ドバイへ向けて落とせないスマートファルコン!
2011/12/25(日)

小崎憲調教師
-:前走のJBCクラシックは“2強対決”に注目が集まった中、見事、トランセンドを降しましたね。
小:皆さんが期待していたいいレースが出来たんじゃないかと思います。(スマート)ファルコンも目一杯走りましたけれど、やっぱり、世界で走ってきたトランセンドは「流石だ」と思わされました。最後もあそこで盛り返してきましたからね。
-:レース自体は、トランセンドが1コーナーや、3コーナーでプレッシャーをかけてきたら、もうちょっと違った展開にもなりえたのかとも思いました。その点についてはどう感じられましたか?
小:でも、ジョッキーも最後に抜けた時に「フワっとした」と言っていたので、詰め寄られはしたものの、ファルコンもまだ余裕はあったんでしょうね。
-:最後は珍しく武豊騎手のステッキも入りました。
小:その点に関しては、年齢を重ねてきたことによって、ズブさというか、そういう面が若干出てきているのかもしれません。反応は相変わらず良いですけれど、「ここで抜けたから、もう止めていいのかな?」とファルコン自身がわかってきているというか。ジョッキーもそんな話はしていました。
-:前回もそうですが、改めてコーナリングの速さが際立つ馬ですよね。
小:そうですね。勝負処で動ける反応の速さが、他の馬よりも卓越したスピードを持っているのかと思います。
-:前回のトランセンド然り、去年の東京大賞典のフリオーソ然り、3~4コーナーでスッと離されているところが勝負の分かれ目にもなっている気がしますね。レース後のここまでの過程も教えてください。
小:JCダートも視野に入れて、調整をしていったのですが、目に見えない疲れというか……。日々接してきた我々にしかわからないような兆候が出かかっていました。ガタっと来てからじゃ遅いですし、もしもの場合、立て直すにも時間は掛かりますからね。オーナーにも承諾を得て、早目に放牧へ出すことになりました。

-:帰厩してからの雰囲気はどうでしょうか。
小:早目に放牧に出したことがいい方に出て、疲れもすぐに回復出来ました。12月の頭に戻って来てからも、それほど体が緩むことはなかったですし、その後はコンスタントに追い切りは重ねていっています。この中間はあくまで「大賞典に絶対使わなくてはいけない」という思いで調整してきたわけでなく、順調な追い切りの間隔、調整段階を踏んで、恥ずかしくない状態に仕上がれば、大賞典に使うというわけです。先週もビッシリと追い切りはやりましたが、今のところは順調に来ていますね。
-:目標とされているドバイに出走するためには、レーティングも必要となってくるかと思います。その辺りも分析しながらレースは選択されているのでしょうか?
小:今年から大賞典も国際G1に格上げされましたし、ここでちゃんと結果を出せば、レーティング自体はついてくると思います。ただ、それはダートのレーティングであって、芝のレーティングと比較すると、絶対的に見劣りしますからね。いくらダートのレーティングでトップでも、芝で高いレーティングを持っている馬が複数登録してしまったら、それで枠はなくなってしまいますから。だから、こちらとしては出走するレースを落とさないように一戦一戦やっていくしかないですね。うちは勝つしかないので、あとは他馬の動向次第です。有馬記念の結果次第で、レーティングが上がってくる馬もいるでしょうからね。
-:あくまで周りとの兼ね合い次第と。
小:選ばれるためにここまで頑張ってきましたし、いい状態を維持出来るならば、ぜひドバイに出してあげたいですからね。
-:連覇の懸かる東京大賞典ですが、昨年の大賞典を振り返る上で、忘れてはならないのが、あの高速馬場だったと思います。あれだけのタイムが出るとは戦前には想像されていましたか?
小:開催全体で時計が速いとは聞いてはいましたけれど、芝馬場のような時計でしたからね(笑)。今回はそんなことはないんじゃないかとは思いますが……。
-:それに比較すると、前回はファルコンにしてはユッタリしたペースでしたね。クラシックの前の(JBC)レースでレコードが続いたので、また、ハイラップになるのかと期待もしました。
小:レディスクラシック、スプリントとレコードが続いて、期待はされたのかと思いましたが、あの時の馬場は内が深かったようです。勝ったスーニも、ミラクルレジェンドも真ん中から外目を突いていますし、色々な新聞記者さんも指摘していました。僕も他のレースを観る限り、前に行った馬が残らない展開が多かったですよね。だから、ファルコンはラチ沿いの経済コースを通ったとは思いますが、内の力を要するところを通ってきたわけです。そんな中で勝てたレースなので、より価値があったんじゃないかと思います。
-:ラップや走破時計以上に貫禄を示したレースだったということですね。それでは今回へ向けての意気込みをお願いします。
小:大井に関してはもう不安材料はないですからね。特に2000mは1コーナーまでの距離があるので、スムーズに入れますし、枠順もそう関係はないですから。そして、アウェイだけれど、ホームのようなコースとも言えますし(笑)。あとは恥ずかしくない競馬が出来るように調整はしていきたいと思います。

