関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

井上泰平調教助手

昨年よりもタフになった精神面

-:馬体重に関しては、あまり気にしてはいなかったのですが、ジェンティルドンナはデビュー時に474キロあって、そこからレースを使って460キロくらいまで締まっていって、ローズSで12キロ増えて。それは成長分だと思うのですが、そこからあまり変わっていないのですね。最終的に480キロくらいになるのかな?と思っていました。

井:もうこれ以上大きくならないとは思うんです。かと言ってそんなに細いわけでもないですし、しっかり筋肉も付いていると思います。

-:斜め後ろから見ると「スゲェな」ってなりますからね。

井:今思うと、ローズSの時は若干太かったかもしれないです。

-:それが、今は太め感なく筋肉に変わってきたと?

井:以前はトモがそんなに大きい馬ではなかったんですけど、今はしっかりしていますしね。バランスよく見えますよね。


「時計感覚さえちゃんとしていれば、何秒でも乗れる馬ですよ。体感的には“凄く頑張っているな”という走り方でも、それほど時計が出ていないと思うことはあります」


-:姉のドナウブルーとは全然違うタイプですね。

井:走り方もちょっと違いますしね。向こうはもっとバネの効いた感じの走りです。

-:ジェンティルはタタタタタッと走る感じで。

井:普段乗っていて、あんまりスピード感は感じないんです。凄くゆっくり乗っているつもりでも、(1F)16秒くらい出ていたりして。大きなアクションは見せないんですけど、速く走れている感じです。

-:それは、スポーツ選手として凄いことじゃないですか?ポーンと投げているように見えてすごい球が飛んでくる、という感じで。

井:そんな感じなのかな。

-:他の馬に乗るときに困りませんか?ジェンティルドンナと同じ感覚で乗っていたら、もっと時計が出てしまうわけですから。

井:この子は言うことを凄く聞いてくれるので、時計感覚さえちゃんとしていれば、何秒でも乗れる馬ですよ。体感的には「凄く頑張っているな」という走り方でも、それほど時計が出ていないと思うことはあります。ジェンティルドンナには毎日乗っていますからね。

-:凄く贅沢ですね。毎日高級車に乗っている感覚じゃないですか。

井:そうですねえ(笑)。



-:今回のジャパンカップは、メンバー的には例年より小粒と言われる中で、おそらく1番人気に支持されると思います。

井:いやいや、ゴールドシップのように強い馬もいますし。

-:課題があるとすればどの辺りでしょうか。注意すべきポイントはありますか?

井:パドックに関しては変わらないですからね。東京競馬場はカメラマンが一箇所に固まっている場所があるのですが、あそこに行くと凄く写真を撮られるので、そこは嫌うポイントではあります。後はイレ込むとしたら、パドックの掲示板が、オッズ表示から馬の映像に切り替わるときに、それを見てたまにビックリすることがありますね。ただ、前回はそれほど気にしてなかったですけど。

-:パドックにいるお客さんは、うるさい仕草を見せていても気にしなくていいですか?

井:それはいつものことなんで、大丈夫です。

-:返し馬については、レースで勝利している時の返し馬のパターンはありますか?

井:そういうのはないですねえ。

-:昨年の秋華賞では、返し馬でジョッキーを振り落としたこともありました。

井:ありましたね。あの時のように何かに怖がったりということは、今はないですよ。

-:当時よりもタフになったということですね。

井:ゲート裏を見てもらえばわかると思うんですが、ゲートに入るまでは凄くテンションが高くて、イレ込んでいるように見えるんですけど、走り出してしまえば集中してくれるので、あまり心配なところはないですね。



今回もコンディションは文句なし

-:昨年の覇者ですが、今年まだ未勝利ということで「ジェンティルドンナの化けの皮が剥がれた」という辛辣な意見をいう人もいます。

井:勝ってないので偉そうなことは言えませんが、負けているとは言っても、3着までには来ているのでね。歯車がうまく噛み合っていなかっただけで。

-:今回はその歯車をキッチリかけると言いますか、万全を期するためにムーア騎手が手綱を執ると。

井:僕が決めているわけではないですけど、そういう風に思って変わったのかもしれないですね。

-:馬券ファンにとっては、騎手どうこうではなく純粋にジェンティルドンナに注目して見ればいいと言うことで。来週の最終追い切りは井上さんが乗られるんですか?

井:まだ指示も出ていないですし、どれだけの時計で走るかは分からないですけど。

-:あと10日ですが、何とか復活を。そして、今年初勝利をプレゼントしてあげてくださいね。

井:僕ができることは大したことではありませんけど、なんとかね。コンディションは凄くいいと思いますよ。

-:ムーア騎手に「日本にもこんなに凄い牝馬がいるんだぞ」ということを轟かせてもらいたいです。

井:そうですね。若馬の時は外国人騎手がテン乗りでコロコロ替わっても、ポンポンと勝っていたので、それほど乗り難しい馬じゃないと思うんですけどね。

-:これだけの安定した成績を残してる馬ですからね。それでは、10日後のジャパンカップを楽しみにしています。

井:頑張ります。応援よろしくお願いします。


←ジェンティルドンナの井上泰平調教助手インタビュー(前半)はコチラ

1 | 2


●天皇賞(秋)前・ジェンティルドンナについてのインタビューはコチラ⇒





【井上 泰平】Taihei Inoue

大阪府豊中市出身。9歳から乗馬を始め、高校生時代に国体を優勝。必然の流れにより大学では馬術部に入る。卒業後は美浦分場に2年間勤務。アイルランドの研修などを挟んだ後に競馬学校へと進学し、中村均厩舎からトレセン生活をスタート。その後は開業直後の角居勝彦厩舎で調教主任を務め、大久保龍志厩舎では持ち乗りから攻め専に転身。後の名門厩舎の基盤を築く。
32年に渡る馬乗り人生の中で、現在モットーにしていることは「馬との信頼関係を築くこと。分かりあえたかなと思っても、また違うのかなとそれの繰り返し」と。石坂正厩舎の屋台骨を支えるベテラン調教助手。


【高橋 章夫】 Akio Takahashi

1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて17年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。