
3歳マイル頂上決戦へ西から名乗り!赤き彗星 牝馬カラクレナイ
2017/4/30(日)
今年初戦に選んだフリーズレビューでは最後方から上がり最速の末脚で重賞初制覇を決めたカラクレナイ。続く、桜花賞では猛然と追い込みあわやの4着。デビュー以来初の1600m戦もクリアし、世代上位の存在であることを見せつけた。次なる目標は当初の予定通り、NHKマイルCを選択。初の東京輸送、左周り、重賞級の牡馬との対決など、立ちはだかる未知の領域に向けての手応え、その確かな成長力にフォーカスを当てる。
-:NHKマイルC出走予定のカラクレナイ(牝3、栗東・松下厩舎)についてお伺いしたいと思います。その前に、厩舎が新しくなりましたね。環境の方はどうですか?
松下武士調教師:やっぱり良いですよね。
-:向こうの方が結構静かだと言われていました。
松:だけど、日当たりが悪いのでね。
-:何か馬に影響はありますか?

▲新しい厩舎でカラクレナイと若き俊英トレーナー・松下師
松:移動した当初は場所や環境が変わるので、カイバが落ちるような馬もいましたけど、1月に移ってもう3カ月なので、今は全然影響はないですね。
-:さて、カラクレナイですが、前走の桜花賞は4着という結果でした。振り返ってみてどのようなレースだったでしょうか?
松:馬場も重かったですけど、そこまで苦にもせずシッカリと最後に脚を使ってくれたから、突き抜けるかと思っちゃいましたね。夢を見ました。
-:最後は脚が同じになった感じでした。あの馬場は3歳の牝馬にとってはかなり厳しい条件だったと思います。その道悪を走ることに関しては、レース前とレースを見て何か変わったことはありますか?
松:パワーがある馬なのでこなせるかなと思っていたので。こなしてくれて、全くアカンかったことはないのでね。及第点というか、イメージ通りですね。
「休み明けはちょっとボケてるのもあるかもしれないかなと思っていましたけど、フィリーズレビュー(のパドック)は大人しくて、叩き2走目の桜花賞ではちょっとピリッとするのかなと思ったら、フィリーズレビューと同じように歩けたので」-:レースですが、かなり早い段階で後方に控える形になったと思いますが、その辺りは田辺ジョッキーとお話しての作戦ですか?
松:そうですね。田辺騎手も新馬から全部のレースを見てくれて「やっぱりこういう競馬の方が良いかな」と。万両賞の時にある程度前に付けて勝ちましたけど、他のレースと比べたら、やっぱり切れ味がね。鈍いとまではいいませんけど。万両賞の位置に付けて同じ脚を使えたらね。万両賞の時も終いの脚は掛かっていますけど、勝ち時計自体は一緒というか、ほぼ変わらない勝ち時計で走っているので。
-:全体的なパフォーマンスを落とすほどではないということですね。
松:そうですね。でも、フィリーズレビューも後ろから行って勝っているので、G1だからと言って、変にポジションを取りに行くのではなく、いつも通りの競馬でどれだけやれるかという感じですね。
-:桜花賞のパドックはいかがでしたか?
松:イレ込んでなかったですね。休み明けはちょっとボケてるのもあるかもしれないかなと思っていましたけど、フィリーズレビューの時は大人しくて、叩き2走目の桜花賞ではちょっとピリッとするのかなと思ったら、フィリーズレビューと同じように歩けたので。2歳の時はパドックで本当にチャカチャカしていたのですが。
-:この時期の子だったら特に、そこでスタミナを消費しちゃって凡走に終わっちゃう可能性もありますよね。
松:そうですね。馬がいるところに慣れたというのもあるのでしょうね。ゲート入りも大人しいですし。

▲桜花賞のパドック フィリーズRから+2キロとなる480キロの馬体重で出走した
-:距離ですが、桜花賞以前は1400mを4戦使われて、血統的にスプリント色が強いのかなというのに対して1ハロン延長というのは、どのような印象を持ちましたか?
松:まあ、1600mは大丈夫やろなと思いますね。
-:母系を遡っても、富士Sを勝ったレッドチリペッパーという重賞馬がいたり、その辺りも含めて距離も大丈夫だろうと。
松:そうですね。1400~1600m辺りはいいですよね。
-:スピードがかなりあると思うのですが、まだスプリント路線にはし辛いですか?1200mを使うのは。
松:長いところを走れるならば長いところを走りたいですね。
-:将来的なプランとして(距離延長の)可能性があると。
松:そうですね。1600mで全くダメだったとは思わないのでね。
-:前走の桜花賞の時は、田辺ジョッキーが「馬込みでも大丈夫だった」という事をかなり評価されていましたが、気性的な問題を含めて、レース振り自体はどうでしたか?
松:かかったりしないですからね。

