完成は来年、いや再来年以降というレッドジェノヴァ。しかし、今年初戦は1000万下を勝ったばかりだった馬が、またたく間にオープン入りを果たすと、京都大賞典でもG1を窺う牡馬を相手に好走してみせた。新星は牝馬頂上決戦までも制してみせるのか。それとも、時期尚早なのか。管理する小島茂之調教師に伺った。

収穫が大きかった京都大賞典

-:エリザベス女王杯(G1)に挑むレッドジェノヴァ(牝4、美浦・小島茂厩舎)ですが、まず前走の京都大賞典(2着)の馬の状態についてお伺いできますか。

小島茂之調教師:状態は、北海道でもが勝ち気な感じではなくて、まだ整えている状態でしたから、「いつも通り整えてね」とスタッフに言っていました。それで良い競馬を(札幌で)2戦してくれたので。そうすると、みんな“良くしよう、良くしよう”となってくるんですけど、今も決して悪くないし、それで良い競馬をしている訳だから、別に(状態を)上げることはないでしょう、ということでした。栗東に行って、栗東でまたあれこれしようとすると、却って調子が悪くなったりするだろうから、「そんなに気負ってつくらなくても、いつも通りで良いよ」ということで、「この間の札幌で同じでね」と伝えました。大体札幌と同じ(状態)で使えたと思うので。

-:仕上がりとしては、そういう感じだったということですね。

小:そうですね。それで、ちゃんと競馬をしてくれたので。

レッドジェノヴァ

▲重賞初挑戦ながら京都大賞典で2着に好走

-:レース内容についてはいかがでしたか。

小:池添(騎手)に任せていて、思った通りの競馬をしてくれました。途中で流れが動いちゃって、それが池添騎手の話だと「不利に働いた。グチャグチャとなっちゃって、みんなあそこで動かないでくれれば、こっちに有利になったのに…」ということは言っていましたね。だから、そこはしょうがないと。それでも良い競馬をしてくれたので。

-:初めての重賞で、先生も収穫があったと思われますか。

小:結局、なぜ京都大賞典を使いたかったかと言うと、僕の中では東京の長距離(箱根特別12着)で、1回ダメだったことがあったので、広いコースの長距離はダメなんじゃないか、狭いコースで少し馬を抱えられるレースの方が良いんじゃないかと思っていたから。でも、エリザベス女王杯に行きたいという考えがありました。来年だったら間違いなく行っていたと思うんですけど、今年は福島記念という選択もあったから、小回りでは実績がありますからね。だから、小回りの福島記念に行くのか、あるいは今回思い切って背伸びして行くのか、だったら京都大賞典を使うのが一番分かりやすいでしょということで。

-:次のローテーションの指針になるということですね。

小:それをこなしてくれたというか、それが一番の収穫ですよね。

-:レース後の馬の状態というのはいかがですか。

小:普段通りですよね。ずっと普段通りで来ているから、ダメージも普段通りでそんなにないし、改めてもう1回ちょっと疲れたところを普通に戻してあげれば、それでもう十分な感じですよね。

-:先ほどのお話にあったように「特に変わったことをしている訳ではない」ということですね。

小:そうですね。

本格化は再来年、それよりも先?将来を見据えての調整に

-:昨日(10月31日)、1週前追い切りで池添騎手が乗って、先生は美浦にいらっしゃいましたけど、どのような指示をされたのですか。

小:池添騎手の好きなように乗ってもらおうということでした。僕も1週間に1回行って、確認しているので、特に問題ないですし、助手も「問題ない」ということで、騎手を乗せて、池添騎手が必要だと思ったらやらせれば良いし、必要だと思わなかったら、馬なりでも別に構わない。そこで週末、来週とあるので、その時点で騎手が足りないと思ってやって、やり過ぎて疲れが残っているなと思えば、週末に楽をさせれば良い訳だし、逆に池添騎手は「大丈夫だ」と言っていたけど、足らないと思ったら、またやれば良いだけだから、意見が一致したので、好きなように乗ってもらいましたね。

