関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

波多野敬二厩務員

波多野敬二厩務員(船橋・川島正行厩舎)

史上初となる4度のNARグランプリ年度代表馬選出、6つのG1タイトルを手にした地方の雄・フリオーソがいよいよ引退レースを迎える。その輝かしい実績とは裏腹に晩年は屈腱炎に悩まされる日々。決して栄華な競走馬人生ばかりを送ってきたわけではなかった。
今回は2009年からフリオーソを担当し、毎日、ひと時も離れることなく、フリオーソを手掛けてきた波多野敬二厩務員にラストランへの意気込みを語ってもらった。


この秋の乗り込み量は十分

-:夏にもお話を伺っていましたが、帝王賞を回避したことでインタビューがお蔵入りとなりましたよね。改めて、かしわ記念後の動向と、ここまでの経緯を教えて下さい。

波多野敬二厩務員:かしわ記念の後は本当に順調で、帝王賞の1週前追い切りの後も良かったんですよ。(蹄)鉄を打ち替えて、その朝は何ともなかったのに、昼から熱がフア~ッと出て。それは鉄のせいではないんだけど、疲労が出たんだろうね。次の日に脚の真ん中に熱があって、様子を2日ぐらい見たんだけど、「やっぱり帝王賞は辞めよう」ということになって、辞めたんです。

-:従来通り、その後は厩舎にずっと?

波:ずっとですね。それまでは本当に順調に来てたんですよ。良い感じで、「コレはいっちゃうね。3回目の帝王賞いけるんじゃないか」というぐらいの勢いだったんだけども。

-:年齢的なものもあるので、大きくは言えないにしても、かしわ記念よりも上昇はあったわけなんですね。

波:ええ、上昇はあったんです、あの時は。裕太君(佐藤騎手)も乗ってて、1週前までは「かしわの時よりも手応えは良いですよ」といっていました。でも、脚元が悪いヤツって、具合が良いと負担が掛かっちゃう感じのところがあるから、きちゃったんじゃないかなというところ。去年は脚のちょっと下の方だったんですよ。今回は真ん中に熱を持っちゃって。

それでも、実は8月あたりから乗り込みを始めていて、本当は10月の調教試験か、大井のマイルグランプリを使いたかったんですよ。そこの調教試験を受けたのであったら、JBCクラシックに間に合うし、マイルGPだったら、調教試験はいらなかったからね。それに11月2日がちょうどレースから6カ月目で、これを受けないことにはJBCクラシックは出れなかったんです。
でも、調教師が11月2日に「腫れてるね、熱があるね」と言うので、12日まで休ませて、調教師が「休ませて、良くなってきた。様子見ながら乗りなさい」と言って。言われるほど、なんともなかったけれど、そこからはずっと乗っています。実質、乗ってるのは4カ月以上乗っているからね。


-:じゃあ、今年の川崎記念の時の休み明けとは違うと。

波:あの時とは乗り込み量が全然違いますね。川崎記念は1カ月半か2カ月ぐらいの乗り込み量。今回は夏場からずっと乗っていて、10月の頭の時には520キロをずっとキープしていたからね。あと追い切りが3本あったから、キッチリ仕上がると思ったんだけど、状態がアップしている時に、10日間も休んだおかげで、一気に体重が540までドーンと増えちゃって。それで、今度は寒くなってきちゃって、絞るのに苦労しているけど。まあ、今回は絞れることは絞れると思うけどね。

■「勝負にいきます。引退レースを飾りたいと思うぐらいの仕上げで」

-:この間、大井で追い切りをやられてましたね。

波: 2週前に大井でやって、1週前はココでやって、本追い切りも船橋で。

-:例年、年末の開催になると、大井の時計が一段と速くなりますが、その時の馬場はいかがでしたか?

波:その時は砂の深さもあって、力がいる馬場でしたよ。今年は大丈夫じゃないかな?南関東はココなんかでも、調教をみているだけで、その時の砂厚や傾向が変わるからね。当日になってみないとわからないけれど、ある程度、傾向をみていればわかりますよ。



-:この2週間の動きというのはいかがですか?