-:最後に2012年の開催もあっと言う間に迎えることになるので、他の有力馬についてもお聞かせ下さい。ドバイといえば、エーシンヴァーゴウがドバイへ向かうとも聞きました。
小:そうですね。登録は済ませました。ただ、斤量が重いんですよね。北半球産の3歳馬が出てくると、古馬の牡馬が60キロ、牝馬は58キロになるらしいんです。それが出ない場合、牡馬は57キロになって、牝馬は55キロになるらしく、現状、どっちの斤量になるかはわからないですが、ケースによれば、重い斤量を背負わされることになりそうです。
-:エーシンヴァーゴウが高松宮記念を蹴って、ドバイへ向かうのは、スマートファルコンとの帯同できることも踏まえてですか?
小:いや、レースも違えば、オーナーも違いますからね。ファルコンだけ遠征することもあれば、ヴァーゴウだけになることもあるでしょう。勿論、2頭で行けることもあるかもしれません。そこは関係ないですよ。僕がどちらも管理していて、2頭で行ければ、馬も寂しがることはないですし、それはプラス材料になるかとは思いますが。
-:それ以外に来年へ向けて、オススメの2歳馬を教えていただけないでしょうか?
小:そうですね……(笑)。まだ、2歳でデビューしていない馬も多いですからね。既走馬だと、今週使うマカハは新馬戦でグランデッツァに勝利しましたし、今はグランデッツァが先にクラシック戦線に乗っていますが、それに追いつけるようにしたいですね。札幌2歳で結果が出なくて、この前も3着には来たけれど、まだ、ピリッとはしていなかったし、不利もありましたからね。新馬のあとは2歳Sまで間隔が開き過ぎたのはありましたね。トビが綺麗な馬なので、上滑りするような馬場だったのも良くなかったですね。
他にはダイワメジャー産駒のマナウスという馬ですね。前回はトリップの3着でした。血統的に面白いところがあって、母父は欧州系のサドラーズウェルズでありながら、お母さんの兄に種牡馬として活躍しているデヘアがいるんです。
-:デヘアだと、アメリカのダート系の種牡馬ですよね。
小:一本筋が通った牝系の出身でありながら、欧州系の種馬がついているんですよね。ウチは開業5年目ですけれど、クラシックに縁がないので、来年はそこにも名乗りを挙げていきたいですね。他にも、デビューしていない馬で期待できる馬も、まだまだいますので、そちらも注目して欲しいと思います!来年も小崎厩舎の応援をよろしくお願いいたします!
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■最近の主な重賞勝利 |
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飯田明弘厩舎、森秀行厩舎でのキャリアを経て、07年に厩舎を開業。厩舎の看板馬であるスマートファルコンや「エイシン(エーシン)」軍団の所有馬を中心に活躍を続け、今年、節目となるJRA通算100勝を達成した。 また、所属していた森厩舎と同じく、赤を基調とした調教服を用いている。長男が今年4月に競馬学校に入学したことも話題になった。 |