-:年を跨いで成長が見られる点でしょうか。
松:フィリーズレビューを勝ちに行こうと思っていて、3着までに来られなかったら桜花賞に出られるか分からなかったので、叩いて桜花賞、というスタンスではないですね。賞金があったらそれでも良いのですが。
-:そう考えると、その時は初めての休み明けだった訳ですが、その時に何か注意された点や、意識された点というのはありますか?
松:本当に最初からシッカリ仕上げましたね。ここで権利を獲らなかったら桜花賞に使えないという所があったので。
-:その前に使われてきたローテーションを見ても、コンスタントに成績が出ていて、客観的に調整面で苦労するところがないというか、毎回順調に行く仔なのかなという印象でした。
松:そうですね。フィリーズレビューを使った時は、どこかちょっと走り切った感がありましたね。肉体的というか、精神的に、ですね。
-:今回の桜花賞後と比べるといかがでしょう?
松:フィリーズレビューを使った後より、桜花賞を使った後の今回の方がダメージ的には少ないかなというところですね。
-:ちょっと遡りますが、デビュー前の印象というのはいかがでしたか?
松:バランスが良かったですけどね。最初に見たのは1歳の夏頃で、その時と馬は変わりましたね。
-:何か特徴的に変化に気付いたことはありますか。
松:その時と今で何が一番違うかと言うと幅が出ましたね。ゲート試験を受けて、放牧に出して戻ってきて、やっぱりグンと良くなりましたね。
-:性格など何か特徴的なことはありますか?
松:普段は、厩舎の中ではすごく大人しいですけどね。普通、牝馬だったら、精神的にエサを食べない馬はやっぱり風が吹いたりしたらビクビクするので、そういうのがないですね。そう考えると他の牝馬よりも大人っぽいというか、ドッシリしています。

▲新しい馬房でも落ち着いた様子が窺えるカラクレナイ
-:あんまりヤンチャなところはないですか?
松:そうですね。やっぱりちょっと人がいるとテンションが上がることは上がりますけどね。
-:それは自分でスイッチを入れている感じなのでしょうか?
松:自分にスイッチを入れているのか、勝手に入っているのかわからないですね(笑)。あと、美人ですよね。綺麗な美形ですしね。
-:在厩調整とのことですが、時計はいつくらいから出す予定ですか?
松:週末(23日)15-15をやります。それで来週、再来週と。
-:この2戦を見ていて、中間は併せ馬ではなく単走での調教がメインだったと思うのですが、その辺りに何か意図があったというか?
松:いや、併せ馬はいらないんですよ。どちらかと言うと勝手に行くので、併せ馬をしたらちょっと引っ掛かるかなと。するなら前に置いて、ですよね。最初から併せちゃったら、もう。基本的には気が良いのでね。今回も単走で調整を進めていきます。
-:重賞ウイナーで桜花賞4着という結果だけを見ていても、世代では能力上位というのは多くのファンが思っていることだと思いますが、次は牡馬との対戦になり、勝負として武器になるモノは何かありますか?
松:やっぱり終いが本当にシッカリしているのでね。新馬からずっと終いは最後脚を使ってくれていますしね。パフォーマンスに再現性があるのでね。今日は不発でしたというのがまだないので。
「ウチの追い切りをしている時間帯を考えたら、すごい時計ですよね。開場一番でやっている訳ではないので、開いて20分とか経ってからやっているのでね」
-:その当たりは、調教でも中間は終い11秒台を使ったり、毎回すごいキレを見せていますね。
松:ウチの追い切りをしている時間帯を考えたら、すごい時計ですよね。開場一番でやっている訳ではないので、開いて20分とか経ってからやっているのでね。
-:合図に対する反応はどうでしょう?
松:どちらかと言うとダラッというタイプですね。
-:逆に言うと、今までデビューしてここを強化したいとか、こういう面が改善して欲しいなと思ったりしたことはありますか?
松:桜花賞だったら、出てから下げるまでにちょっと頭を上げたり、というところがあったのでね。ただ、ミルコが乗ってのレースではないんですよね。どっちかと言ったら出遅れ加減で出るので。逆に川田騎手にしても、田辺騎手にしてもゲートは出るんです。出るから下げるので、その分、余計にね。出ているから下げるのにちょっと頭を上げるというか、折り合いを欠くようなところがあるけど、あの後スッと落ち着きますけどね。
-:表現は少し良くないかもしれないですけど、そう考えると少し出遅れたくらいの方が馬には良いかもしれないと。
松:そうですよね。出遅れようと思って出遅れている訳ではないと思いますけどね。
-:さっき「調教でも併せ馬をするとムキになる」というのと一緒で、レースでもやっぱり隣にいるとちょっと抜こうとするということですかね。
松:だから、桜花賞の時に田辺騎手も「前に付いていこうと思えば付いて行ける」と言っていたので。ただ、今までのレースを見て、下げた方が良いと思ったから下げたはずなので。
松下武士調教師インタビュー後編
『青写真通りのNHKマイルC参戦!輸送、左回りの課題は?』はコチラ⇒

プロフィール
【松下 武士】Takeshi Matsushita
1980年12月14日生。大阪府出身。安田伊佐夫厩舎、武田博厩舎、清水久詞厩舎を経て、2015年に開業。初年度にオースミムーンが重賞2勝を挙げる活躍を含む二桁勝利を記録。昨年は27勝を挙げ、2017年は4月30日現在7勝。今若手調教師として最も注目を集める。