怒涛の6連勝で夢の舞台へ駆け上がってきた馬がいる。日高の小さな牧場で生まれ、体質の弱さを抱えながらも天性の素質で出世を重ねてきたインティ。初の東京ダート1600m、初の芝スタートと課題は多いが、今回、指揮官自ら適性面に加え、「行きたいのがいたら行かせたら良い」と作戦面まで明かしてくれた。圧倒的な逃走劇を見せ、ファンが夢の続きを託す栗毛の牡馬の真実に迫る。

破竹の6連勝も「体質弱くて途中までは半信半疑」

-:フェブラリーSに出走するインティ(牡5、栗東・野中厩舎)についてお伺いします。前回の東海Sは初重賞制覇おめでとうございました。

野中賢二調教師:ありがとうございます。

-:先生のコメントが、結構慎重なのが印象的だったのですが。

野:ハハハ。そりゃ、慎重ですよ。

野中賢二調教師

22度目のG1挑戦で初勝利を狙う野中賢二調教師

-:実際にレースをご覧になった印象というのはいかがでしたか。

野:細かいところを言い出したら何個かありますけど、こっちが思っているより上手にレースをしてくれたし、時計も含めて強い内容だったんじゃないですかね。

-:これで6連勝ということで、1年間の休養を挟み、ここまで来ましたね。

野:体質の弱さとかもあって、最初からは考えられなかったですけどね。あれよ、あれよで、途中までは半信半疑でしたけど…。なんせ体質が弱ったですからね。

-:お母さんのキティも先生の厩舎でしたけど、お母さんと似ているところはありますか。

野:ちょっと悍性のキツさというか、敏感なところは似ているかなぁ。お母さんも競馬に行ってすごくテンションが上がっていた馬で、女の子らしいというか、そんな感じでしたけど、あれがもうちょっと性格が落ち着いていたら、普通にオープンまで行っただろうなと思いますけどね。お母さんほどではないですけど、敏感なところはありますが、この子に関しては男の子だから、だんだん色々な面で大人しくはなってきているし、学習して色々なことが出来るようになっているから、牝馬のお母さんとは違う感じがしますけどね。

-:6連勝している間に成長してきているところがあると思うんですけど、一番変わってきたところというのはどこでしょうか。

野:やっぱり筋肉の付き方とかじゃないですかね。元々、心臓はかなり良いモノを持っていたみたいだけど、やっぱり馬体が本当に弱かったですからね。そこに筋肉が付いて、元々トモなんか、歩いたら球節が地べたに着くぐらい緩かったんですけど、それが筋力とかが鍛えられて、やっぱりちょっとずつ上がってきているし、競馬に行ったダメージも、前なら両トモに穴を開けるぐらいクモズレをして、大変でしたけどね。初戦は両トモとも落鉄して、上がってきたら歩けないぐらいだったし、蹄底は擦って痛いわみたいな感じで、ずっとそんな感じでしたね。3戦目ぐらいまでは落鉄、落鉄で来ていて、それもやっぱりクモズレとかしながら、調教してもそうだったですけど、そういうのもだんだんしなくなってきましたし、結構(成長を)待たされましたけど、数を使わなかったのが良かったんですかね。ちょっとずつしっかりしてきたから、その辺で馬体の成長が一番大きいかな。

野中賢二調教師

初の芝スタートは大丈夫「ドタドタ走る馬じゃないから」

-:これまで1700、1800mというところを使ってきているんですけど、初めてのマイル戦、初めての芝スタートということになりますが、その辺はいかがですか。

野:芝スタートに関しては全然心配していないですけどね。元々、軽いキャンターをする馬だし、ドタドタ走る馬じゃないから、芝スタートは普通にこなすのかなと思いますけど、1600のワンターンということで、ペースも速いし、息を入れるところがあるのかとか、やっぱりペースじゃないですかね。枠順とか、そこは色々関係してくるでしょうけどね。ここ何年かは逃げ馬とかがあまり成績を出していないですから、それはそうだよなという感じですもんね。

-:フェブラリーSのラップを見てみたら、34秒後半とか35秒でも前半とか、そういう感じですからね。

野:35秒だったら、緩い方ですよね。それだったら前が残れますね。コパノリッキーの時とかはそうでしたからね。34秒前半とかが普通だし、そうなると後ろが来るし…。

-:そうなると、インティのスピードだとどの辺りで競馬をすることになりそうですか。

野:枠順次第かなと思っているんですけどね。

-:先生のお考えでは、外の方が良いですか。

野:そうですね。やっぱり色々な競馬を組み立てやすいことは組み立てやすいですね。楽に行けるようなら行っちゃっても良いし、行きたいのがいたら行かせたら良いし、別に4~5番手でも競馬が出来る馬だし、逆に言うと、速い馬がいてくれた方が変に引っ張らなくても良いし、普通に流れに乗っていけるでしょうからね。1800mの準オープン(観月橋S)を勝った時みたいに、中途半端に遅いのに何か行きたがる馬がいたら、ユタカもガッと外に出して行って、それで来るのかよみたいな感じだったから。芝スタートだから、どの馬も普通はやっぱりダートより速いペースで行ける訳だから、それでこの馬が今回のメンバーでどんな感じになるのかですけどね。やっぱり枠順が重要になるかなと。内枠に入ったら、作戦が何個かは削られますからね。