波:大井の時は外を回って、4F52秒ぐらい。実質、まともに走ったら、50秒台が出てたんじゃないかと思います。この間は49秒7の37秒なんぼ。ちょっと気合を入れる程度でした。

-:僕も高橋華代子さんのブログ「南関魂」で追い切り映像が載っていたんで、ちょっと観ました。具合もなかなかよさそうに感じましたが、最終追い切りはいつですか?

波:最終は25日の火曜日。ハローを入れてもらって、それからやるから、10時過ぎぐらいになると思う。

-: (本追い切りは)25日の10時頃と。浦和開催の場外発売があるから、一般ファンも観られそうですね。

波:そうですね。今回は最後の追い切りだから、取材も結構、来るんじゃないのかな。

-:内容としては、どれぐらいのところを予定されているんですか?

波:ビッシリいきますよ。いつもは2週前でだいたい50秒ぐらいで、49、48ぐらいの時計を出して、その後は軽めのいつものパターンで。

-:追い切りも最後ですね。

波:現役、最後の追い切りですね。今日(12/20)、大井の馬体検査があって、「出走お願いします」って、向こうの人らに言われたけど、その追い切りをクリアしないことにはね。追い切りをクリアというか、当日の朝までちゃんと……。

-:そして、気になるのが現在の脚元の状態はいかがですか?

波:全然、問題ないですよ。見た目にはどの写真、立ち姿とかをみてもそうだと思う。一昨日に競馬雑誌の人が来て、立ち姿を撮ってたけど、誰が見ても、判らないと思う。パッと見たら、「コレ、エビ(屈腱炎もちの馬)なの?」という脚をしていますから。

-:屈腱炎を発症している最中の馬を実際見たことがないんですけど、なった時というのは誰が見ても判るような腫れ方ですか?

波:誰でも判る。普通の厩務員なら、「ああ、ダメだね」という腫れ方。

-:ちょっとでも競馬に携わっている人ならば?ちょっと失礼な質問ですが、ファンが気になるのが、引退レースなので……。

波:流してくるんじゃないかと(笑)?

-:よくそういうのを言うじゃないですか。ズバリそこら辺はどうですか?

波:勝負にいきます。引退レースを飾りたいと思うぐらいの仕上げで。休み明けは休み明けだし、ワンダーアキュートとかエスポワールシチーとか出てくるのが、手ごわいところかもしれないけど……、今年の川崎記念の時よりは仕上がりが良いと思いますよ。



-:順調度は欠いているけども。

波:仕上がり的には、コッチの南関東だけのオープンなら負ける気はしないくらいですね。

-:終わってからの今後の人生もありますからね。

波:大井でもレースが終わって、最終レースの後に引退式もあるし。ボンネビルレコードと一緒にやるんですよね。大井の広報の人たちは利口だよね。最終レースが終わってから、ちゃんと引退式をやってくれるでしょ。船橋は8レースの間にやると言ってたよ。7と8の間か、8と9の間か知らないけど。そんな5分、10分の間で、引退式を済まそうと思っているらしいからね……。

-:しっかりやったら、そんな短時間で収まる訳がないですもんね。船橋の功労馬なのに、結構、残念な話ですね。

波:最終レースが終わった後にやれば、お客さんだって、ずっと最後まで残っているんだから。

-:馬券もその間に買ってくれるでしょうしね。

波:多分。引退式があると分かってれば、一番最後まで残っていると思うんだけどね。だいたい、メインが終わったら場内なんて、シケちゃうんだから、そこら辺が広報の……。

-:普通に考えればそういう話ですよね。

波:船橋はね……。

波多野敬二厩務員インタビュー(後半)
「数多くの貴重な経験をさせてくれたフリオーソ」はコチラ→

1 | 2



【波多野 敬二】 Keiji Hatano

1962年3月31日生まれ。川島正行厩舎所属。
北海道の手島健児厩舎、川崎の内田勝義厩舎での厩務員を歴任して、08年より川島厩舎に移籍。現在はフリオーソと今秋のロジータ記念を制したエミーズパラダイスを手掛ける。 これまでに川島正行厩舎ではJRAの重賞ウィナーのディープサマーなどを担当してきた。