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中山義一調教助手

トレンドであるハーツクライ産駒の特徴

-:今回の出走メンバーを考えると、差し馬に人気馬が固まっていて、ウインバリアシオンとしては、もう少し流してくれるメンバー構成の方がいいのかなという気はしたのですが?

中:流れてくれる方がどの馬もやりやすいと思います。今回は行く馬が1頭だけなので、“ネコパンチがあるかな?”みたいな気はしなくはないですね。
(※2012年の日経賞で12番人気の伏兵ネコパンチに逃げ切りを許している)


-:京都の長距離戦になると、それが風物詩みたいになっていますよね。メンバーは揃っているのですが、あまりにも人気サイドに差し馬が多いのが気になります。

中:みんなが動けないという金縛りになる可能性もありますよね。能力があるだけでは、天皇賞は勝てないんでしょうね。なにかそこに、女神が微笑んでくれるとか。G1ってみんなそうなんじゃないですかね。

-:最近、女神様に愛されているジャスタウェイという馬がいまして、天皇賞秋で一気に開花して、そこから順調に世界No.1ホースにまで登り詰めました。あの馬のお父さんもハーツクライですよね。古馬になってからの変身というのはハーツクライ産駒の特徴のひとつだと思うのですが、ウインバリアシオンも同じですか?

中:若いときにハーツクライ産駒は緩い馬が多くて、うちのマジェスティハーツもやっぱり緩かったです。だから、緩い時にあれだけ走れれば、ちゃんとすればもっと走るんじゃないか、ということはずっと思っています。だから、やっと実が入ってきたとも思っています。



-:しかも、ウインバリアシオンの場合は、オルフェーヴルという大きなライバルがいたわけですが、ダービーでもあとちょっとで手が届くところまで追い詰めましたよね。それに古馬になってからの成長を加味したら、この馬は1年5ヶ月明けの3戦でも、もう少し望んでもいいのかなという気はするのですが?

中:競馬に関しては特に言うことないのですが、どうしても脚質的に後ろからなので、勝ち味に遅いのだけは勘弁して頂きたいなと思っています。必ず、場内が沸くような競馬をしてくれているので、この子はこの子で良いのかなと。

-:ハーツクライも若い時は腰の甘さやコーナリングの下手さがあって、直線を向くまでエンジンにゴーサインがかからないというところがあったのですが、古馬になってからは先行できるように変わりました。その部分では、ウインバリアシオンにはあまり進化を求めない方がいいですか?

中:そんなことはなくて、緩いと行けないものなので、金鯱賞を見ててもちょっとづつ行けるようになってますし、それでいいんじゃないかと。ただ、ハーツクライに乗ってた安藤(勝己)くんに聞いても、古馬になってから力がついてきて、ある程度行けるようになってきたと。それで、「バリアシオンもそうなるよ」と言ってくれていたもので、この前の日経賞を見てみると、岩田くんが無理して行ってるわけではないけど、そこそこの番手に行けていたので、一番後ろから大外一気の競馬だけではないこともできるんじゃないかなと。


「安藤くんでも、豊くんでも、岩田くんが乗った時でも、『4コーナー向くまでは好き勝手に走らせた方が良いよ。その方がバリアシオンの走りができる』ということは、3人のトップジョッキーが口を揃えて言っていました」


-:今回の天皇賞も、休み明けの3戦を見ると、金鯱賞と日経賞はスローのよーいドンで、有馬記念だけが平均的に流れたという展開の違いがあったのですが、おそらく今回もそんなに速くならなくて、上がりの瞬発力を求められる流れになりそうなので、今までよりは前に行けるかもしれないですね。

中:ただ、自分だけではなくて、相手も見ながらということになるんでしょうから、岩田くんの考え一つで、行ってみたいなと思えば行ってもらっていいし、その辺は中央3本の指に入るジョッキーですから任せてみようと。

-:有力馬であるキズナも後ろ目から行くであろうし、ゴールドシップも前回よりはちょっと下げるであろうし、ある程度、ゴールドシップが見える位置にウインバリアシオンがいたら楽しみが広がりそうですね。

中:好位にいてというので一番強いんですけど、それがなかなかできないんですよね。そうなってくれれば有り難いです。安藤くんでも、(武)豊くんでも、岩田くんが乗った時でも、「4コーナー向くまでは好き勝手に走らせた方が良いよ。その方がバリアシオンの走りができる」ということは、3人のトップジョッキーが口を揃えて言っていました。岩田くんや、調教師の考えもあるでしょうけど、バリアシオンの出たなりの競馬が一番向いているんじゃないかなと思っているんですけど。


「ビートブラックの年のようにね。なんか、メンバー的にああいう風な競馬になりそうな感じがしてしょうがないんだけどね(笑)。やっぱり、キレる馬は4コーナーから勝負したいだろうし、行く馬は4コーナーでなるべく差をつけておきたいだろうからね」


