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北村浩平調教助手

かねてからの取材でお伝えしてきたように、トレセンで最もゴールドシップ(牡4、栗東・須貝厩舎)の背中にいる時間が長い北村浩平調教助手。この中間は内田博騎手が栗東に滞在し、従来とのバランス調整が難しかったようにも思うが、そこで結果を出してきたあたりがゴールドシップ陣営のチームワークの賜物。中間の厩(うまや)の裏話や勝敗を分けたポイントを、元騎手という視点から語っていただいた。

内田ジョッキーと過ごした日々

-:宝塚記念はおめでとうございます。今回のゴールドシップの宝塚記念優勝という勝因のひとつに、内田ジョッキーが2週間密着してくれたことがあると思うのですけれども、一緒に日々、調教で跨ってみてどうでしたか?

北村浩平調教助手:関東のリーディングジョッキーなので、最初は喋りかけるのもちょっとおそれ多い感じがあったのですけれども、火水木金と日が経つにつれて、どんどん喋りやすくなって打ち解けてきました。

-:馬乗りとして普段見られないジョッキーの調教シーンが間近で見られるわけですね。

北:そうですね。追い切りの時は併せ馬をしてもらったんですけれど、そうそう、ましてや関東のジョッキーなので併せ馬ができる機会もないですし、それとは別に、ゲートも一緒に出したりしたのですが、それがスゴく嬉しいというか、間近で見られて勉強になりました。

-:乗り方的にはイメージがあったと思いますが、内田ジョッキーはこういう乗り方をするという、実際との違いというのは?

北:僕よりも身長がなくても、すごくコンパクトに乗っているという印象はありますね。

-:結構、しっかり語ってくれるジョッキーですが、キャラクター・人物像では、イメージと違いましたか?

北:東西の違いはありますけれど、普通に接すれば、楽しく、面白く、答えていただけるので。そんなにふざけたことは話していないですけれど、一緒になってしゃべってくれたりしますし。

-:それで厩舎の雰囲気も明るくなりましたか?

北:オルフェーヴルは回避しましたけれど、どうしても「4強」と言われて、どれが勝ってもおかしくはないし、ましてや、フェノーメノには2戦2敗。ジェンティルは未知の相手だけあって、胸を借りるつもりの立場で競馬に出たと思うので、一番人気になって、勝って当たり前というレースではなかったので、そういう意味ではモチベーション的に楽になったかなというのはあります。



プロが見る宝塚記念の勝因

-:天皇賞(春)の敗戦でもファンは見捨てなかったというか、オッズとして見たらゴールドシップは支持されていたじゃないですか。それを見たときに、この馬はファンが多いなと思いませんでしたか?

北:天皇賞が終わってから宝塚記念のファン投票があって、“こうして支持してもらえているから2位になれるんだな”と改めて思いました。

-:阪神競馬場に当日7万人といえば、府中なら10万人が集まったようなものですから、オルフェーヴルが回避した中で、これだけ盛り上がれたというのはゴールドシップ陣営だけじゃなくて、JRA全体を見てもダービーでキズナが、80周年記念という節目の年にふさわしいレースをしたこと。そして、世紀の対決とまではいかずとも、今回の宝塚記念はタイミング的に良かったのではないでしょうか。調教助手という立場から見て、今回のレースはどうでしたか?

北:正直びっくりしましたね。ウチパクさんも言っていたように引っかかるような馬ではないので、テレビとターフビジョンを見た時に2、3完歩したら、すぐに折り合っていたので、“こんなにもアッサリ前に行けるものかな”と思って。阪神コースというのは得意にしていますし、そこまでテンに行かせても、自分のペースでいけば、マクリはしないですけれど、脚は残ると思っていました。それでも、もう一回、坂下から勢いに乗って3馬身千切るというのはスゴイですね

-:1コーナーからジェンティルに蓋をしているような、それ以上外は通らせないよ、という操縦も。

北:確かにありました。どうしてもコーナー、コーナーで、やっぱり、みんな内には入りたくないので、そういう攻防は絶対あったと僕は思います。

-:「岩田ジョッキーがゴールドシップに当ててきた」という人がいるけども、当ててきたも何も、少しでも馬場のいい外に出したいから、その気持ちもわからなくないところはありますよね。

北:逆に言えば、当ててきたことと、ゴールドシップが蓋を閉めたことは、行かせへんために当て返したというのも、捉え方によれば捉えられるので。そこはお互い様じゃないですけれど、結局、そういうところも含めての作戦・レースですからね。

-:位置取りをいつもより上げてレースをしたということだけではなくて、内外のコントロールでライバルにいいとこを通らせないように主導権を握ってたというところも、あの宝塚記念のポイントだなと思ったので。

北:確かにそれはありますね。



-:そういうことができるのって乗りやすい馬じゃないですか。ゴールドシップって確かに引っ掛かりはしないけれど、そんなに乗りやすそうには見えませんから。

北:道中ですか?

