高橋亮調教師ページ目
2013/12/29(日)

-:時代的に先行馬のほうが、馬主さん、ファンを含めて喜ばれる時代だと思うんですけど、先生の厩舎は追い込み馬でも後ろから行ってくれると思っていいですか?
高:まだ開業してすぐなんだけど、ジョッキーも考えて乗ってくれてるから、あんまり指示を出してないですね。できたらジョッキーには2回は続けて乗ってほしい。やっぱり上手く乗れへんこともあるし、それは乗っている本人が一番わかってるから。だから別に新馬でも、もちろん全部勝つ気で行ってるんやけど、(勝っても、負けても)何らかの内容を絶対に得てきてくれているから、そういう意味では騎乗にも満足しているからね。だから別にハナに行っても、何してくれてもいいんやけどね。
-:何か今後につながるきっかけを得て帰ってきてほしいと。
高:馬でも、短い馬なんか勝てへんかったら3歳の夏なんかで終わってしまうけど、勝ったらまだ先がある。連戦連勝する馬は滅多にいなくて、負けることのほうが多いんやから。でも、やっぱり若い内でも、一つずつ経験している方が、同じような場面でも馬も対応できるし、人間としても「この馬、こういう反応したな」っていうサンプルもあるからね。オーナーさんが「ジョッキーを変えてくれ」って言ったら仕方ないけど、基本的にはある程度は続けて乗ってほしい思いがありますね。
-:その方が、結果的にその馬に対してもいいと。
高:そうそう。単発だけ見れば、上手いジョッキーが乗ってポンと勝つこともあるけどね。僕は長い目で見るつもりだから。それが100%は叶わないことも多々あるとは思いますよ。
「上手くいかない事のほうが多いんやから、だから競馬って面白いと思うんやけどなあ。その中で上手くいくこともあるからさ。ホンマに我慢なんです」
-:今のファンや馬主に対して思うことは"一頭の馬を長く楽しむ"という目を持ってみれば、もう少し競馬が楽しくなるかもしれないですよね。
高:上手くいかない事のほうが多いんやから、だから競馬って面白いと思うんやけどなあ。その中で上手くいくこともあるからさ。ホンマに我慢なんです。ただ、僕らも我慢してやっているけど、馬主さんはもっと我慢してるからね。やっぱり競馬に使って競馬場に来たいというのがあるからね。効率よくレースに使えるように僕らも考えるし。
-:ただ使うだけじゃなくて、前回よりステップアップできるようにね。
高:そうやね。うん。
-:馬って伸びる時は驚くほど伸びたり、吸収したりするじゃないですか。
高:若い馬は特にね。イレギュラーと言ったら悪いかもしれないけど、そういうこともある。"ここしかレースが無いし使おう"となって、そこでポンと勝って、そこから馬がどんどん良くなるという、結果オーライな時もありますからね。かといって、大事にしすぎてもアカンし。
-:でも、それは計算でできることじゃないですからね。
高:計算とは違うんですけど、だとしても必然に近づけていきたいじゃないですか。物事を理由付けして、従業員も含めて理解しあえたらいいなと思います。「これが良かったから勝ったんやな」とか「これが足りないから負けたんやな」とか、色々考えられるからね。勝った時のサンプルだけじゃなくて。

-:話を聞いていると、先生の優しさがにじみ出ている気がするんですが、その優しさが馬に伝わるといいですね。
高:そうかなあ。あとは僕も含めた、みんなの課題でもあるけど、馬を大事に、丁寧に扱ってほしい。僕たちのできることと言えば、丁寧に乗ったり、扱ったりすることだから。
-:その辺が馬装にも表れているんですか?綺麗にしているイメージがあります。
高:それは、新しいからそう見えるんじゃないかなあ?
-:競馬場やパドックで馬が出てきた時に、人気薄の馬でもピカピカに手入れされているのを見ると、僕たちも"いいなあ"と思いますからね。
高:今は飼い葉も変わってきたし、馬の毛ヅヤもいいですしね。本当は中身が伴っていないといけないんだけど……。飼い葉についても前もって勉強する期間があったから、いろいろ考えて今の配合でやっています。

-:先生が騎手デビューした頃からすると、だいぶ変わりましたよね。
高:えん麦とフスマと、切り草やったからね。
-:今ではプロテインのようなものもいっぱいあります。
高:そこまでウチでは与えていないけど、馬もスポーツ選手だからね。草食動物という基本はあるけど、色々な栄養素があるから。ケガを防ぐ筋肉や骨を作るという要素なわけだから、それはいいと思って僕らもやっているわけだし。
-:濃いエサは、精神的なコントロールとの兼ね合いもあるんですか?
高:あるでしょうね。でも、馬たちは喋れないからなあ。
-:馬に聞きたいポイントですよね。難しいなあ、馬の世界は。
高:ただ、ウチはシンプルな方だと思います。馬も食べなければ与えても一緒だからね。
「マイペースでやっているけど、自分の信念に則らないと、やっていても楽しくないからね」
-:これから、どんな厩舎になっていくんでしょうか?
高:マイペースで行きますわ(笑)。
-:目指すところは、どういう厩舎ですか?
高:時代が変わっていくからねえ。昔のままでは通用していかないし、これからも変わっていくから。競馬だから、たくさん勝って、たくさん稼ぎたいという基本はあるけど、折角だからみんなで楽しんで、アカンことも、良いことも、共有していったほうが楽しいと思うからね。
-:今のところはどうですか?
高:みんなしっかりやってくれています。でも、最後は結果だからね……。偉そうなことを言っていても、それが伴わなかったらどうにもならないから。
-:今すぐの結果もあれば、先々の結果もあります。
高:そうやね。マイペースでやっているけど、自分の信念に則らないと、やっていても楽しくないからね。
-:同時に受かった調教師さんよりも一足早く9月に開業したわけですが、来年からは先生が選んだ馬も入ってくるんですか?
高:そうですね。
-:それもまた楽しみですね。そこからが真価が問われるという。
高:それもありますけど、貰った馬でも勝っている方がアピールにはなりますからね。田島先生には本当に感謝しています。凄く協力的で、いい馬をいっぱい残して下さったので。
-:これからも楽しみにしています。ありがとうございました。
高:調教師も忙しいし大変だからね。最初だから力入れて行きますけど、ガチガチになったらあと30年も持たないから、ボチボチ行きますわ(笑)。
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栗東の橋口厩舎所属騎手としてデビュー。96年のデビューイヤーに20勝を上げ、翌年には中京競馬記者クラブ賞を受賞。98年には中日新聞杯(ツルマルガイセン)で重賞初勝利を上げ、これを含む重賞4勝を記録。また、自己最多となる年間60勝を上げた。 |
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