シュヴァルグランが、引退する宿敵から王者の称号を奪い取る。前走のジャパンカップでキタサンブラックを破って悲願のG1初制覇。昨年は想定外のプラス体重で伸びを欠いたが、今年は対策バッチリで大一番に挑む。大江祐輔調教助手と津田朝明調教助手に、今だから明かせるジャパンカップ前の作戦や、シュヴァルグランの知られざる素顔を聞いた。

レース前から「完璧だった」ジャパンC

-:まず、有馬記念(G1)に出走するシュヴァルグラン(牡5、栗東・友道厩舎)ですが、ジャパンCでの初G1制覇、おめでとうございます。

二人:ありがとうございます。

-:レースを振り返っていただけますか。

津田朝明厩務員:競馬に向かう前の段階から、完璧だったんじゃないですかね。

大江祐輔調教助手:前もって作戦を立てて、本当に枠順(1番)が良かったので、想定していたとおり事が進みましたね。

シュヴァルグラン

左が津田朝明調教助手、右が大江祐輔調教助手

-:前段階ということで言うと、京都大賞典(3着)から振り返っていただきたいのですが、春のローテーションはけっこうセットみたいに決まっているじゃないですか。今年は使い出しが京都大賞典からということで、去年のアルゼンチン共和国杯からの始動よりもちょうど1カ月くらい早かったということは、夏の過ごし方が去年よりも順調に来たということだったのですか。

大:馬の状態として、夏も全然違う内容だったんですよね。すごく良い夏の過ごし方をしたのですが、その前の春の段階でしっかりと馬ができていて、ダメージなく夏の放牧に出して、そのまま順調に来たという感じで、春の段階からすごく良かったんですよね。だから、夏の状態で良くしたということじゃなく、春から過ごし方が良かったので、夏も順調に行ったし、そのまま良い状態で秋の土台としてやってこられたというのが、ジャパンCの勝利につながっていると思いますね。

シュヴァルグラン

京都大賞典でのパドック

-:京都大賞典は、ジャパンCに比べるとペースが若干速くて、位置取りとしても少し後ろ目からでしたね。

大:そうですね。今年に入ってから出遅れたというのは、唯一あのレースだけで、僕たちからしても、あそこから競馬するというのは想定外で、ちょっとスタートが悪かったんですよね。今年に入って今までにないくらい悪かったので。さらに運が悪いことに挟まれちゃって、内から外へという大味な競馬でしたけど、それでいてあの着差なので。勝てなかったのは本当に悔しかったですけど、この馬の力を再確認させられたと同時に、次のジャパンCでも十分仕上げられる、という確信めいたものがありましたね。

-:後ろから行ったにしても、4コーナー手前ではかなり脚を使って取り付いて、それも一番外からという、かなりしんどい休み明けのレースだったような気がするのですが、疲れというのはいかがでしたか?

津:それは全然なかったですね。もう全くと言っていいくらいで、むしろ乗り出して、使って良くなっていると感じるくらいでしたね。

-:そういうレースで疲れがなかったことが、ジャパンCにつながったかなということですか。

大:今年に入ってレースで疲れたことはないですよね。天皇賞(春)と阪神大賞典でさえ全然疲れなかったですね。

津:やっぱり体質が一ランク上がっていると。

シュヴァルグラン

京都大賞典のレース後、引き上げてくるシュヴァルグラン

-:競走馬も成長期を超えて、しっかりとした男馬になって完成に近づいているということですね。去年と比べての体重の変化を教えていただきたいのですが、単純に数字だけを見たら、去年は480キロくらいで来ていて、今年はおおむね470キロくらいで使っているじゃないですか。作り方をシフトしたというのはありますか。

大:意図的にしっかり乗って、体重はそれくらいで出そうという感じで今年1年は(レースに)出していますよね。

津:初めに480キロ台で重いなと感じたのは4歳明けの日経新春杯です。あの負け方をしたので、この馬にはちょっと重いのかなという印象はあったんですよね。その後に阪神大賞典を使う時に「今度は絞って出すつもりでいるんですけど」みたいな話を先生にはして、先生からも「それで良いんじゃない」といった話だったので。

-:その後、468キロを挟みつつ、去年のジャパンCがまたプラス8キロでした。

津:そこは想定外のところがあるんですよね。だから、アルゼンチン共和国杯を使ってジャパンCと間隔が詰まっているので、中間でそんなに攻められないということと、アルゼンチン共和国杯の時は輸送前の体重からマイナス10キロだったんですよね。それを想定したら、今度は全く減らずにジャパンCを迎えました。輸送が2回目で慣れたのか、そういうことがあったんですよ。

-:数字だけ見たら今年の方がシャープになっていて、実際に結果は出ていますしね。ジャパンCの直線の伸びを見ていても、この馬は右回り、左回り関係なく走ると思うのですが。

津:走りますね。

-:ボウマン騎手がステッキを入れるタイミングも綺麗でしたね。

大:格好良かったですね。馬が伸びているから、余計に格好良く見えるんですよね。

-:残り300mくらいで、左ステッキを抜く時のモーションから連打が1回もないですからね。ステッキは全部で5回でしたかね。

大:もともとオーストラリアはステッキが厳しいですからね。そういう習慣が付いているジョッキーですから。

-:待って叩いているのがすごく“らしい”感じがして、しかも最後の一発は取っといたけど、勝てるからもう叩かなくて良いわ、みたいで、すごく新鮮でしたね。

大:ムチに頼らないというか、シッカリと扶助で動かしてくるという感じだったですね。

今だから明かすジャパンCの作戦
シュヴァルグラン陣営インタビュー(2P)はコチラ⇒

シュヴァルグラン

2人も信頼を寄せているオーストラリアの名手・H.ボウマン騎手