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菱田裕二騎手

菱田裕二騎手

「今年のルーキーは乗れる」 そうトレセンでも評判を集めたのが、今年栗東デビューの中井裕二騎手と、そして、この菱田裕二騎手だ。二人は最終週に至るまで、同期の中での勝ち星争いを繰り広げたが、結果的に2着数一つの差で菱田騎手が優勢。前評判が高かった中井騎手をわずか上回ってみせた。そんな菱田騎手に、デビューからここに至るまでの経緯や、特筆すべきレース、騎手としての心構えなど直撃した。

デビュー1年目で意識してきたこと

-:よろしくお願いします。まずは2012年を振り返っていただきたいのですが?最初、どのような目標を立てて、初年度はどうでしたか。

菱田裕二騎手:明確な勝ち鞍の数字は意識していませんでした。それよりも、1鞍1鞍、シッカリ乗って、1鞍1鞍、成長していけるようにしたいなと思っていたのですけれど。結果的にはすごい良い馬も乗せてもらっていたのに、その割には勝ち鞍が少ないなと。でも、やっぱりたくさん乗せてもらった中で、勉強することがたくさんありましたし、絶対、それは自分の糧になっていると思うので、それを来年に繋げて、もっとたくさん勝てるようにしたいですね。

-:中井裕二騎手にも通じることなんですけれど、象徴的なのは勝ち鞍が21勝(12月17日現在)という中で、芝が3勝で、ダートが18勝。これは明らかに、減量騎手というのはダートに効くということでしょうか。

菱:僕も途中から、芝でなかなか勝ててないなと思っていたんですけれど、でも、ダート競走で、人気馬に結構、乗らせてもらったというのもありますし、特にどっちが減量に効くというのは、あんまり自分では意識していませんでした。途中から芝で勝ててないという面で、自分が苦手なのかなと思うところもあったんですけれど、最近、芝も自分の中では好きで、少しずつ乗れてきてるかと思うので、特に意識はしていないです。

-:菱田騎手の競馬を見てて、一番注目するのはムチの少なさじゃないかなと思うんですけれど、それは意識して乗っているんですか?

菱:特に意識してないんですけれど、やっぱり、すごいアヤフヤな騎乗技術の中でムチを使ったら、ヨレて上手くコントロール出来ないというのもあるので、ムチを使うよりもまずはしっかり真っ直ぐ走らせて、その中でステッキを使って、馬を速く走らせるということを意識しています。

-:ちゃんとしっかり両手で追っているイメージが強いですね。

菱:それはしっかりコントロールをした中で、ステッキを使うということは意識してます。

-:あと、初年度のジョッキーとしては結構、下半身がシッカリしているのかと思いました。

菱:下半身はまだまだだと思います。

-:でも、そんなにブレずに乗ってはいますよね。

菱:でも、全然、まだまだだと感じる面が多いんで。まあ、普段トレーニングをしたり、木馬に乗ったり、ちょっとでも鍛えられるようにしているんですけどね。

-:芝のレースで結構、特別勝ちがあって、それを振り返ってもらって良いですか?

菱:タニノシュヴァリエは人気をしていなかったんですけれど、自厩舎で毎日、調教に乗っている馬で、手応えはありました。何と言っても、初特別勝ちを自厩舎であげられたというのは、すごく先生にも感謝したいですし、特別に乗せてもらっているということで、オーナーやスタッフにも感謝したんですけれど、すごく嬉しかったです。

-:嬉しさ以上に上手さも光ったレースだったと思うんですけれど、この馬は途中から押していくというか、ちょっと促さないと下がっていきますよね、ほっといたら。ずっと持ちっぱなしだったら、どんどん下がっていくタイプなので、途中でもうちょっと、もうちょっとと言いながら、競馬をしていかないといけない馬なので、難しいタイプではあると思うんですよ。

菱:毎日乗っていて、馬の特徴なんかも、自分の中では掴んでいるつもりでしたし、そういう意味で、競馬中も安心感があって、自分の思った通りに乗れて、最後は上手く内が開いてくれたんですけど。

■「これからは減量がとれたことも考えて、ただ好位に付けるだけではなくて、例えば、後ろでジッと我慢して、折り合いを付けて、終いを活かすような競馬も覚えていかないといけないなと」

-:内が開いたにしても、1年間通じて、インへの意識が強いジョッキーだと。

菱:ロスなく、少しでも内を狙ってくるというのは意識していました。

-:それはやっぱり、タニノシュヴァリエが12番人気で1着になれたように、穴をあけるジョッキーの最短距離というか。

菱:そうですね。最近は人気馬に乗せてもらって、内で詰まったりすることもあって、色々、自分で考えながら乗ってるんですけど、少しでもロスなく、内を回ってくるということを意識しています。

-:9月の阪神でサイキョウイシヤマという馬に乗っていて、3番手からマクりきったレースを見まして、僕的には正直早過ぎるというか、馬の特徴とかもあるんでしょうけど、若手のガムシャラさがすごく出てるなと思って。このレースはどんな感じだったのですか?

菱:ああいう風に4コーナーで早めにマクって勝つという競馬は、その前にも何回かしていて、力があるから出来ることなんですけれど、減量を少しでも活かすには、ちょっとでも強気な競馬をした方が良いかなと、いつも思っているので。まあ、あの時はたまたま、展開がそうなってしまったんですけれど。とにかく少しでも減量を活かせる強気な競馬をするように意識しています。



-:減量を活かすという意味では、我慢して同じように差してきても、減量の方がビュッと伸びるんだなと素人的な考えもあるんですけど、早めに行かしても止まらないというのも減量の強みですか?