-:ウインバリアシオンの力を持ってすれば、前回の日経賞で、悪い馬場状態でも上がり33秒台の脚を使っています。今回は京都で、下り坂もあるコースだったら、32秒台の末脚を発揮することも流れ的にはありそうですが、極限値を求められたとしても、それに応えられそうですね。

中:団子の状態で行ってくれると、そういう脚も使えるかなとは思っているんですけどね。三分三厘から皆が動くのかどうかが一番カギになりそうです。やっぱり、同じところから動いていかないと間に合わないんでね。

-:ゴールドシップなんかは、他馬より先に主導権を握りに行きそうですね。

中:難しいよねえ。流れ的にはバンデが行ってくれるとは思いますが、どれぐらいのペースで行くんだろうか。大逃げをするのか、溜めて逃げるのか……。それによって、うんと違うんだろうと思うんです。

-:バンデを基準にすると、バンデ自体がどうこうというよりも、2番手の馬がどれぐらいの距離で追走していくのかが問題ですね。

中:ビートブラックの年のようにね。なんか、メンバー的にああいう風な競馬になりそうな感じがしてしょうがないんだけどね(笑)。やっぱり、キレる馬は4コーナーから勝負したいだろうし、行く馬は4コーナーでなるべく差をつけておきたいだろうからね。だから、三分三厘で誰が行くのかが……。

-:上がり800mからの展開うんぬんより、それまでの2400mをどういうところで走っているのかが、勝敗の大きな分かれ目になりそうですね。

中:多分そうだと思います。3200mだと、かかったらダメですからね。

-:バリアシオンは、抑えが利かなくなるほどかかる馬ではないでしょう。

中:調教や追い切りの感じでは、そういうことは一切ないので、そこが一番の強みじゃないかなとは思いますけどね。



オルフェとの戦いを経て今年は勲章を

-:ウインバリアシオンの強みを生かして、奇跡の復活を果たしてほしいですね。

中:そういう風に願っています。

-:ゴールドシップやキズナという強い相手もいます。

中:できたら、ゴール前では差し比べみたいになるといいなあ、と思っていますけどね。

-:ハーツクライ自身も、ディープインパクトという怪物を負かした馬ですし、ウインバリアシオンにとっても、オルフェーヴルが居なくなれば、トップを目指していい馬ですからね。

中:ハーツクライが走っていた時には、ディープインパクトという強い馬が居ましたし、ウチのウインバリアシオンの時には、オルフェーヴルがいました。その背中を追いかけて、やってきましたけどね。その馬たちが引退してしまって、今後は自分が上の方で競馬をしなければならない、ということを馬もだいぶ分かっているみたいなんです。だから、僕らの自覚もありますけど、馬も馬なりに分かっているというところはあると思います。

-:時折、他の馬を抜かすのが嫌な馬もいるじゃないですか。ちょっとそういう気があるのかなと思っていたんですけど。

中:どちらかというと、ヨーイドンの競馬は脚に負担が来るので、僕は好きではないんですけど、馬自体はタメてタメて伸びる馬も居るし、行ってしまって気分良く走る馬も居ますので、一概には言えないでしょうけどねえ。

-:久しぶりに、ずっと狙っていたG1獲りに、良い状態で狙えるチャンスじゃないですか。

中:ただ、マグレで勝ったと言われるのは嫌なので。「何でこの子が獲れないのかなあ」みたいなことは、今までずっと思っていました。能力はあるし、負かした馬がG1勝っていますしね。看板が無いというのは、この子にとって寂しいことだと思っていますから、できたら一つや二つは、背負わせてやりたいなあ。



-:京都の3200mというのは、願ってもない舞台じゃないですか?

中:3200mを走るために生まれてきてくれたんじゃないかな、とは思っていますけどね。

-:菊花賞でも2着まで来ていますし、そこから成長している部分がプラスになりますよね。

中:そういう風に願って、調教しています。

-:最後にウインバリアシオンのファンにメッセージをいただけますか。

中:どの子がライバルか、というよりもバリアシオンらしい競馬をして、無事に競馬を終えてくれれば、結果がついてくるんじゃないかなと思っています。

-:ゴール前での鋭い末脚に期待しています。

中:また、よろしく応援してください。ありがとうございました。

●ウインバリアシオンの中山義一調教助手インタビュー(前半)はコチラ⇒

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●有馬記念後
ウインバリアシオンについてのインタビューはコチラ⇒



【中山 義一】Yoshikazu Nakayama

父は元騎手でアラブの牝馬アオエースを駆って読売カップを制した中山義次。ギャンブル色が強かった当時の競馬に疑問を持ち、馬術の世界を目指し追手門大学を卒業。しかし、現実的に生活を考えると競馬界に入るしかなかった。初めて所属したのは開業間もない北橋修二厩舎であり、厩舎解散まで25年間所属。エイシンプレストン、スターリングローズ、など数々の名馬の調教を任された。思い出の馬は愛らしい顔が印象的だったゴールデンジャック。ウインバリアシオンについては、ホースマン人生の中でも最大級の評価と手応えを感じている。


【高橋 章夫】 Akio Takahashi

1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて18年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。

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