ドバイ帰りでも万全のエイシンフラッシュ
2012/6/23(土)
藤原英昭調教師
日本ダービーを制した後は好敵手に勝利を阻まれ続け、G1で2度の2着、主戦の戦線離脱などにより運にも恵まれなかったエイシンフラッシュ。今回はドバイワールドカップを経ての出走となるが、その背には同馬にとって盟友といっても過言ではない内田騎手の名前がある。大レースの節々に登場し、的確なジャッジをいただいてきた藤原英昭調教師に、海外遠征後の状態とG1奪取に懸ける意気込みを伺った。
－：ドバイワールドカップに挑戦後のローテで宝塚記念に挑むエイシンフラッシュですが、移動での過程についてまずは聞かせてください。
藤原英昭調教師：馬に個体差があるので、こればっかりはやって見なければ分からないところがあって、だから挑戦してみたわけですが、初めてにして課題をよくクリアしてくれました。体重減りもなかったし、状態はいい感じでしたし。馬が持つ潜在能力を改めて感じました。
－：スマートファルコンと一緒に行って、あちらのほうがナーバスだったという記事を目にしましたが。
藤：そうだったね。同じことをやっても、やっぱり馬によって違いますから。
－：ドバイに着いてからはどのような調整を行っていたのですか？
藤：気候を見て馬の様子を見ながら、基本的にやることは一緒ですよ。状態を見ることが第一なので。何をするのか、どうしなければアカンというのは決めて行っていません。
－：ドバイでの藤原流の調教を教えてください。
藤：コースはタペタしかありません。毎日、馬を見て予定を立ててそれに沿ってやった後、また馬の様子を見て、そんな繰り返しでした。
今年のドバイのタペタの状態。
－：映像で見るとタペタが黒くなっていて、昨年とは馬場が違うんだろうなというイメージを持ったのですが、グリップし過ぎるタペタでは、どんな蹄鉄を履くんでしょうか？日本の芝で走る時と同じ物で行けるのですか。
藤：同じで蹄鉄で行けますよ。たしかにグリップはしますが油が入っていて調節できるんです。深さもある程度調整できる馬場です。
－：先生からご覧になってタペタはどのような馬場でしたか。
藤：やっぱりシンドイですよ。コースを1周回ってきた馬の息を見ればわかります。こっちでウッドだダートだＰコースだと走るけれども、同じ距離を走った後の息が違います。見た目が云々よりも馬が一番正直ですから。
－：それは僕らでは絶対わかりませんよね。
藤：わからない。だから365日、馬を見ている、付き合っている僕らはプロなんですよ(笑)。
－：実際、ドバイワールドカップで世界の強豪と戦ってみて、どのような印象でしたか。
藤：一番大事なのは、そこで全能力を発揮させることで、結果は後についてくるものです。その結果としては不本意でしたが、馬は頑張ってくれたと思います。6着がどう評価されるかはわかりませんが、日本馬では最先着だったわけですから。やっぱり、あそこで勝つ(昨年のヴィクトワールピサ)というのは凄いことだと思いました。そういう意味で、昨年日本馬が勝ったことで世界を本気にさせたのでしょうね。
－：レースが終わって、帰りにまた長距離輸送が待っていますよね。そこでの馬体減りというのは大きいと思うのですが……。
藤：当然、帰ってきたほうが減ります。
－：そこから調整したエイシンフラッシュを今週見せてもらったのですが、体的には有馬記念あたりと遜色ないように映りました。
藤：ドバイが終わってから宝塚を使うことは決めていたので、色々注意しながら進めてきましたので。それは話すときりがないくらい、いろんなことをやって今の状態に持ってこられたんです。
－：中身的にはどうなのでしょう。
藤：今の段階で見た目にはわかりません。わかるとすれば、競馬に行って変な負け方をした時ですね。
－：1週前はオープン馬のブレイブファイトとの併せ馬でした。跨っていた内田騎手に終わってから聞いたら『唸っていたよ。あれ以上、手綱を引っ張ってフットワークを詰めても脚に負担が掛かるだけだからスッと行かせた』と言っていて。かなりコンディションは良さそうに見えましたが。
