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安田景一朗調教助手

安田景一朗調教助手(栗東・安田隆行厩舎)



舌を縛った東海Sで一変。今回も!

-:この馬はブリンカーを着けたり、チークピーシーズを着けたり、色々あったんですけれど、今のところ変更というか、ブリンカーだけで行くと思っておいて良いですか。

安:前回から舌を縛ったんですよ。それも良かったかなと。

-:それもヨーロッパ流ですよね。

安:やっぱり遊ぶので、コイツは完全に攻め馬で。前回は舌もそうですし、状態も良かったですし、ジョッキーも上手いこと乗ってくれました。少なからず展開もありましたから、色々なことがこの馬に全部プラスになったので。

-:舌を縛ったのは東海Sが初めてですか?

安:初めてですね。

-:それは誰かのアドバイスですか?

安:僕です。普段、乗っていて考えるじゃないですか。あれだけの手応えで何で伸びないのかなと。でも、終わってからもそんなにハーハー言ってないし。やっぱり、舌やな、と。何か遊ぶから。舌を越している訳じゃないけれど、それが集中力を欠いているのかなと思って、前回からやってみようかなと。それが上手くいったか分からないですけれど、次ももちろん、舌は縛ります。

-:多分、カレンブラックヒルが引っ張るので、ある程度は流れそうですね。

安:ダート王決定戦で芝からダートに来た馬に負けてられるか、とみんな思っていると思うんですけれど、カレンブラックヒルは強いですよ。だから、チャンスがあるとすればパサパサのダートになって欲しいなと。それだけですね。

-:昨日(2/6)は天気も悪く、結構、寒い中、坂路の悪い馬場で調教されてましたよね。1週前がどういう動きだったかを教えて下さい。

安:今日(2/7)、ロードカナロアと併せて57.0ですかね。本当に相手が相手なので胸を借りるつもりでした。馬場状態も悪かったんですけれど、あんまり時計も出したくないなと。それならロードカナロアとビッシリ併せようかと。57でも54、55の負荷は絶対に掛かるということで。体は出来ているので、動き自体は良かったですよ。ちょっと横側の手応えは違いましたけど、最後まで差し返そう、差し返そうという気持ちはありましたし。今日も(ラスト1ハロン)13を切ったのはグレープとロードカナロアぐらいらしいですから。動きに関しては何ら問題はないし、息遣いなんかも問題がないし。

-:そういう状態で来週はどんな追い切りをする予定ですか。

安:この馬はレース前には絶対にやると。まあ、55、56でも終いだけは絶対に目覚めさす。気合ですわね。本当に終い重点の調教ですよね。

-:じゃあ、楽しみもあるということで。

安:僕は本当に楽しみにしてますよ。もちろん、勝ちたいレースですけれど、本当に一番良い状態に、やっと戻ってこられたので。まだまだ、この馬は晩成なのでね。今年も来年も走ってくれそうですけれど、やっとピークに来たなという感じなので。




イル・イラナイが明確に分かるパドック

-:みやこS、JCダート、東海Sと、3戦で目一杯走っていると思うんですよ。コンディションの良さがあっても。その疲れはないと思って良いですか。

安:そうですね。みやこSを終わってから、放牧に出して2週間前まで。JCダートを使ってから放牧しました。ずっと間が開いてますし、切羽詰まって調整をしている訳じゃないので。本当にフェブラリーSで良い競馬ができるように、去年の年末から調整をしてきて、東海Sで何としても賞金を獲らないといけないから、ハードにいかないとダメというような調教はしていないので。前回もなおかつプラス体重でしたしね。

勝って、次がG1だからといって、競馬が終わって、土曜日までビッシリ運動して、日曜日から軽く山(坂路)一本という焦らず、ジックリ疲れを取ってという。本当に長い付き合いなので、この馬の要領というか、1週間ずっとビッシリ運動をしていても、次の競馬にはちゃんと仕上がりますしね。やっぱり思いましたね。焦ったらダメだなと。


-:分かりました。あとパドックではどんな雰囲気で歩いていたら良いですか。輸送を考慮してイライラしそうはしそうです。

安:まあ、汗かきなので汗は良いですけれど、ちょっとチャカチャカとイレ込んでいるなと思ったら、厳しいと思います。そんなことは絶対にないと思うので。常に馬房を出たら、凄まじい集中力なんですよね。その馬がフェブラリーSに限って、パッと見て、チョコチョコ歩いているよみたいなのは……。

-:そんなことはありえないと?

