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久保公二調教助手



どちらかと言うと叩き良化というイメージが強いグランプリボス(牡5、栗東・矢作厩舎)だが、今春は緒戦のマイラーズCを快勝すると、上積みが期待された安田記念で10着。改めて掴み所がない一面を見せるも、この秋はスプリンターズSからの始動と、仰天のローテが組まれてきた。しかし、血統的に言えば真骨頂はこの距離ということも考えられ、実行するのが矢作厩舎ならダークホースと呼ぶには恐すぎる存在。真意を確かめるべく、久保公二調教助手に適性を探ってきた。

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最終追い切り後の内田博幸騎手のコメントはコチラ⇒


久々もコンディションは文句なし!

-:スプリンターズSに出走するグランプリボスについてお話を伺いたいと思います。安田記念以来なんですけれど、帰厩時期と今のコンディションについて教えてください。

久保公二調教助手:9月10日に帰厩してきて、順調に夏を越して、ノーザンファームしがらきで乗り込んできているので状態は言う事ないです。

-:安田記念の時も取材させていただいて、一週前時点の調子はそれほどでもなかったけれども、そこから調子上がってきたという。

久:本当に具合良かったので、“これはもう勝てるな。ロードカナロアがナンボのもんじゃい!”と意気込んでいたんですけれどね。自分の競馬ができなくて、行くところ行くとこ壁になって、とても残念な結果でした。

-:担当の久保さんからしたら不完全燃焼と?

久:不完全燃焼です。燃えてないですよ(笑)。

-:それをこの大一番のスプリンターズSで巻き返したいです。

久:こればっかりは、1200を走った事がないから、適性は言いようがないですよね。

-:ただ血統的に言ったらバクシンオーですからね。

久:普段のレースっぷりを見てくれたら、わかると思いますけど、1600であれだけ引っかかる馬だから、1200でペースが速くなる事に関しては大歓迎。

-:それに中山コースも大丈夫と?

久:まぁ一回しか走ってないですけどね。

-:問題は、休み明けがどうかなのでしょうか。

久:マイラーズCの時が休み明けで勝ったので、今更そんな心配しても仕方ないかなと。

-:振り返ると、今までの休み明けとマイラーズCの休み明けというのは、どこがどう違ってマイラーズCだけ結果が良かったのかというのを聞きたいのですが。

久:僕もちょっとわからないんですけどね。あの馬は休み明けだろうが、使ってグングン良くなろうが、いつも調子が良い。休み明けだから今回は動きがどうかなというのがなくて、休み明けの攻め馬でもしっかり動いてくれる。でも何故か休み明けは結果が出てこなかったという。ところがマイラーズCはいきなり勝ってくれたので、こっちもビックリしました。5番人気だったので、ファンの人は良くわかってるなと、思っていたんです。勝ったので嬉しい誤算でした。


初めての1200mに向けての対策

-:グランプリボスという馬の能力は誰もが認めるところです。それプラス、1200という応用の問題じゃないですか。そこはどういう風に超えたら良いですか?

久:今回は世界王者(ロードカナロア)が、それで世界王者を負かした馬(ハクサンムーン)もいるのでね。そう簡単には好きな競馬をやらせてもらえないと思うんだけども、内田さん(内田博幸騎手)が昨日から付きっきりで攻め馬してくれているから、コミュニケーションも取れているだろうし、その辺に懸けたいですね。ゴールドシップもそれで上手い事いったみたいだし。

-:これまでの距離と初めての1200に向けて、違う味付けというのはありますか?

久:とりあえず、角馬場で乗るようにしましたね。今までだったら坂路を1本シャッと上がって、おしまいって感じだったけど、今回はガス抜き、リラックスをさせる為に、角馬場で体をほぐしてから行くような感じにして、そうしたら、坂路も掛かって行くのではなくて、ある程度リラックスして登れるようになったので、それは良かったんじゃないかなと。

-:それは1200に向かうにあたってどのような利点があるのでしょうか。

久:1200だからという事はないんだけど、とにかく坂路を落ち着いて登らせようと。ぶっ飛んで行くのではなくてね。普段から乗り手の意のままになるように。とりあえずやっぱりイレ込むからね、爆発力があって抑え込めないところがあるので。

-:競馬場に行ったら自然と気合も乗ってくるし。

久:坂路もスタート地点まで行ってしまえばウワっとなる奴なんでね。500である程度ガス抜きをしてから行った方が良いのかなと。坂路も楽に登れるようになったので。

-:今週は台風の影響で、月曜日の競馬が火曜日になって、変則日程となりました。今日(9/19)の追い切りは、CWで2頭併せで行われましたが、どのような動きでしたか?

久:先週の土曜日に坂路で、初時計を出したんだけど、49秒7で上がってきたので、その反動が怖いなと思ったんです。けれども、その反動も見られず、今日のCWの追い切りも馬なりで併せ馬を軽く相手した感じで、上がりも全然大丈夫だったし、午後の獣医さんの診療も全然先週よりも良くなっているという事だったので、良いんじゃないですか。文句のない状態でここまでは来ています。



-:最終追い切りは坂路で追い切る事もあれば、CWで追い切る時もあると?

久:大体競馬の前の週がCWで追い切る事が多いかな。競馬の週は坂路でサラッと。今回は輸送もあるのでね。

-:9月10日に帰ってきて先週の週末には49秒台の猛時計を出したわけですけど、それはダイエット調教の意味があったという事ですか?