-:その後、ジョッキーと意見交換はされましたか。

小:僕はしていないですね。ただ、訊くところ「『やっぱり馬が良くなっている』と言っていましたよ」と言うから。

レッドジェノヴァ

-:現状では、来週はどのような予定をされていますか。

小:まだ週末に見てみないと分からないので、見てから来週の追い切りの感じを…。最後はやっぱり来週の火曜日を見て、水曜日のことを決める感じですよね。

-:この馬は昨年末に500万を勝って、今年は1000万を勝って、降級の1000万、準オープンとステップアップしていると思うんですけど、馬が変わってきた点、先生が感じる点はありますか。

小:(今年の3月に)中山で(1000万を)勝って、その後に牧場に出した時に、ちょっとケガをしたんですよ。風が強い日に、馬がバーンと暴れてケガしちゃった」ということで、「それじゃしょうがないね」と言って休ませたんですよね。そのケガをしたのが、逆にケガの功名で良い休みになったのか、少し良くなったような感じでしたね。使おうかなと思ったんだけど、ケガをしたからと思って楽をさせて、楽をさせてある間に、本当に馬が自然と良くなってくれた感じですよね。「それで逆に良くなった感じですね。肉体面がシッカリしたというか。

-:それで、あまりつくり込まなくても。

小:だから、“まだ来年の馬だな”と本当は思っていたから、夏の札幌でも来年の馬だから今のままで良いし、何かイジくったからといって、却って良くなさそうな感じがしたから、今のままで普通に形だけ整えようと。形を整えたら、ここまで来た感じですよね。

レッドジェノヴァ

-:その現状で向かうエリザエス女王杯ですけど、最後に見通しと意気込みを教えていただけますか。

小:来年もあるし、今年ももちろん欲しいけど、来年がダメというのが一番良くないから、来年があるんだから、あんまり気負わずという感じですよね。

-:まずは無事に走ってくれればということですね。

小:今年はあくまでもあまり攻めなくても良いなと思っていて、攻めないで来た訳だから、慌てて攻めるよりも、普段通りの感じにしておいてあげて、それで足りない分があれば、来年補っていけば良いと思っているので。

-:来年の完成形に向けて、ということですね。

小:いや、再来年ですね。もっと先かもしれない。さっきも他で言ったんだけど、本当は6歳まで(の規定)だから、来年引退なんですよね。だから、5歳の秋で放牧、引退ですよ。惜しい競馬が続いていたら、もう1年くらいやらせてくれないかなと。6歳で上手く行ったら獲れるかもしれないけど、本当はこの子は6~7歳と思っていたから、G1をもうちょっとで勝てそうだねと言って、ちょっと待とうかとならないかなと思っていたくらい。思ったよりもそれが早くやってきて、多分今のこの感じだと、早くに引退することになってしまうだろうけどね。今年も良くなりましたけど、本当に良くなるのは早くて来年ですね。

-:本当に良くなるのは来年で、完成までに時間が掛かるということですね。

小:やっぱりそうですよね。(母父の)ホワイトマズルも(父の)シンボリクリスエスも、どちらかと言えば晩生。晩生になったら、すごく強くなるじゃないですか。だから、やっぱりそういうイメージでやらせてもらえたというのが一番大きいんだろうなと思いますね。

-:最初からあまり急かさずに、ということですね。

小:あまり期待されていなかったからね。だから、(2009年のエリザベス女王杯を勝った)クィーンスプマンテもそうだから。今はどうしても早く結果を出さないといけなくて、クラシックがあって、というところがあるけど、最初からクリスエスだし、(早熟性は)今イチだしなというのがあって、ユックリやらせてもらったことが今に繋がっていますよね。

-:そんな中でも一つでも良い着順を、という感じですね。

小:そうですね。勝ちたいけど、今は無事に走って、良い競馬をしてもらいたいですね。