-:出来ることが限られてきますからね。

野:そういうことですね。並びによっては、やっぱりある程度作戦が限られちゃいますからね。

-:揉まれることなく、スンナリしたレースをさせてあげたいですよね。

野:そうですね。これが1800mならまだ良いですけど、1600mで初めてのところだから、揉まれたり何だかんだした時はちょっと不安がありますよね。まだ何かホームランか三振かというイメージもあるしなぁ。

-:6連勝していても、ですか。

野:1600mというのと、このメンバーですからね。強烈ですからね。いないのはルヴァンスレーヴだけですからね。ケイティブレイブは1600mだとちょっと忙しいでしょうけど、ゴールドドリームとか、あとはG1を勝っている馬ばっかりですからね。何だかんだ言っても、ノンコノユメとかもみんな強烈な脚を使いますから。

-:先行馬でも追い込み馬でも、そうそうたるメンバーが揃っていますから、正攻法でやってどこまでという感じですかね。

野:そういうことですね。自分のペースで行って、どこまでということですね。それが、枠順でどうなるかも分からないですけど、やっぱりこのメンバーになったら、運も必要ですしね。

-:偶数の外目が。

野:理想は、それが一番良いですね。

圧勝の反動なし「今回は一番ダメージがなかった」

-:具合に関してはいかがですか。1分49秒台で2回走っていて、東海Sの後の疲れは心配ないですか。

野:そこが一番の進歩というか、成長じゃないですかね。あの時計で走っても、今回は一番ダメージがなかったしね。今までは何だかんだ言っても、馬体的にはちょっとクモズレをしたりだとか、筋肉の疲れとかがあったんですけど、今回は本当に一番ダメージがなかったですし、一番立ち上げ的に楽でしたね。

-:もう充実期に入ってきているということですね。

野:そうですね。その辺の体調に関しては、東海Sの後の感じや先週の動きを診ていると、たぶん一番良い感じで出せるのかなと思いますね。

-:輸送をしたら、どれぐらいになる計算でしょうか。

野:輸送自体は大人しいですし、小倉に行った時も問題なかったですから、ちょっと減ってくれるぐらいで、ある程度しっかりとこの前よりはちょっとマイナスで出たいなと。そんなにガンと上積みを求めなくても良いかなと思っています。あの状態で、あの時計で走れているから、多分能力的には足りているところに来ているのかなと思うので。今回のマイルは分からないですけど、1800の条件なら、G1級でも能力的にはそこぐらいまで来ているのかなということはこの前確認出来ましたから、あそこから休み明けを使ったことで、レース自体でもう上積みは絶対に出来ていますから、あとの疲れとかを診ても、そこで上がっているのが分かっていますからね。

そこをキープするか、出来ればもう少し上げたいというところだったら、体はマイルだから余計に、同じアレだったら軽めの方が絶対に…。やり過ぎないように、しっかり何キロかはマイナスにして、同じエンジンだったら、やっぱり車体を軽くしてあげた方が有利だから、その辺はちょっとマイナスで出したいなと思っていますね。今はそれぐらいで出せるのかなという感じはありますけどね。

-:今朝(2月12日)、歩いているところを見させてもらいましたけど、若干お腹もポッコリして、疲れている感じは全然なさそうですね。

野:全然そんなことはないですね。体型的にちょっとポッコリ見えますからね。前走もプラスかなと思ったんですけど、ちょっとマイナスで行きたいなと思っていたら、ちょうどマイナス2キロだったから、そこからマイナス4キロとか、行ってもマイナス6キロぐらいで良いのかなと感じはちょっとしているんですけどね。

野中賢二調教師

-:明日の水曜日が最終追い切りなんですけど、どんなメニューにされる予定ですか。

野:多分、変わらないですけどね。この時季だからどう汗をかかすかなんですけど、500でしっかり汗をかかせてから、坂路に上げていくんじゃないですかね。それも、ちょっとでも気温が上がるように、後半に行くと思いますね。繋も緩くて、強くないから、チップが硬いと擦れたりするし、チップも軟らかくなって、気温も上がって、汗がかける時にやりたいなと思っています。ある程度、単走で普通に。先週も思ったよりもちょっと…。55秒ぐらいで終いちょっとということを言っていたんですけど、普通に馬なりで53秒(53.6-12.4秒)ぐらいで来ているから、明日は52秒前後で良いんじゃかな。今はやったら動くようになっているから。

-:それはレースに置いておいてと言うことですね。

野:体調的には全然問題ないですからね。

-:多分、ファンも半信半疑なところがあって、判断が難しいところだと思います。他のG1馬は相手関係が分かっていると思うのですけど、そこにインティが入ってどうかというところが、今回のフェブラリーSの見ところの一つだと思うのですが。

野:そうでしょうね。分かりますね。

-:楽しみな一戦ですね。

野:本当に、ここまで重賞までポンと勝つのはなかなかないし、周りも盛り上がってくれているから、良いんじゃないですか。日本人の好きな小さい家族経営の牧場で、その家族経営をしていたお父さんが倒れて、オーナーが元メジロ牧場の場長で、ユタカと何十年振りに表彰式に上がってみたいな感じで、後付けかもしれないですけど、ユタカもコラムで書いていたみたいですよ。

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