久:勝手に時計が出てたと。“こんなものだろう”と乗ったつもりが、それくらい出てたと。パッと時計見たときに、“これ3ハロンの時計かな?”と思いましたよ(笑)。

-:出し過ぎてしまった感じはなかったですか?

久:それくらいの能力はあるんだろうと。その時は安藤助手が乗ったのでね、体重が軽いので。その辺は心配していないし、あの馬デカいくせに綺麗な脚してるから、心配していません。

-:放牧先から戻ってきた時の体重と今の体重はどうでしょう?

久:先週に帰ってきてすぐに体重を量ったら526キロ。今日、量ったら526キロで変わってない。でも、これから競馬に向けて仕上げて行くので、輸送もあるからね。510キロ台にはなると思います。

-:当日510キロ台にしたい思惑としては輸送でどれくらい減るのですか?

久:大体あの馬は関東圏に持っていくと10キロ減るので、今のところ予定通りに来ています。その辺は上手い事やるので、僕も20年(仕事を)やってますから(笑)。

-:久保さん的には1200という距離だから、エサを変えたり、調教を変えたり、そういう事はなく。

久:人間は気負いもないし、あんまりプレッシャーもないし、馬もあんまりわかってないんだろうからね。

内田騎手が付きっ切りで指南

-:内田ジョッキーが付きっきりで乗ることによって変化はありそうですか?

久:昨日は馬がさすがに“雰囲気が違うのかな”とわかったみたいで、調教を少し嫌がっていたかな。なだめながら、坂路も80秒くらいで登って来たのかな。

-:それくらいゆっくりと走らせたと。

久:これで良いんじゃないですかね。

-:内田さんはこれから毎日乗られるんですか?

久:乗ってくれるみたいです。

-:関東圏のジョッキーが関西の馬に乗るという事はプラスだと思うんですけども。中山1200というのは、少し特殊と言いますか、難しいですよね。

久:乗り役じゃないので、詳しくはわからないですけどね(笑)。関東のジョッキーとなると、中山乗りなれているだろうから、そこは強みじゃないかな。

-:今回はいかにグランプリボスに“今回は距離が短いぜ”ということをわかってもらうか。

久:毎日言い聞かせときます。「短いで」って(笑)。

-:久保さん的には合いそうな感触はありますか?

久:距離が伸びるよりは短くなってくれた方がありがたい。


ついに解かれる封印で“倍返し”を!

-:振り返ればサクラバクシンオー産駒なので“どうして1600にこだわるんだ”という意見も受けたと思います。それでも、マイルのタイトルも取っている訳じゃないですか。その頃は1200というのは禁断の最終手段という事だったと思うんですけども。春の高松宮記念から大きくメンバー構成は変わっていないので、そこにマイルからグランプリボスが参戦することで、オッと思う人たちもいると思うんです。

久:でしょうね。「今更なんで使うんだ?」って声もあるだろうし、「遅い」って声もあるだろうけど、こちらとしてはずっとマイルにこだわってきた馬で、マイルで結果出してきた馬だから。あの馬の気性からして1200使ったら1600に戻れないんじゃないかっていうのがあったので、ずっと1200は使わずに来たんですけども。

-:それはグランプリボスというのが1600にこだわってきて、安田記念でロードカナロアが1200から1600に来たじゃないですか、そこで勝ってしまっている。それで、マイル路線の格というか、そこにファンも疑問を持ってしまっているんじゃないかと。2着のショウナンマイティも2000mから来た馬。マイル屋も巻き返してスプリンター路線に格をみせたいですね。

久:“倍返し”したいですよね。やられたらやり返したいけど、これが“倍返し”の意味になるかどうか(笑)。世界王者相手に1200で倍返しできたら良いけど。

-:グランプリボスも世界は経験してますからね。

久:経験してますけど……、世界一強い馬(フランケル)と戦って、なす術がなかったけどね。

-:最後にグランプリボスをスプリンターズSで狙っているファンにメッセージをお願いします。

久:お父さんのサクラバクシンオーが2連覇したレースなんでね。息子もそれに続けば良いかなと、馬券を買って応援してください。グランプリボスは坂とかも関係ないですし、馬力があるので、決して恥ずかしい競馬はしないはずです。

-:直前も聞きに来ると思いますので、よろしくお願いします。ありがとうございました。

安田記念前・グランプリボスについてのインタビューはコチラ→



【久保 公二】Koji Kubo

高校1年の時に、笠松から中央に転厩してきたオグリキャップに憧れて、この世界に入ることを決意。それを親に納得させるため、高校2年の夏休みに北海道の荻伏牧場(ブルーインベスターズの前身)に一ヶ月間、丸々アルバイトに行き、なんと卒業後は同場に就職して2年間勤務。当時の思い出の馬はシルクムーンライトで、1歳の馴致で入ってきたウイニングチケットにも跨ったことがある。トレセン勤務は吉永猛厩舎からで、定年解散後は伊藤雄二厩舎に8年間勤務し、ニホンピロニールやメイショウカチドキ、ロードアトラスなどを担当。現在は矢作芳人厩舎に所属して快進撃を支えている。


【高橋 章夫】 Akio Takahashi

1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて17年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。