関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

西浦昌一調教助手

気になるオールウェザー適性は!?

-:心配な面といえば、日本のダート馬がオールウェザーであまり結果を残していない印象があります。どちらかと言えば、芝馬の方が活躍していますよね。

西:今年はどうでしょう。ベルシャザールは芝を走っていましたけど、父親はキングカメハメハじゃないですか。タルマエもキングカメハメハ産駒なのでね。そこは普通のダート血統馬を持っていくわけじゃないので、期待の方が大きいですね。

-:やれそうな手応えはありますか?

西:あります。

-:スマートファルコンは輸送の影響もあってか、普段の走りができずに終わってしまいましが、タルマエの性格的には、日本のレースと同様のポジションで競馬ができそうですか?

西:できると思いますけどね。早めに現地に行くので、ゲート練習もしっかりできますし、アメリカの馬が出走しないので、ゲートボーイがゲートに立つ確率が減りましたからね。あれを見てゲートを出ないという可能性を心配して、早めに出発するというプランもありましたから。ゲート練習は一回でも多く採り入れたいです。

-:日本のゲートと、少し違いますよね。

西:目隠しされた状態からパンッと開くので、そこが少し戸惑う要素ですが、タルマエは集中して出てくれるので、あまり心配はしていないですね。

-:暴れた馬がいた時の、音や振動も日本とは違うみたいですね。

西:その辺りも取り組むつもりです。



-:遠征で輸送をクリアして、ゲートや環境に慣れたりと、タルマエにとっては中身の濃い2週間になりそうですね。昌一さんは今日(3/13)出発されると聞きました。

西:そうです。一人で出発します。

-:向こうではホテル住まいですか?言葉とか大丈夫ですか?

西:大丈夫です。無問題(モウマンタイ)!ハハハ(笑)。

-:いきなり行って、調教するときのコミュニケーションはどうでしょう。

西:向こうの人とやりとりし合って、コミュニケーションをとります。海外遠征馬だけが乗る時間がありますからね。去年も香港のチームの人たちと仲良くなって、「お前たち香港に来いよ、犬いっぱいいるぞ!」って(笑)。

-:向こうでは競馬以外に目新しいものはありますか?

西:仕事しに行くのでね……。でも、お酒飲むのであれば、ホテルなどの施設で飲めますしね。外で飲んだりはできないですけどね。治安は安全だと思いますが。

輸送さえクリアすれば好勝負

-:ドバイは人間の環境的に違うところはありますか?どこに気を遣いましたか。

西:一日中、厩に入れるのではなく、昼に少し外へ出したい、と思いました。息抜きがてら、リフレッシュするために、馬を歩かせたいなと思ったときに、半端なく暑いんですよね。

-:厩舎の中に運動馬場はないのですか?

西:外にしかないので、エアコンがキンキンに効いたところから外に出ると、半端なく汗が出るわ、痛いわで。曇っていたらマシなんですけどね。気温も30℃を超えているのではないでしょうか。

-:日本では真夏みたいで、馬は戸惑いそうですね。

西:でも朝は上着がないとダメなぐらい、涼しいので。

-:気温も寒暖の差が激しいということで?

西:そうですが、良い気温で乗って、良い気温の厩にいるので。だいたい夕方くらいに厩から一度、出すことになりますかね。

-:景色として、パドック出てくるときに、現地の民族衣装の白いターバン巻いてくる人が多いですが、そういうものに馬は戸惑ったりしないのですか?

西:ハハハ(笑)。しないですよ。装鞍所の中が長いだけで、パドックはすごく短いですよ。あそこは歩かせろ、とか、向こうで交渉して最後出しなり、先出しなりで対応しようかと。


「タペタの対応だけですね。競馬センスはどの馬よりも良いので」


-:日本の競馬では絶対に体験できない“花火”がありますね。

西:実際、スタンドの端っこに待機厩舎があるのですが、鉄筋でバッチリ囲んでくれているので、そこまで影響はないです。東京競馬場みたいな地下道のイメージで、それをコンクリートでガッチリ固めているから防音効果は高いですね。気にする馬は気にするでしょうけど。映像で見るよりは影響は無く、花火が終わるかぐらいのときに地下道を歩いてパドックに入るので、そんなに問題はないです。

-:では、期待を持って、ファンは観ていますので。

西:応援よろしくお願いします。

-:”世界の西浦”というのをここで見せたいですね。フェブラリーSでもJCダートでも惜敗続きでしたから、払拭したいと。

西:ええ。勝ちたいですね。

-:ここまで順調に昇りつめたのも、厩舎力の証でしょうしね。

西:輸送さえクリアしてくれれば、今まで取り組んできたスピードもあることが証明できたので、向こうの馬場への適性問題もありますが、こなしてくれることを信じてやってきたので、良い結果で走ってくれることを願っています。

-:タルマエがずっと取り組んできた瞬発力強化を、ここで証明するということですか。

西:いや、僕の中ではフェブラリーSで証明できていると思っていますから。あとは、タペタの対応だけですね。競馬センスはどの馬よりも良いので。

-:健闘を祈っています。

西:本当に頑張ってくれると信じています。応援してください。

●ホッコータルマエの西浦昌一調教助手インタビュー(前半)はコチラ⇒

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●フェブラリーS前・ホッコータルマエについてのインタビューはコチラ⇒



【西浦 昌一】Syoichi Nishiura

昭和49年生まれ。西浦勝一調教師の3人兄弟の長男。当初はこの世界に入るつもりはなく、東京の大学に進学するつもりだったが「早く一人前になりたい」という思いから留まることに。当時はまだ西浦師の騎手時代で、父の思い出の馬を尋ねると「カツラギエースの時は小学校5年生くらいで、社宅の周りで自転車レースしていたんです。みんなおめでとうおめでとうって言って、何がおめでとうなんだろうなと。うちのオカンは騒いでるわで、凄いレース勝ったんだ位にしか思わなかった」と。

当初に所属したのは解散した星川厩舎で「当時ジョッキーだった本田さんと仲が良かったので、頼んだら入れてくれたという感じ。可愛がってもらえて、サンライズ系とか外車、サンデーなど走る馬ばっかりやらせてもらってました」。西浦厩舎は開業して1年後から15年間所属しており、現在は持ち乗り助手として活躍。毎日馬に接する時のモットーは「一緒に気持ちを分かってあげる、仲良くしているんだけど少しだけ優位に立っておきたい」。同世代に元騎手の飯田祐史調教師などがいる。


【高橋 章夫】 Akio Takahashi

1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて17年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。

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