
ケイアイノーテック 担当者の熱意が紡いだGI制覇 厩舎所縁の血統馬が秋初戦へ
2018/10/1(月)
-:でも、この辺ではまだ本領発揮出来ていなかった時期ですよね。朝日杯の走りとニュージーランドTでは惜しくも2着の末脚とはまた違っていた感じがするのですが。
平:何か違ってきた感じはするよね。この馬は好位差しが一番良いんだけど、そういう競馬をするよりもちょっとジックリ構えていった方が良いと、あの頃に段々何となく分かってきたような…。それにスタートして、前に行けなくなってきていたからね。
-:ケイアイガーベラみたいな先行力を武器にしていたお母さんの仔がけっこうマッタリ後ろで構えるという。
平:だから、ウオッカなんかもそうですね。お母さんのタニノシスターも短距離馬ですからね。それがあんなことになっちゃうんだから、それと似たようなことなのかと思う部分もあります。ケイアイノーテックに関して言えば、どこまで距離が持つか現時点では分からないけど、ひょっとしたら、可能性としてもっと違うところになるのかもしれないですから。
-:そこから上り調子でNHKマイルCに向かえましたよね。
平:上り調子というより、当時はギリギリだと思っていました。秋に帰ってきてから2回使ったし、正月にこぶし賞でも負けたから、1回多く使っているしね。ニュージーランドTの時も体重がガクッと減ってしまった。ニュージーランドTの後にNHKマイルでまた府中に行かないといけないし。その辺りは調教でも控えめに、控えめにしていたから、僕的にはもうギリギリだなと見ていたんですよ。でもNHKマイルであんな凄い脚を使うのだから、今思うと、馬的には調子が上がってきた時期なのかもしれないね。
-:しかも、直前にジョッキーの乗り替わりもありましたからね。
平:そうですね。毎回、毎回ジョッキーが替わっていましたからね。本当は固定したかったんだけど…。NHKマイルは早めにユタカ(武豊)を押さえておいてよかったなと思ったんだけど、騎乗停止で乗れなくなって、それからはちょっと慌てましたね。レース1週前だったので何人かに声をかけたけど、みんな予定があるから即答はしてくれなくて。でも、(藤岡)佑介が早めに「乗ります」と言ってくれたんです。
-:そのチャンスを活かした藤岡佑介ジョッキーにとっても、悲願のG1初勝利でしたね。
平:佑介にとっても良かったよね。
-:いま映像を観ても、ポジション的には届くのかなと思うような映像ですが、現場での先生はどんな思いでレースを見ていましたか。
「やっぱりニュージーランドTが勝ち時やったかな…1走多かったなと思いましたね。諦めてはいなかったけど、半分くらいそんな気持ちになって観ていたんですよ」
平:スタート自体もちょっと遅かったですし、行き脚がつかなくて「オイオイ府中のマイルやぞ」と思いながら観ていました。逆に肩の力を抜きながら、やっぱりニュージーランドTが勝ち時やったかな…1走多かったなと思いましたね。諦めてはいなかったけど、半分くらいそんな気持ちになって観ていたんですよ。師匠(石坂正調教師)と一緒に観ていたから、「レッドヴェイロンの手応えがすごく良いですね」という話をしながら観ていて。4コーナーを回って一緒に伸びてきてはいたけど、先にヴェイロンの方が勝つんどろうな、と思って観ていたから、本当に直線の半ばくらいまでは「また師匠にやられたわ」と思っていたら、そこからギューンと伸びてきたからね。内の方はごった返していて、ギベオンが抜け出したのしか観ていなかったです。この勢いだったらギベオンを交わすな、勝ちそうやな!と思ったのが最後の1ハロンくらいで、「佑介!佑介!」と叫んでいました。
-:先生にとってはNHKマイルC2勝目なのですが、カレンブラックヒルとは全く真逆の競馬でしたね。
平:カレンブラックヒルは4コーナーを回って、残り300くらいでもう勝ったわ、という競馬でしたからね。あの時は1番人気でしたね。
-:ケイアイノーテックがゴールした時に勝ったという確信はありましたか。
平:勝ったかな、差し切ったかな、というのはありましたね。
-:その時は、師匠であるレッドヴェイロンの石坂先生はどんな反応だったのですか。
平:見たけど、目は合わさなかったですね。かろうじて堀(宣行)君が、確か後ろで「おめでとう」と言ってくれました。これまであと一歩という競馬が続いていたから、やっぱりこんな脚を持っていたのだなと。だから、何が良かったのか今でも分からない部分はあるけど、長く良い脚を使う馬だと改めて分かりましたね。
-:溜めて、溜めて一瞬の末脚を使う馬ではなく。
平:後で見直したら、3~4コーナーの中間くらいから、もう追い出しているからね。追い出して、追い出して残り400くらいになって、やっとビューンと加速し出したからね。だから、あの競馬を見たら、マイル、マイルと言っていたけど、もっと距離を延ばした方が良いのかなと。
-:と言うことで、秋緒戦は毎日王冠ということですね。
平:その時点で、佑介とオーナーと相談して秋緒戦は毎日王冠にしましょうか、ということになりました。
-:今年の夏なのですが、非常に暑くて、早めに休みに入って良かったですね。
平:そうですね。良かったと思いますね。
-:目分量として、どれくらい成長している感じですか。
