今度こそG1・2勝目へ。昨秋からG1戦線で好走を続け、古馬のトップホースとして活躍を続けるキセキ。しかし、前走の大阪杯でもタイム差無しの2着に屈するなど、負けて強しの競馬が続いていることも事実。今度こそ勝利となるのか。上積みはあるのか。これまで幾度となく取材を続けていただいているキセキ陣営に語ってもらった。

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大阪杯惜敗から帰厩した状態はパワーアップ?太め残り?

-:宝塚記念(G1)キセキ(牡5、栗東・角居厩舎)は、前走の大阪杯は有馬記念以来の休み明けだった訳ですけど、惜しくも2着でした。内容はどう感じられましたか?

清山宏明調教助手:出走に向けての間隔というのは、リフレッシュしてからの立ち上げ。時間的にも非常に理想な形だったと思います。レースに向かうまでの調整を踏まえても、すごく良い形でレースに向かえたと思いますね。内容は、今までと違ってスローなペースでも、ジョッキーとしっかりとコンタクトを取れて、厳しいポジションでも落ち着いて走れていたと思いますね。内から出し抜けを食らうような、僅差での2着にはなりましたけど、誰が見ても一番強いレースだったんじゃないかと思います。

-:大阪杯では、スタートから1コーナーまでは、他の馬も大勢来ていましたので、若干狭くなるようなところもありましたからね。

キセキ

▲キセキと担当の清山宏明調教助手

清:あのポジションからジョッキーもけっこう攻めて、番手を取りにいったので、エキサイトするかなと思いました。2コーナーに行くまでにしっかりと折り合いも付きましたし、ずっと(去年の)秋からジョッキーがコンタクトを取りながら、レースで会話をしてきてくれたお陰だと思いますね。これからのレースをイメージする上でも、プラスに出る部分が非常に大きかったと思いますし、非常に収穫が大きいレースだと思いますね。

-:悔しい2着から3カ月を経て、キセキがどういう風に厩舎に帰ってきましたか。

清:こちらに帰ってきた時は、大阪杯のダメージも皆無に等しいくらいでしたね。レースに使った後も、良い状態で1回放牧に出て、ちゃんとリフレッシュも出来たと思えるくらい、身体がパンプアップして帰ってきてくれました。むしろ絞っていくのが大変かなと言うくらいでしたね。

-:1週前追い切りが行われて、馬場状態を考慮するか微妙なところなのですが、最後の伸びはキセキらしからぬ重苦しさがあったように見えました。乗っていた清山さん本人からすると、どうでしたか。

清:前回の大阪杯の時もそうなのですけど、1週前に強い負荷を掛けて、(中間も)強い負荷を掛けていくというところを、今回もずっと続けながら来ています。繰り返しになりますが、今回はすごく立派な体で来ていたので、この暑い時期での発汗や運動ながら、こちらが思っているイメージよりも、まだなかなかシェイプアップ出来ていないんですよね。それも踏まえて、強い負荷を掛けたのですけど、馬場が強い雨の影響があったのと、中間のハロー明けで他馬が沢山走った後で、馬場の重たさがありました。

キセキ

▲12日、1週前追い切りをCWコースで行ったキセキ

長めから強い負荷を掛けていっているので、いかんせん体が立派過ぎる分、こちらが思うよりも少し重苦しいなと感じたんですけどね。乗った後の調教時計を見ると、思ったよりもちゃんとした時計も出ていますし、この一追いで、しっかりした変化が見られると期待しながら、この強い負荷はレースには活きてくると思いますね。

-:直前にはなりますけども、この1週間でどれだけキセキの体がグッと締まってくるか、そこが僕らの見どころですね。

清:しかし、こういう暖かい時期でもありますし、乗り込みも予定通り順調に出来ていますからね。

天気が気になる宝塚記念 理想は良馬場

-:昨年の宝塚記念で8着という結果が頭から離れない人や、不安視する人もいると思うのですけど、大阪杯からは距離が1ハロン延びるだけなので、心配はしなくて良いですか。

清:1年前の宝塚記念は、後方からのロングスパートの脚力を活かす戦法をずっとやってきて、当時のスタイルと今のスタイルは違います。去年の秋から大人になる過程をしっかり踏んできている状況を思えば、去年と今年のキセキは違う馬だと捉えてもらって良いのかなと思いますね。

-:大阪杯からのメンバー構成の違いというと、キセキが行こうと思えば行けましたよね。

清:出走メンバーの中では、キセキが今までこういうレースをしてきたことを見れば、やっぱり主導権を取っていく形のレースになるというイメージは、どの陣営もすると思います。ただ、ゲートを出てみないと分からないところもありますし、キセキにそれをさせたくないと思う陣営もいるかもしれないですしね。

キセキ

▲前走の大阪杯 クビ差2着に敗れた

-:頭数がそれほど多くない分、ターゲットになりやすいかもしれませんね。

清:逆に一番前にいるので。

-:レースの主導権を握って、そのまま押し切れるのか、他の馬が狙いすまして差してくるのかというがポイントかと思うのですけど、踏ん張れるだけのコンディションを、1週前よりも当週に持っていけたら良いですね。

