ヤマカツエースが、渾身の仕上げで一発を狙っている。2016年の有馬記念は4着、今年の大阪杯でも3着とG1級の力を証明した。札幌記念は内ラチ沿いを回った2頭に先着を許したが3着と崩れず、前走後は陣営の狙い通りに筋肉の張りや追い切りでの反応が良化。自信を持って本番に送り出す土屋均調教助手に、胸の内を聞いた。

思惑通りのローテで虎視眈々

-:天皇賞・秋(G1)に挑むヤマカツエース(牡5、栗東・池添兼厩舎)ですが、けっこう早い段階から札幌記念を経てここというローテーションは決まっていたのですか?

土屋均調教助手:そうですね。ここを目標に秋は来ていたからね。もともと調教師が決めていたみたいですね。

-:よく暑い時期は苦手と言われてきましたが、時季的な状態面の変化はこの馬にありますか?

土:それは関係ないと思うけどね。

-:今週は台風が懸念されますね。重馬場でも勝っているものの、馬場適性はどうですか?

土:みんなが苦にするのなら、ちょっとくらい悪い方が良いんじゃないですか。(池添)ジョッキーは「良馬場が良い」と言うんだけどね。

ヤマカツエース

-:僕も、直接ジョッキーに伺ったことがあったのですが、その週は確か雨の予報があって、思っていたことと逆に言われたので意外に思ったんですよね。少し前の話題ですが、有馬記念の時はタイトな競馬で、強豪相手に4着でした。あれを見ると、ああいう相手でも十分にやれるのかなというように思ったのですが?

土:そうそう。メンバー的には大阪杯も差のない競馬をしていたから。

-:しかも、外枠(13番)からでしたからね。

土:だから、そんなに悲観することはないかなという感じではいますけどね。ここで良い競馬をしたら海外(香港)が見えてくるから、もう1回2000mを走れるという可能性が出来てくるでしょう。何とか良い走りをしたいなと。

-:札幌記念もインで溜めて馬だけが伸びていて、2着馬も芝では実績で見劣りするような馬だったことは事実です。それが来ているということを考えると、やっぱりロスなく乗った馬が浮上するレースだったのかなと。

土:今はそういう競馬が主流ですよね。外国人も増えて、みな内を回って、最後だけ外という競馬をしているから。ええ、他の後ろから来た、先週(富士ステークスを)勝ったエアスピネル(5着)には先着しているから、そんなに悲観することはないのかなと思うけど。

ヤマカツエース

-:左回りの2000というのも、中京(金鯱賞)ではけっこう良い勝ち方をしていますからね。

土:でも、東京では0-0-0-3で全て二桁着順。みんなマイナス要素だと言われていますね。

-:土屋助手から見られて、今までの東京での敗戦理由を教えていただけますか?

土:富士S(13着)の時は詰まって全然出られなかったし、NHKマイルC(13着)の時は、春にかけてたくさん使っていたからね。疲れもあったのかなと。去年は僕がケガをしてやっていないから分からないけど、いまとは体重が違いますよね。ここのところはずっと安定した成績で来ているから、右であろうと左であろうとね。

「筋肉がグッと盛り上がったし、(レースになったら)もうワンランク上がるので、今のところは注文を付けることがない感じで仕上がってきています。今週も時計は全体的に遅かったけれども、輸送もありますからね」


-:さっきおっしゃっていた、成績を落としていないのに不当に人気が落ちそうな感じがするのですが、馬券的にはかなり面白い存在だと思っています。

土:ファンとしてみれば、ありがたい存在になれればね。不安要素が少ない感じで今回は来ているので。

-:札幌から帰ってきた時と比べても今と全然違いますものね。

土:もちろん一緒だと困るんだわ、ハハハ(笑)。筋肉がグッと盛り上がったし、(レースになったら)もうワンランク上がるので、今のところは注文を付けることがない感じで仕上がってきています。今週も時計は全体的に遅かったけれども、輸送もありますからね。

-:1週前にしっかりやられていましたね。

土:やっているし、今日(10/25)も馬場が重たくて遅いとは言っているけど、実質普通に考えれば、それなりに時計は出しているので、その点には心配していないですね。

結果の出ていない東京でも不安ナシ

-:気持ちとしては、一泡吹かそうという感じですか?