菱:そうかと僕は思っています。例えば、逃げて、普通ならバテるところを少しでも脚が残るとか、早めに仕掛けて、本当だったらバテているところを少しでも脚を使えるとか、そういうのは減量の強みなのかなと思って乗っているんですけれどね。

-:そのサイキョウイシヤマの次のレースが10月の阪神の同じ舞台であったんですけれど、この時は同じパターンで乗って、やっぱり先輩から「アイツ、動くんじゃねえの」と見破られているかのような。

菱:あの時は3~4コーナーで、僕の斜め後ろに浜中さんがいたんですけれど、競馬が終わってから「お前はどうせ動くと思ったから、ちょっと顔を覗かせて、思った通り、動いてくれたから、まんまと嵌まってくれた」と言われて。やっぱり、そういう技術というか、レース中の駆け引きというのは、そういうことを言ってもらって、すごく勉強になります。ただ単に自分のリズムで乗るだけじゃなくて、周りをしっかり見ないといけないんだなと思いました。

-:1頭だけで競馬している訳じゃないですしね。この時勝ったエーシンリボルバーというのも昇級戦で2着にも来ている馬で走る馬ですからね。でも、若手らしい騎乗をする人で、それプラス、差すセンスがあるのが菱田騎手ですね。

菱:いや~、全然。でも、僕は後ろからの競馬がすごく少ないです。後ろから追い込んで来るような競馬が自分でも少ないと思うので。これからは減量がとれたことも考えて、ただ好位に付けるだけではなくて、例えば、後ろでジッと我慢して、折り合いを付けて、終いを活かすような競馬も覚えていかないといけないなと。

-:ダートで乗っていたトーセンケイトゥー。あの馬は福島、中京ですよね。内からスゴかったですものね。

菱:アレも内が開いてくれたんです。何度か競馬に乗せていただいて、癖とかもある程度は分かっていたんで、強気に乗って。最後は上手く内が開いてくれたんですけどね。

-:昇級緒戦が中京でしたけど、流れが向かなかったのに結構、4着まで伸びてきて。

菱:ちょっとゲートが悪い馬なんで、中京の時はゲートの中で結構、暴れて大出遅れで。それでも4着まで頑張ってたんで、スゴイ力はあるんだなと思って。ゲートさえ切ったら、勝ち負けになると思ってたんで。福島の時はポンとスタートが切れて、良い位置に付けて。まあ、馬の力で勝ってくれたんですけどね。



-:でも、上手くインコースに導いたのは菱田騎手ですからね。

菱:展開も上手くいったと思うんですけれどね。

-:展開が上手くいった時に、自分が上手く乗れるのも必要なことですから。

菱:そうかとは思いますけれどね。

-:同じような展開でも、同じようなポジションにいた人は何人かいた訳だから、その中で勝てるのは1人だけですから。やっぱり、センスがあるんですね。

菱:いや、全然。でも、まだまだレースのセンスとか、レース運びとかは全然だと思います。

-:若手なのに考えて乗ってるなというのが結構、初期の頃からあって、8月にシニスタークイーンで勝った時に、この馬はちょっと砂を被るのを嫌がるところがあって、適当に乗ったらあんまり良くない。1枠だったんですけど、その時に秋山騎手が乗っていたパールブロッサムをレースで見てたいら、上手に乗ってるなと思って、この馬が勝つのかなと思ったら、菱田騎手のシニスタークイーンがビュッと伸びてきたんでね。これは結構、49キロだったにしても、センスがあるなと思ったんですけど。

菱:極端に砂を嫌がる馬で、どうしても砂を被らない番手に付けたかったので、ちょっと1コーナーの入りとかは雑になってしまったんです。強気に行ってしまって、岩田さんを外に押し出す感じになっちゃったんですけれど、何回も乗せてもらって、北海道開催、この馬最後だったんで、そこは強気にいって、上手く外に出せて、そこからは馬の力で本当に上手くいったんですけれどね。

-:砂を被らさないで、馬の能力をちゃんと引き出すというのはスゴイことですね。

菱:そうですね。だいたい馬って、砂を被らせたら納得してくれるものなんですけど、この馬は本当にすごく嫌がる馬で。

-:嫌がって止めてしまう。

菱:そうですね。どうしようもない馬だったんで、何とか砂を被らない位置で、アレは上手くいきました。

(写真・取材)高橋章夫

菱田裕二騎手インタビュー(後半)
「理想としているジョッキー像」はコチラ→

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≪関連リンク≫

同期の中井裕二騎手インタビュー →





【菱田 裕二】Yuji Hishida

1992年 京都府出身
初騎乗
12年3月3日 1回中京1日目1R バトルマグマ
初勝利
12年4月14日 2回阪神7日目1R トーブプリンセス
JRA通算成績は23勝 (12/12/24現在)


栗東・岡田稲男厩舎所属からデビューしたルーキー。同じく栗東からデビューした中井裕二騎手と切磋琢磨するように成績を重ねると、結果的には23勝をマーク、2着数の差で中井騎手を上回り、同期の中では最も成績を残した。来年度以降、更なる活躍が期待される新人騎手。