-:特にスタートから加速するまでの間ですね。だから宝塚記念の勝負所って、もしかすると、……。

北:スタートから最初の100mくらいのところが一番の鍵ですよね。確かに。

-:キーポイントはどこにあるかといったら直線突き放したとこでもなんでもなくて、スタート100mくらいでジェンティルを間近に見れるポジションをとれた、というところが勝敗の分かれ目だったのかなという気がしたんですけれど。しかも、ほとんどマッチレースで、内田ジョッキーにしたら完全にジェンティルにロックしに行ってる。後ろのフェノーメノはあんまり眼中にない感じを受けました。

北:3コーナーから4コーナーにかけて、ちょうど間に挟まれる形だったと思うんですけれど、そこからもう一回伸びたので、当然外から被せてくるフェノーメノを蹴散らして、あとはジェンティルをどういう風に競り落とすかっていうふうに思いましたけど。

-:結果的にはダノンバラードのしぶとさが際立ち、ジェンティルはダノンバラードにも負けてしまったんですけれど……。

北:そこは前残りの競馬だったのでね。

-:前残りで、しかもスタミナのいる競馬だったと思うんですけれど、勝ち時計が2分13秒いくつかっていうのが発表が良の割には遅いですよね。

北:1秒半か2秒近くは、いつもの宝塚記念より遅いですよね。

今週の大目標は年度代表馬の称号

-:実際馬場を踏んでみて、別にJRA批判ではないけですれど、良馬場ではないですよね。

北:「ギリギリ良っていったら、良かな」っていうのはありますし、「稍重でもいいんちゃうっていったら稍重でもいい」っていう。

-:馬が走っていて、土が飛ぶのは引っかかっているということですから、結局地面の表面は結構硬い。良馬場発表ですけれど、芝の地中は柔らかかったんじゃないかなと。特殊な馬場といえば特殊な馬場ですけれど、そういうパワーのいるところはゴールドシップのセールスポイントですからね。今後はパンパンの良馬場でも走れるゴールドシップというのを見せてもらいたいなと。

北:秋になると、どうしても芝の成長も遅いので、有馬記念も最後の最後だし、ジャパンカップも東京の終わりなので、そういう面では有利かなとは思いますね。

-:これからもファンの注目以上に、ゴールドシップに乗っている調教助手というだけでトレセンでも注目されます。それは幸せなことですよね。

北:もちろん、そうですね。年度代表馬にこれで一歩近づいたと思っていますし、そういう面では凄いことだと思いますけどね。

-:ゴールドシップは須貝厩舎の馬であり?

北:もうみんなのゴールドシップになってますね。小林オーナーの馬でもありますし、日本競馬界のゴールドシップであるという。

-:くれぐれも今年1年、無事に走りきって欲しいですね。

北:確かにそう思います。

-:それを守る1人が今浪厩務員であり、乗ってる北村浩平助手であると。今回の宝塚で応援してくれたファンに改めてメッセージを頂いていいですか。

北:前回の天皇賞(春)は残念な結果だったんですけれど、今回こうしてスッキリ勝ったといいますか、みんなのモヤモヤ感を吹き飛ばしてくれたんじゃないかと思っていますし、これから、もっと古馬になって、最強馬と言いますか、土を付けられることがないくらいの馬に作って調教して頑張っていくだけなので、これからも応援お願いします。

-:ありがとうございました。今回はおめでとうございました。



【北村 浩平】Kohei Kitamura

幼少の頃より馬術で腕を磨き、小学校4年生の時には祇園祭のお稚児さんを務めた。2003年3月に田所秀孝厩舎の所属騎手としてデビュー。初年度より3年連続で2桁勝利をマーク。3年目の2005年にはエリモハリアーで函館記念を制覇し、重賞初勝利。その後はフリー騎手となった後に須貝尚介厩舎に所属。2010年12月20日の騎手引退後は、そのまま同厩舎の調教助手へと転身し現在に至る。