藤：ここまでは上手いこといっている感じはします。どんな青写真を立てても馬がそこまで来なければしょうがないし、そういう意味では良いということでしょう。こっちの思った通りに来ている、やっぱり大した馬だと思いますよ。
－：手綱を緩めた時の反応は、改めて凄いですよね。
藤：遠征から帰ってきて、どの馬にもできることではないと思います。やっぱりエイシンフラッシュは適応力であったり回復力であったりが優れているのでしょうね。スマートファルコンも一度トレセンに入れたけど放牧に出してしまったし、ダークシャドウも時間を置いているようですし。賭けもありましたが、僕らはこのローテを決めていましたので。
－：もともと2歳から結果を出していた馬ですが、年齢的にステップアップしている部分があったら教えてください。
藤：ベテランという域に入って、馬は乗りやすくなっています。もう結果を残すだけなんですよ。そんな感じです。
－：ダービー以来の勝利ですね。それでもほとんどがG1しか使っていないわけですから。
藤：この馬は、そこしか興味がないので(笑)。
－：先生的には今回の宝塚記念のポイントはどこにあると？
藤：常に成長している感じはするから、ポイントというか楽しみなんですよ。とにかく期待しているということですね。
－：有馬記念で少し残念だったのは、4コーナーを曲がる時にトーセンジョーダンが前に走っていて、コーナーで外に膨れたために早目にフラッシュが動けてしまったんですよね。あそこが普通に締まっていたら、終いはもっと弾けたかもしれません。
藤：ルメールも4コーナーまで頑張っていましたけどね。ずっと抑えるのにシンドそうでしたから。ああいうところが経験を積んで解消してきたら、もっと競馬が楽になるんですけどね。
－：今回は久々に、そして待望の内田騎手です。
藤：日本でエイシンフラッシュに乗らせたら、内田が一番上手いんちゃう？昨年の天皇賞(春)を2着に持ってくるんだから！あのルメールが2000mで引っ掛かる馬を3200ｍで折り合わすんだから、今回の宝塚なんて平気で持ってくるでしょう。
－：それでは、楽しみにしていていいですか。
藤：いいよ！ここで変な負け方をするとしたら、ドバイの影響しかありません。
－：ファンは追い切り後の馬体重など気になると思うのですが。分かる範囲でどのくらいになりそうですか？
藤：戻っているし、普段と同じくらいになると思いますよ。490キロちょいくらいでしょう。
－：ダービー以来の勝利を待ち望んでいるファンにコメントをお願いします。
藤：いつも頑張ってくれて本当にいい馬です。今回は手馴れた一番上手く乗る内田で、ここを獲りに行くようなつくりもできていますし、凄く期待しています。人気馬に付け入る隙を探すというよりも、普通に走ると思いますので応援よろしくお願いします。
－：その自信が伝わるようにしっかり書いておきます。
(写真・取材)高橋章夫
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■最近の主な重賞勝利 |
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07年・08年と2年連続でJRA賞(最高勝率調教師・07年は優秀調教師賞とダブル)を受賞。平場・重賞とレースを問わずに勝利を積み上げる『一戦必勝のポリシー』はホースマンの間で崇められ、藤原英厩舎流の調教は栗東トレセンでもトレンドになりつつあるほど。現在のＧⅠレースにおいてこの厩舎の名は欠かせない。言わずもがなの看板はダービー馬のエイシンフラッシュ号で、宝塚記念はドバイＷＣで世界に挑戦した後のローテ。昨年の天皇賞(春)以来、主戦の内田騎手へと手綱が戻る一戦で、陣営のトーンは最高潮に達している。 |