平:そんなに体が変わった感じはないけど、段々と大人の体になってきたなと。薄いイメージがなくなって、幅が出てきたと思いますね。体重はそんなに変わっている訳ではないけど、480キロくらいで少し逞しくなってきた感じはしますね。
▲担当の佐々木剛助手とケイアイノーテック
-:この夏も佐々木剛さんは見学に行ったんでしょうか。
平:行っているでしょうね(笑)。佐々木も函館に行っていたからね。僕が牧場を回っている時に回っていたと思います。時間帯はちょっとずれていたと思うけどね。
-:今度は府中の1800mになりますが、メンバーもけっこう揃います。開幕週の馬場でどういう風に戦いましょうか。
平:1800mだから、後ろからになったからどうこうと騒ぐことはないかもしれないけど、今回は挑戦者ですから。乗り方は佑介に任せます。ゲートの練習はしていくけど、前に行かないといけないタイプでもないから、落ち着いて観ていられるかなと思います。
-:むしろゲートの良し悪しというより、ゲートを出てからの一歩、二歩というところがマッタリしていますからね。
平:行き脚がつくかどうかだけど、だからと言って、無理に行かないといけないとか、そんな馬でもないことは分かっているから。またああいう競馬になるかなとは思っているけどね。あの競馬をして、古馬相手にどれだけ通用するのか、という思いはしますけど、あの馬の一番力を出させる形がああいう形であるのだったら…。出来れば、もうちょっと中団くらいにいて欲しい気はするけどね。
-:少しでも見栄えの良いポジションに。
平:そうですね。その方が安心して観ていられる気はするけどね。
「ガーベラは右前脚を振り回すところがあったんですよ。だから、左回りがダメだったのかなと。ノーテックに関してはそういう癖は全くないので」
-:お母さんは、左回りと右回りで極端に差がありましたね。
平:そうそう。それは競馬前には思っていたけど、ガーベラは右前脚を振り回すところがあったんですよ。だから、左回りがダメだったのかなと。ノーテックに関してはそういう癖は全くないので。それに、ガーベラはスタートを決めて、先行出来なかったら脆いという面がありましたが、ノーテックにはそういうことは考えないでいいですからね。現実にNHKマイルを勝ったから、ノーテックに関してコースの左右は全く心配しなくてもいいと証明できましたね。
-:母の苦手な左回りを息子が克服したということですね。
平:全く違う競走馬ですからね。でもケイアイノーテックはダートでも多分走れるんでしょうけどね。
-:先生としては興味深いところですか。
平:芝のG1を勝つのだから、ダートを使う必要はないけどね。どこかでちょっと見てみたい気はするけど、母の得意だった1400mのダートではないな。1800mくらいのダートでどんな競馬をするのか、ちょっと見てみたい気はしますよね。
-:春の成長過程というか、結果的に使いつつ仕上がってきたことを考えると、調教では春よりちょっと強めに取り組んでいるということはありますか。
平:いや、正直、今回は試金石で、結果も重要ですけど、目標はここではないので。仮に毎日王冠を使って、天皇賞(秋)となったら、中2週しかないから、ここでギリギリに仕上げても、という思いがあります。それに、使いつつ良くなっていくというイメージでみています。今週はちょっと馬場が悪かったせいもあるけど、時計が出なくて、佑介も「まだ太い」と言っていたように余裕がありますけど、来週、坂路でサッとやれば、臨戦態勢は整うと思っているんですけどね。
▲藤岡佑介騎手を背に1週前追い切り
-:毎日王冠を使って、その後は天皇賞(秋)に行くか、マイルCSに行くかというのは結果次第ですね。
平:そうですね、毎日王冠の結果を見てからですね。その次は天皇賞(秋)かマイルCSで、その後は本当に結果次第で変わってくると思いますよ。
-:どういう路線になるのか、香港ということもあるのですか。
平:マイルとなったら、もうそれしかないよね。香港は香港でも、香港カップに使っている可能性もあるしね。
-:距離は選べますからね。楽しみですね。
平:これからどういう風に変わってくるのか、ちょっと楽しみですね。
-:ダートはゴールドドリームで、芝はケイアイノーテックといいう牡馬の二枚看板ですね。
平:現状、そうですね。
-:この馬の一番のファンは担当者の佐々木剛さんだと思うのですが、最後にケイアイノーテックのファンにメッセージをいただけますか。
平:3歳の春に活躍してくれたので、同世代の中ではトップクラスの存在になりました。毎日王冠で秋緒戦を迎えます。これからの方向性を占う意味で、重要な一戦でもあるので、良い結果を残せるように頑張ります。
-:ありがとうございました。
▲(左)ゴールドドリーム、(右)ケイアイノーテック
芝・ダートのG1馬が隣同士の馬房に この秋の活躍が期待される
プロフィール

【平田 修】Osamu Hirata
1960年生まれ、京都府出身。1980年から栗東の内藤繁春厩舎で厩務員として勤務し始めると、有馬記念を人気薄で制したダイユウサクを担当。以降、森秀行、橋口弘次郎、石坂正という名門厩舎を経て、2006年より厩舎を開業。翌年にはベッラレイアでフローラSを制し、牝馬クラシック戦線を賑わせる。以降もグランデッツァ、カレンブラックヒル、ゴールドドリームなどの活躍馬を輩出している。