清:そういうイメージで、入厩も早めに入れてもらいましたし、調教での速いところもしっかり予定通り入れられてきています。今週の水曜日の重苦しいイメージから、レースまで日にちもしっかりありますし、まだ坂路にも入れられます。今までのレースに向かう過程を見ても、同じような曲線でちゃんと来られているように思います。言葉は悪いのですけど、ありがた贅沢といいますか、色々な欲目で見ているところもあるので、シンプルに考えれば、良い形で出走できる態勢になっているように思いますね。

-:心配は雨が降り過ぎないことくらいですか。

清:本来はやっぱり良馬場で綺麗なフットワークで走れることが、キセキの能力を発揮できると思います。実際に去年の天皇賞(秋)やジャパンCと、良馬場でスピードを活かすというところで、能力を発揮してくれていますのでね。菊花賞で極悪馬場を勝ったことでああいう馬場の方が勝てるんじゃないかと思ってしまうファンもいるかもしれないですけど、去年の秋のことを見てもらえば、本来のキセキの走りというのは、良馬場の方が活きるんだということは分かってもらえると思いますね。

-:それだけに天気予報が気になりますね。

清:気になりますね。

キセキ
キセキ

▲8着だった昨年の宝塚記念でのパドック、返し馬

-:追い切りでも、やっぱり馬場が良い方がキセキにとっては走りやすいのですか。

清:本当のことを言えば、(馬場)開場をしてすぐくらいの、綺麗で馬場が締まっている状態で行えば、時計もすごく出ますし、軽やかなフットワークも見られると思います。いかんせんこういう気の勝ったところを考慮しながら、正直、刺激の入らないところを狙いながら行っていますからね。

-:それが単走での追い切りということですね。

清:そういうことですね。

-:これだけ走る馬でも、色々と気にするところがあるのですね。

清:やっぱり他の陣営でも、何だかんだ言って、そういうところを持ちながら調整していると思いますし、個々の特性であったり、そういうのはあると思いますからね。

-:それでいながら、これだけ成績がまとまってきたというのは、やっぱり戦法を変えたことが、キセキの精神面でも、レース毎にスッキリとリフレッシュ出来ているということですね。

清:調整がしっかり組み立てられたことと、それを踏まえてレースに向かっていって、なおかつレースで負けるという形になっても、しっかりと自分の能力を発揮しながら、ちゃんと繰り返し出来ていますからね。

キセキ
5歳になり身体も顔つきも大人のキセキに

-:水曜日に1週前追い切りをされて、日曜日や来週の水曜日とかはどういうプランを立てているのか、考えていることがあれば、教えていただけますか。

清:今週の水曜日に、ある程度しっかりとハードに攻めたので、日曜日は速いところと言ってもソフトになります。来週の水曜日は火曜日に乗った感じで、今週の水曜日みたいにハードにはしない形で反応を見たり、日に日に乗っている雰囲気や動きからメニューを考えようかなと思っていますけどね。

-:清山さんとのコンビも定着してきて、キセキも甘えているように見えるのですけど、そこは付き合いの中で、締まるところと緩めるところがあって難しいんじゃないですか。

清:そこは、家族みたいなものです。日に日にそういう状況であったりだとか、苦手な部分であったり、もっと自分の我を出してくる時も当然あります。ただ、家族関係と同じで、やっぱり見て見ぬふりをしてあげないといけない時もありますし、締めなきゃいけないところもありますからね。本当に良いコミュンケーションが取れていると思いますね。

-:家族同然のパートナーであるキセキと、堂々と宝塚記念のパドックを回りたいですね。

清:ありがたいことに、本当に綺麗な歩き方をしますし、競馬のフォームも本当に豪快というか、ダイナミックに走るので。パドックでは本当に綺麗な歩き方をするので、ファンの人にはぜひ近くで見て欲しいと思いますね。

-:ファンが選ぶベストターンドアウト賞があったら良いですね。

清:そういう企画があったら良いですよね(笑)。

キセキ
キセキ
キセキ

-:5歳になってのキセキの変化というか、何か感じるところはありますか。

清:一番は大人の体になったことと、顔つきが本当に大人になったことですね。半年以上前ですけど、去年の秋の時は、人間で例えれば高校生みたいな、ちょっとまだ大人になりきれないような顔の表情で、体のシルエットでした。今回は帰ってきた時の顔を見ると、本当に立派になってくれたので、そこはやっぱり大きいですね。

-:清山さんから「親離れ」をしないといけないですね。

清:本当にそうなのでしょうけど、親離れというか、僕が子離れ出来るかというのもありますしね。ハハハ(笑)。

-:良い状態で臨めそうですし、ファンも期待していると思いますので、最後にメッセージをお願いできますか。

清:前回の大阪杯は、条件的にはキセキのパフォーマンスが活かせるレースだったと思います。結果2着でしたけど、レース内容、出走に向かうまでの態勢は非常に良い形で迎えられたと思います。そこを踏まえて、なおかつ今回も継続して、ファンの皆様に期待を持っていただける状態だと思いますので、良い結果が出るようにレースに向かいたいと思いますね。ファン投票も(3位と)支持をいただいていますし、その期待に応えられるよう、残りの時間をしっかりと頑張らせていただきます。競馬場で応援していただければ、非常にありがたいなと思います。

-:今開催の阪神競馬場が、若干逃げ切りが少ないというのが気になりますが、当日の条件がどう変わるのかも気にしながら、応援したいと思います。

清:頑張ります。

-:忙しい時にありがとうございました。

清:ありがとうございました。