土:出るからには、何とか一つでも前に、という思いではいますけどね。こればっかりは相手がいるので。毎日王冠組は中2週でパンパンの良馬場でやって、中2週ですから、それに比べればゆとりのあるローテーションだと思います。

-:毎日王冠組は楽ではないローテーションになりますからね。

土:それが嫌で、僕たちは札幌記念から行こうというローテーションを選んだので、それが休み明けでさらに上がるのか、ダメージが出るのか、ですね。タフな馬だったら良いでしょうけど。

ヤマカツエース

▲19日、CWコースで6Fから一杯に追われ、81.3-65.9-51.8-38.0-12.1秒をマークした

-:毎年当たり前のように毎日王冠を使っているのを、我々も当たり前のように観てしまっていましたけど、今年はヤマカツエースが札幌記念からですし、ステファノスはオールカマーからですし、よくよく考えると多少間隔があった方が、結果次第ではそちらの方が良いんじゃないか、となるかもしれませんね。

土:僕たちはこっちの選択肢を取ってどう出るか。これで良い成績が出れば、こういうローテーションになってくるかもしれないですね。また3~4年掛かるんだろうけど、昔はエアグルーヴも札幌記念から天皇賞(秋)というローテーションを取っているしね。

-:馬体重的にはどれくらいになりそうですか?

土:多分510キロ前後にはなると思うので、そんなには変わらないかなと。輸送で減りやすい体質なので、それも考慮して今週はちょっとセーブする調教をしているから。

-:ヤマカツエースの場合、どれくらい減るものですか?

土:14~16キロくらいですね。先週ビッシリやって524キロだから、今週はそんなにやっていないから、ちょっとは増えていると思うので、考慮したら510キロ前後かなと。そう思って行ったら、ガツガツ食ったという例もあるからね(笑)。意外とその辺はやってみないと分からないですが、今までの経験から行くと、やっぱり14~16キロ減るから。

-:でも、体重がもし同じだったとしても、夏とは違いますか?

土:札幌記念の時の中身とは違うと思いますね。やっぱり今回は反応が違うし、札幌記念の時はやってもやっても、なかなか反応が良くなってこなかったものの、今回は自分から、オーバーワークにならないようにジョッキーにも言ったから。札幌記念の時はけっこうオーバーワークの時計になってしまったから、今回は手応えが良かった分、前の週から手応えを感じていたみたいで、なるべくオーバーワークにならないようにね。

-:札幌の時との違いはどういったところにありますか?

土:休み明けなのか、その間に1回使っているかという感じの差ですね。今回は放牧に出ないでずっと在厩で、1回緩ませてからつくってきたので。馬も1回つくっている分だけ反動の取り戻しも早かったので、その辺は心配していないですけどね。

ヤマカツエース

-:パドックではどんな雰囲気の馬ですか?

土:大人しいけどね。あんまりイレ込むようなことは。

-:枠の理想はありますか?

土:あんまり外はね。今回は特殊な2000だから、内でワンテンポ遅れて外に出したらちょうど良いんじゃないかなと思うくらいですよ。

-:今回の状態面というのは、今まで使ってきたレースと比較して、どれくらいですか?

土:大阪杯くらいのデキにはあると思ってつくっているので。当時は金鯱賞が休み明けだったので、いつも最終的に目標はG1でつくっていかないと、そこをMAXで行っちゃうと下がるしかないから。札幌記念を叩いたことで今回も上向いているし、G1でMAXの状態で行かないと絶対に勝てないし、あとは姑息に乗ってもらうことだけですよね。

-:王道で行って勝ち切るというのはなかなかいないですもんね。

土:なかなかいないよね。みんな見ていたら、やっぱり内でジッとしている。(秋華賞の)ディアドラにしたって、みんな内にいるんだから。

-:今まででのヤマカツエースのベストレースはどれですか?

土:今までで一番良かったのは、やっぱり金杯が一番乗ったんじゃない。他馬もいるので、簡単にはいかないだろうけど……応援してください。

-:ひと泡吹かせてください。

土:そうやね。