2018年6月23日(土)、東京ジャンプS(J・G3)で前人未到の障害レース2000回騎乗を成し遂げた林満明騎手が、ムチを置いた。1986年のデビューから33年連続で積み上げた全277勝のうち、障害レースで197勝。52歳まで自らつくった馬とともにハードルを越え続けてきた「レジェンド」だ。障害レースにかけた思い、106回の落馬、戦い続ける恐怖と後遺症、意外な趣味……。周囲やファンから愛された林騎手の魅力をタップリお届けする。

106回の落馬 恐怖を乗り越える秘訣は?

-:32年、長い間お疲れ様でした。

林満明騎手:ありがとうございます。

-:最後のレース(アスターサムソンに騎乗した東京ジャンプS)は、ファンの熱い支援がオッズとなって表れていましたね。

林:そうですね。パドックでも声援が多かったですね。

-:どんな心境で乗られていたのですか。

林:1.9倍の馬だったので、プレッシャーの方が大きかったですね。

(ゲートを)出てしまえば開き直れるんだけど、3コーナーで手応えが怪しくなって、“あれ、おかしいな!?止まる馬じゃないのに”と思っていたら、上がってきてから右後繋靱帯不全断裂が分かったんですけどね。

林満明騎手

▲引退式で障害レースのジョッキー仲間に囲まれる林満明騎手

-:最後のレースが最下位になってしまったというのは、ファンにとっては残念だったと思いますが。

林:馬には申し訳ないですけど、僕らしいと言っちゃ、僕らしいかな。

-:その後にセレモニーがあって、仲間のジョッキーから掛けられた言葉で何か印象的なことはありましたか?

林:やっぱり「お疲れさん」という言葉を掛けていただき、自分もホッとしましたね。

-:これまで障害、平地を含めて32年間乗られてきました。障害競走って怖いじゃないですか。その恐怖感とどういう風に付き合ってきたのですか。

林:どうなんですかねぇ。昔はワクワクして乗っていたんだけど、ケガをしたり、落馬が続いたりした時は、段々乗る度に怖くなってきましたね。

-:そういうのは平地も障害も経験値が上がれば上がるほど怖い経験もする訳で、それで怖くなるというのはあると思うんですけど、林さんの場合は落馬が100回越えているんですよね。

林:106回あります、ハハハ(笑)。

「馬をつくるより、勝つことが癖になるんですよ。レースに行って勝ったら喜びになって、何となく怖さを克服するんですよ。負けっぱなしだったら、怖くて怖くてしょうがないと思いますよ」


-:そういう怖さを克服するためにも、やっぱり障害馬をつくる時に乗り越えたのでしょうか。

林:馬をつくるより、勝つことが癖になるんですよ。レースに行って勝ったら喜びになって、何となく怖さを克服するんですよ。負けっぱなしだったら、怖くて怖くてしょうがないと思いますよ。

-:勝つことというのは平地、障害に関わらず、ジョッキーにとって一番のご褒美だと思うんですけど、平地のジョッキーと一番違うのは、障害のジョッキーは自分で馬をつくらないといけないところがあると思います。そのつくり方ですが、ファンに伝わるようなことがあれば教えていただけますか。

林:角馬場で小さい丸太の障害から行って、自分で御しやすいようにつくらないといけないので、難しいと言っちゃ難しいけど、やりがいがあると言えば、やりがいがある仕事です。自分の思うように仕上げて、レースに行って勝ってくれたら最高なんですよね。走らなくても、自分でつくった馬はかわいいんですけどね。

-:馬はやっぱり臆病な動物ですから、小さい丸太を跨ぐだけでも、最初は躊躇したり、精神的な克服が平地よりも求められるのかなと思うのですが。

林:そうですね。使わない筋肉を使うので、歩様が良くなる馬は良くなるし、悪くなる馬はトコトン悪くなる場合もあるんですよね。

林満明騎手

▲引退レース週にアスターサムソンの調教をつける林騎手

-:林さんが乗られた以外の馬を含めても、最近で障害練習によって良くなった例と言えば、ガンコ(牡5、栗東・松元茂厩舎)ですか?

林:だろうね。

-:北沢(伸也)さんがつくられて「そのレースが終わったら、障害だ」と言っていたら、勝っちゃいましたからね。過去にもメジロパーマーとかもいましたからね。

林:もともと素材が良かったんだと思うけど、障害練習で鍛えられて、(使えない筋肉が)補えたのでしょうね。

-:そう考えたら、林さんが「障害に合う馬というのは、ダートの中距離で活躍していた馬」と以前、おっしゃっていました。それをもう一歩踏み込んだところで、何故そうなのか、解説していただけますか。

林:やっぱりダートを走るパワーと器用さが必要になりますよね。あんまり長いところだけでダラダラ走っている馬よりは、中距離くらいで活躍出来る馬の方が良いのかなと。短距離馬でも、息の入れ方さえ覚えてくれれば、短距離馬の方が障害を飛ぶのは絶対に上手いはずだから。ピッチ走法で器用さがあるから。

「今年は8勝しているけど、中央場所でしか勝てなかった。ローカルの速いスピードで跨ぐような飛びでは通用しなかったですね」


-:障害というのは、生垣を跨ぐように飛ぶ馬もいれば、飛び越えるような高い飛越の馬もいると思いますけど、どういう馬が好みでしたか?

林:やっぱり綺麗に飛んでくれた方が怖くないですし、気持ち良いですね。スピード的にはやっぱり“(飛越を)跨ぐ”方かなぁ。でも、最近、僕の乗った馬では、跨ぐ馬じゃダメだったね。今年は8勝しているけど、中央場所でしか勝てなかった。ローカルの速いスピードで跨ぐような飛びでは通用しなかったですね。

-:それはどの辺に問題があるのですか。

林:やっぱり馬のつくり方ですけど、キッチリ飛ぶように教えちゃったからね。

-:キッチリ飛ぶ方が良いのですか?

林:僕は本場のレースの方が好きですね。ローカルのスピード競馬は怖いですね。13秒前半で障害に向かっていくんですよ。限界超えていますって、ハハハ(笑)。(馬のコントロール)以前に、馬任せしかないですもんね。

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