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デキが良いのか悪いのか… 常日頃からテンションの高さがつきまとう

-:この馬はクロフネ産駒ですね。クロフネ産駒の走る傾向を見ていると、母系にサンデー系の血が入っている馬がよくいる印象ですが、この馬は違いますよね(母父フォーティナイナー)で、そこが馬体を見る上で異色なのかなと。改めて当初の見立てはいかがでしたか?

木:馬に申し訳ないけど、本当に競走馬になれるのかなという感じでした。ヒョロヒョロとしていて、ただただうるさかった。今も下見所でジッとしていられないからね。

-:それはイレ込みとは違うのですね。

木:違うんだろうね。せっかちというか、ジッとしているのが無理なんだろうね。この前は大人しかったけど、正直、今日が良いのか悪いのか把握できない。把握させないし、常にこういう感じだから。

-:常にチャカチャカするということですね。

木:逆に、エネルギーを消耗しなくて良いんじゃないのというくらい。ただ、馬場に入ると、意外と素直なんだよね。

木原一良

-:先生にとっては悔しい一瞬だったと思うんですけど、なかなかG1初挑戦で2着には来られないですよね。「この馬の走り頃が分からない」とおっしゃったのは、例えば、追い切りを観させてもらうじゃないですか。お世辞にも、ゴール前の脚色だけで見ると、G1で好走するような迫力がないというか、ちょっと脚が上がりかけじゃないかと思ってしまいます。先生は追い切りに関してどう判断されていますか?

木:ええ、やると時計が出てしまうからやらないだけです。やってしまえばすぐに(6ハロン)80(秒)を切っちゃうからね。ああいう性格だから、オーバーワークになってしまう。だから、コントロールしているんです。馬が競走モードに入っちゃって、ゴーンと(ハミを)噛んで行ってしまうと、どうしようもなくなるから。そうさせないように持っていっても、速くなってしまいますから。普段の性格を見ていて、ただでさえ(テンションが)高いのに、MAXに持っていったら、競馬は難しいですよね……。

-:今回は輸送もあるから、よりソフトな調整になりますか?

木:と言うよりは、東海Sを使って体ができているから、ここからは悪くならないように整えることですからね。

-:東海Sは、ある意味ガス抜きになっていると。

木:そう思います。だから、今回のフェブラリーSは僕にとって重圧だよね。そういう重圧を避けたいけど、結果が示す通り、(プレッシャーを)避けるコメントというのは出来ないんだよね。

-:そういう重圧のかかる状況で行われた今週の1週前追い切りはいかがでしたか?

木:悪くないと思いますよ。馬場の入りもソフトに入れているし、力まずに走れているし、ヨソの馬がビューンと寄ってきた時はヒヤッとしたけど。

-:全体時計はいかがでしたか?

木:良いんじゃないですか。(CWを6Fで)84秒かな。折り合っていっているから、ちょっと頼りなく見えますよね。でも、気合いを入れて、ちゃんと追っているから、あれで十分だと思いますよ。来週は馬体を調整する程度ですね。もう細工する必要はないし、身体は出来ているからね。これ以上悪くさせなければ、と。

「僕は正直、馬込みが怖いとは思わない。それよりもフタをされるのが怖い。変に馬込みに入って、動きたい時に動けない。それが嫌だよね」


-:これだけコツコツ積み重ねて、2着、3着には来るけど勝てないという時期があったのが、ここまでくるというのはスゴいことですよね。それは結局、さっき言っていた「テンションが高くて、せっかちな馬」をみんなで協力して力を合わせていったというところに、今の成績があるのでしょうか。

木:竹之下君が乗って、掛かる馬を馬込みに入れて、上手く折り合いを付けてくれました。僕は正直、馬込みが怖いとは思わない。それよりもフタをされるのが怖い。変に馬込みに入って、動きたい時に動けない。それが嫌だよね。だから、今の競馬をやっていると、(周りを)見ながら行けますからね。自分で競馬をつくれるから。

-:逆に言うと、チャンピオンズCは外枠よりももうちょっと内目の方が欲しかったけども、今回のマイルのフェブラリーSに関しては包まれたり、下がってくる馬がいるから「真ん中よりも外枠が欲しい」ということですね。

木:自分の競馬をしたいからね。もう(古川吉洋)ジョッキーが知っているから。ゲートが良いから、ポジションを取りにいけると思うから。

-:芝の部分だけですね。

木:それだけだね。芝がどうなのかなと、そこだけだね。

-:先生の相馬眼で言うと「芝馬に近い体」というところから、逆にダートスタートよりも良いかも分からないですね。

木:そういうことなんだよね。

テイエムジンソク

手綱を執ったのは僅か2人のジョッキー 昔ながらの流れを汲む人馬

-:勝てば、先生としては初G1タイトルですね。

木:辞めるまでに1個は欲しいなと思っているんです。その夢に一番近いのがこの馬でしょう。こういう馬はつくろうと思っても、なかなかできないじゃないですか。出会えたから、モノにできるか、できないか……。これはやっぱり能力があって強くても、G1だけは運がないと勝てない。みんな勝ちに来るから。馬と人間に運があるか、ないか。今は古川ジョッキーが(先週もきさらぎ賞に勝って)乗っているから、悪い方に考えなくても良いんじゃないかなという気がするんだけどね。波に乗りたいなと。

-:テイエムジンソクを育ててきた1人である技術調教師の武英智先生も厩舎を3月に開業されるわけで、良いことばっかりですね。

木:そうなんだよ。「(技術調教師として厩舎の手伝いを出来るのは)最後ですから、僕もフェブラリーSを観に行きます」と言ってくれました。

「この馬が走るからと言って、(オーナーから)いつも以上に電話が掛かってくる訳でもありません。何か話したいことがあったら相談、ということで電話を掛けるから、そこら辺は本当にありがたいです」


-:最初から育ててくれた竹之下ジョッキーを含め、色んな人が関わって、ここまで来たという感じですね。

木:(古川吉洋と竹之下ジョッキーの)2人しか乗っていないからね。一般的には地味に思われるかもしれないですが、ウチはそういう厩舎だから。

-:今は乗り替わりが多い競馬社会にとって、ちょっと異例ですよね。

木:それはオーナーに恵まれているから。オーナーの甲斐性だよね。

-:太っ腹なオーナーですね。

木:それは感心させられます。この馬が走るからと言って、いつも以上に電話が掛かってくる訳でもありません。僕はちゃんと連絡はしているのですが、社長さんも何かあったら、絶対に電話が来るのが分かっているから、何か話したいことがあったら相談、ということで電話を掛けるから、そこら辺は本当にありがたいです。

-:それも、やっぱり先生の人柄があってからこそじゃないですか?

木:いや~……(笑)。

-:競馬の古き良き流れが今も残っているみたいですね。

木:競馬界を盛り上げていくためにも、ちょっと変わったジンソクがいても良いでしょう。最初から応援してくれているファンがいるのかなと思いつつね。

厩舎初G1へ プレッシャーのかかる日々
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木原一良

▲木原師も信頼を寄せるテイエムの竹園正繼オーナー