偉大なる「父超え」となるか。アーモンドアイの輩出を筆頭に種牡馬として大活躍をみせるロードカナロア。その産駒であり、同じ安田隆行厩舎で管理されるダノンスマッシュは京阪杯、シルクロードSを連勝して高松宮記念に挑むが、その臨戦課程は父そっくりだ。しかし、ロードカナロアは意外にも初出走・初勝利とならなかったレースでもある。その子がリベンジを果たすことになるのか。また、厩舎にとっては久々の、騎手にとっては初勝利が懸かるG1タイトルに対する意気込みも陣営に語ってもらった。

徐々に覗かせてきたスプリント色 キーンランドC以降の休養で更に成長

-:3度目のG1挑戦になるダノンスマッシュ(牡4、栗東・安田隆厩舎)なのですが、去年のNHKマイルC以降からスプリント路線に切り替えて、4戦して3勝、2着1回とパーフェクトな成績ですね。この好結果になった要因は距離短縮だけなのでしょうか。

安田景一朗調教助手:使う毎にスプリント色が強くなってきたのが一つ理由に挙げられます。新馬、500万はまだ遊びがありましたが、NHKマイルCで最高の状態で出走できたのに結果は7着。今後この距離で使っていっても、勝つことは厳しいなと思いました。乗ってくれた北村友一ジョッキーや牧場サイドとも相談して、距離を短くしてみようかということになりました。またNHKマイルCが終わってから、馬自身の回復がすごく速くて「夏の北海道でも使えますよ」ということだったので、函館日刊スポーツ杯に行こうかという感じでしたね。

色々な条件がある中で、そこに行ったのですけど、北村友一騎手も「短期間で馬がすごく良くなっているけど、スプリント色は強くなっている」と言っていました。結果、期待通りの内容でしたし、続いてのキーンランドCでも相手はすごく強かったにしても2着でした。状態も良かったので正直もうちょっと良いパフォーマンスを期待していました。

安田景一朗調教助手

▲ダノンスマッシュと攻め専として調教に携わる安田助手

-:とはいえ、勝ったナックビーナスも、スプリント界では上位の常連ですからね。

安:そうですけど、やっぱりこの馬のパフォーマンスを考えれば、それでもやってくれるかなと思ったんですけどね。

-:その不満だったところを具体的に教えていただけますか?

安:準オープンの時の勝ちっ振りからしたら、もうちょっと迫れたんじゃないかなと思います。あの日の札幌も前日に雨が降って馬場が緩かったので、北村友一騎手も「馬がノメってベストパフォーマンスを見せられなかった」と言っていましたね。賞金は加算出来ましたので、オーナーサイドも「スプリンターズSに」を意識されていました。あのレースで2着じゃ、G1じゃまだまだ力不足と判断し「まずは京阪杯を目標にさせてほしい」ということをお願いしました。その後の2~3カ月で、馬は本当に変わりました。

-:数字だけみると、体重は変わらなかったですね。

安:前までは、体重の割には乗っても華奢だな、ちっちゃいなと思うほど非力さがありました。それだけに、能力だけで走っているところがありましたけど、京阪杯辺りからは体重に見合う感じの乗り味になりましたし、パワーも付きましたね。あとはパドックでも煩かった馬がとにかく落ち着いて、精神面の成長が著しかったですよね。京阪杯で勝って、良いパフォーマンスを見せてくれたのですけど、内枠から上手いこと立ち回れましたから勝てたので、シルクロードSが試金石だなと思っていました。

今年の1~2月の京都は例年に比べたら馬場が重かったですし、それに加えてハンデが56.5kgでしたからね。枠順の内は良かったですけど、直線で捌き辛くなって、スリーテンポくらい踏み遅れて万事休す。あれを差し切ったのは自信になりました。前回はゲート裏でもドッシリ歩くようになりましたしね。

-:京阪杯は、どっちかと言うとスプリントの中では平均ペースのレースでしたけど、一転してシルクロードSは、ハイペースで前がかりの展開の中で終いの良さが活きるという新しい面を見せましたね。

安:そうですね。終いの爆発力、瞬発力がかなり身に付いたなと。

-:それは、精神的に落ち着いたことが一番ですか。

安:そう思います。あとは乗っていても分かるのですけど、馬自身が力を付けてきたことが一つあるんじゃないかなと思います。もちろん色々な要素が重なって、良い方に成長していっているのだと思います。

-:昨日(3月13日)の水曜日の1週前追い切りでは、坂路で猛時計(49秒7)が出ていましたけど、乗っていらっしゃった感触を教えていただけますか。

安:僕も2歳当時は乗っていましたけど、最終追い切りや速いところで乗るのは本当に久々でしたね。若い頃は操縦しやすくて、2歳でそんなにパワーもなかったのですが、昨日は2歳の時のイメージで乗ったので、ちょっと操縦し辛かったですね。前回もジョッキーが乗って49秒9でした。今回も北村友一騎手から「49秒台を出して下さい」と言われていたので、ある程度は出しにいったんですけど、やっぱり2歳の頃のイメージとは全然違いました。

安田景一朗調教助手

▲13日(水)、1週前追い切りで好時計をマークしたダノンスマッシュ

-:下手をすれば48秒台になりそうな手応えでした。

安:パワーとストライド、アクション、全てが変わっていましたよね。先週末の雨で馬場も重かったのに、それでも反応は良かったですし、1週前としては良い負荷が掛けられました。本当に以前乗っていたスマッシュとは全く違う感じでしたね。

-:追い切った時間が9時44分頃と遅めでした。2回目のハロー掛け直後だったんですけど、それは何か考えがあったのですか。

安:ダノンスマッシュは毎回、あの時間帯にやっています。朝一番の締まった馬場だと時計が出過ぎてしまいますからね。速い時計だけが目的じゃなくて、僕らはやっぱり「負荷」を頭に入れています。その負荷の中でどれだけハードな調教が出来るか、ということを頭に入れているので。競馬の週は、前回も前々回もそうですけど、何もしないでスイッチを入れずに微調整程度に留めています。今週、ハードな調教をして、週末は15-15に届くか、届かないかくらいの軽めをやって、来週は(坂路で)53~4秒くらいを馬なりで。ハードにして体は出来ていると思うので、あとはシッカリ疲れを取っていくのが安田(隆行)厩舎流ですよね。競馬の週は疲れを残さず、ということですね。

-:次に全力疾走するのはレース本番で良いということですね。

安:そうですね。ずっとそのパターンで京阪杯もシルクロードSも来ているので、G1だからと言って、人間が張り切っても良いことはないですからね。

岩元助手

▲担当するのはロードカナロアの担当者でもあった岩元助手

-:そこはG1を何回も使っていらっしゃる厩舎だから、慣れたものでしょうけどね。

安:人間がイレ込んだらダメだというのは十分、分かっているので、いつもと同じ感じですね。だからと言って、今回G1で1番人気の可能性がありますけど、普段の追い切り以外に日もCWを2周乗ったりと、調教の中身は攻めていますからね。

-:夏にキーンランドCを使って負けた時に「内容的には、まだスプリント戦のG1を戦うには足りないな」といったところはもうなくなったということですね。

安:なくなりました。色々心配したらキリがないですけど、今までの前2走が京都ですし、今回が中京で左回りです。NHKマイルC、ファルコンSと敗因はそれなりに自分たちで分かっているので。

重なる父の姿 想定外の競馬でも前走を勝利したことが自信に
ダノンスマッシュ陣営インタビュー(2P)はコチラ⇒