝したヴァルトガイストに食指が動く。ガリレオ×モンズンという重厚な配合で、2走前の香港ヴァーズはスローペースの上がりを問われる展開が合っていなかった。直線でも不利を受けていただけに参考外でいいだろう。

日本から参戦するディアドラ(牝5、栗東・橋田厩舎)は道悪競馬もこなし、父はアスコット競馬場で行われたキングジョージを圧勝したハービンジャー。近年このレースに挑んだスピルバーグやエイシンヒカリらに比べればアスコット適性はあるだろうが、とにかくアスコットの道悪は日本の道悪とは比較にならないほどタフ。前半がゆったりしたペースとなりやすいイギリス競馬は向いていると思われ、どこまで他馬との差を詰められるか。

プリンスオブウェールズS
◎クリスタルオーシャン
〇マジカル
▲ヴァルトガイスト
△シーオブクラス、ディアドラ