安:ありえない。でも、あったら僕はいらないと思います。

-:分かりました。芝スタートですけれど、芝も走ってますからね。

安:そう。だから、とにかくあの芝だけは浜中君には注意せよと。まあ、大丈夫というか、ソコソコ直線は吠えさせてくれると思うんですけれどね。

-:あとはこの馬にとってはちょっと外枠の方が。前半、モタついたとしても、入られると嫌じゃないですか。

安:でも、外を回らないですよ、浜中騎手は。



-:回らないから、走らない馬が前に入られたら。真ん中ちょい外ぐらいの方が乗りやすいのかなという。

安:僕は正攻法の競馬より、ちょっとズルい競馬をして欲しいなと。セコく。やっぱり、東京競馬場なんでね、本当に。

-:前半飛ばしてくれたら、上がりが掛かるから、その面に関してはグレープブランデーにはプラスですよね。

安:本当にタフな競馬になって欲しいですね。まあ、トランセンドよりは気楽です。

-:どうしてですか?

安:行かんとダメでしょ、あの馬。この馬はどんな競馬でもできますし。

-:ある面、オールマイティさがあるから?

安:それはありますね。見とって下さい。

-:グレープブランデーが復活出来たのも、安田厩舎の厩舎力の賜物だと思うんですけど、スゴいことですね。

安:担当している児玉さんなんかも、去年からレースを振り返ってみたら、負けている時も「大丈夫や、大丈夫や。俺はグレープを信じているから大丈夫や」みたいな感じで、本当に悪い時になっても良い時になっても、馬を大事に大事に信じてますからね。そういうので馬にも伝わったんちゃうかなと思いますし、ウチの厩舎はみんな馬に感謝して、仕事をしてくれはるんでね。馬も本当にそれに応えてくれますし、それは僕も助手をしていて、よく分かるし、頭が下がりますよね。

児玉さんというのは本当に馬とよく話していますし、コミュニケーションを取ってますし、ムツゴロウさんみたいな感じです。言ったら、ムツゴロウさんはじゃれて、おちょくられてますやん。グレープも児玉さんなら甘えられると。でも、僕が乗るとオンとオフというのがあるんですよね。




-:そういう関係がちゃんとできていると。

安:できているから良いんですよね。「今日はヤス乗るんや。ああ、悪さできんわ」と。馬房に帰りました。そこで児玉さん。言ったらリラックスタイムですわね。そういうのがあるというのは本当に大事かなと。

-:お父さんとお母さんの感じですね。

安:そうです。グレープなんて本当に児玉さんには危険というぐらい甘えますからね。

-:見てたら怖いですけどね。

安:すごく怖いです。本当に児玉さんのことはすごく好きですよね。

-:グレープブランデーだけじゃなくて、児玉さんがもう1頭担当されているアンチュラスもこれから違う路線が開けるかもしれないし、ファンとしたら、それも楽しみにしておいたら良いですね。

安:ダートで目覚めてくれないかなというのを思ってますし、本当にいつ走るか分からないんですよね。※2月17日(日)の河原町S(京都ダート1400m)に出走予定。

-:芝の道悪とかは合いそうですね。

安:合いますね。勝ったじゃないですか。来週、パサパサの1400ダートとかだったら合うかなとか。あの馬にしても「この馬は絶対に走る、走る」という風に思っているんでね。まあ、そういう風にまた、児玉さんが信じてくれたら、今年の11月金沢に行けるんじゃないかな。JBCで、ハハハ(笑)。目指しているんですけどね。

-:分かりました。今日は長いお時間ありがとうございました。

安:ありがとうございました。

(取材・[競馬場を除く]写真)高橋章夫


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【安田 景一朗】 Keiichiro Yasuda

1978年10月27日生まれ。栗東生まれ、栗東育ち。父は安田隆行調教師。弟は同じく安田厩舎で、先日のスプリンターズSを制したカレンチャンなどを担当する翔伍調教助手。

ジョッキーであった父の影響で自然に競馬に興味を持つ。小学校5年から乗馬を始めると、栗東高校で馬術部に入部。スポーツ推薦で青山学院大学に入学。

そこからノーザンファーム、競馬学校を経て、2002年6月に約半年間、作田厩舎に所属。2003年1月から安田隆行厩舎に所属し、現在は調教師試験も受験しつつ、厩舎のスポークスマンとしても活躍している。

安田隆行厩舎については、「みんないいスタッフで、いい時も悪い時も力を合わせて頑張ってくれます。調教師も仕事が終われば親だけれど、調教師としても従業員を信頼してくれるし、先生のおかげで楽しい仕事をさせてもらっています。スタッフの声にも耳を傾けてくれる調教師であることには感謝しています」とのこと。