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小林真也調教助手

今期は初ダートのフェブラリーSからスタート。その14着をキッカケに歯車が狂ってしまった印象のカレンブラックヒルだが、今秋は前哨戦を使わずにマイルCSで始動。さらにはジョッキーを替えて挑むという荒療治で立て直しを図ってくるが、その真意は……。元値はNHKマイルCを無敗で制し、天皇賞(秋)でも5着と好走した実力馬。かねてから的確なジャッジをいただいいる小林真也調教助手に、ファンに変わって疑問を投げかけてきた。

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反応が大きかった乗り替わり問題

-:カレンブラックヒル(牡4、栗東・平田厩舎)についてお話を伺います。安田記念以来のレースというこのローテーションに若干違和感があって、毎日王冠を何故使わなかったのかと思うファンもいると思うので、まずはそちらから教えてください。

小林真也調教助手:夏の間に鈴木オーナーと少し話す機会があって、その時も「今後はどう思うか?」と聞かれたので、毎日王冠以外ないと思ったんですよ。どういうローテーションを組むにしても、完全にリフレッシュするにしても、毎日王冠までなら期間も十分あったし、その後にどういう使い方をするかは、レースの内容次第ですけれどね。調教師とオーナーとで、色々と思うところがあった、ということですかね。毎日王冠を使わない分、リフレッシュに努めようということなのかなと思います。

-:リフレッシュする期間を長くとれたということですね。今回の次に注目点というのをお伺いしますが、ジョッキーが秋山真一郎騎手から岩田康誠騎手に乗り替わります。ブラックヒルのファンからしたら、かなりショッキングな乗り替わりだったと思いますが。

小:それは僕らにとっても意外でしたけれど、僕ら以上に周りの反応が大きくて、それが意外ではありましたね。

-:今の時代、乗り替わりはそんなに珍しいことではないですが、タイミング的に大きなミスや、それに伴う大敗があったあとなら分かるんです。春のレースを観ていて、それほどのミスはなかったのかな、という気がしたのですが。

小:レース中の乗り方が原因で負けたレースというのは、今年はないと思うんですよ。ただ、フェブラリーSから安田記念まで悪い流れというか、ジョッキーのミスで負けたとは思わないですけれど、一言で言ったら“そういう悪い流れを変える”ということじゃないですかね。


「今回の乗り替わりに関しては、一度流れを変えるというニュアンスだと思うし、鈴木オーナーは秋山騎手に思い入れのある方だし、この件に関しては、むしろ苦渋の選択だったかなと思います」


-:春の3戦で結果が出なかったのを、乗り替わりによって違う流れに持って行きたかったということですね。

小:それで誰に乗り替わるかということで言うと、今までの秋山騎手と同じようなタイプのジョッキーを乗せてもそんなに変わらないだろう、ということで、まさに180度違う岩田騎手になりました。乗り替わりに関しては、カレンブラックヒルだけじゃなく、他所の馬にしても、結構デリケートな問題ですしね。ただ、今回の乗り替わりに関しては、一度流れを変えるというニュアンスだと思うし、僕らも今までずっと話をしてきて、鈴木オーナーをはじめ、厩舎にとっても秋山騎手は思い入れのある人だし、この件に関しては、苦渋の選択だったかなと思います。

-:ソフト系から、180度違うハード系のジョッキーにチェンジして、どう変わるかというのも、注目すべき点ですが、ジョッキーだけを注目するのではなく、一番はカレンブラックヒルの今のコンディションがどうなのか?肝心なのは状態ということですよね。帰厩してから、ここまでけっこう時間をかけて調整されていますけれど、どんな感じでしょうか。

小:放牧前に、どこか悪かったとか痛かったということはないんですけど、やっぱりこれだけしっかりと休ませてもらったので、フレッシュさは戻ってきていると思うし、元気ですね。ただ、歳をとった分ズブくなっているような面は多少あります。もともと普段の調教は乗りやすい馬で、今週のCWの追い切りでも、前はもっとズバッと動いたんですけれど、まだ重さがあるというか。それは休ませていた分の重さと、ズブさが出てきている重さ、両方あるんじゃないかなと思います。ただ馬自体は元気ですよ。



ぶっつけG1での仕上がり過程

-:今週の1週前追い切りは、CWでの併せ馬で、ジョッキーが乗って、全体は84秒台で、終いは12秒半ばくらいという追い切りでした。岩田騎手のコメントはいかがでしたか?

小:「まだ重いな」ということでしたね。先週の坂路の追い切りにも乗ってもらったんですけれど、その時も「まだ重い」と言っていて、今週もまだ重いということで、確かにもともと時計の出る馬ですしね。僕も併走相手に乗っていて、もっと突き放されるかなと思っていたら、そうでもなくて。ただ、時計的には意外でしたけれど、どこが悪いとか気になるとか、そういうことはないですね。

-:では、4歳になってズブさが出たことを加味すれば、休み明けでもレースに行って、調教以上に動くということも十分に考えられますか?

小:そうですね。競馬に行けばまた違うかなと思います。

-:逆に言えば、休み明けのG1ぶっつけというところで、ここ一本に絞ってギリギリに仕上がったという雰囲気ではない、ということですか?

小:ギリギリな状態ではないですね。G1なので、そのくらいまで持っていかなきゃいけないような気もしますけれど、そこまでではないです。ただ、あと1週あるので、どれだけ変わるか、ということですね。


「去年の天皇賞(秋)から休ませたあと、フェブラリーSから単発でポンポンポンと3回使って、段々と馬の緊張感がなくなってきていたような気がしますね。肉体的、精神的な緊張感というのが段々と下がっていった気がします」


-:現時点で、時計だけではなく反応だとか、普段乗っている時の馬の精神状態からは、春以上のものを感じますか?

小:僕は放牧前の安田記念の時よりいい状態だと思いますね。安田記念が悪かったわけじゃないんですけれど、いろんな面で、特に根拠のない感覚とかもひっくるめて、安田記念の時よりいいんじゃないかなと思いますよ。

-:その安田記念ですが、結果は14着で、勝ったロードカナロアからは0.9秒差。意外に負け過ぎたかなという印象がありますが、この敗因というのをファンはどう捉えたらいいですか?

小:はっきり言えるのは、敗因はジョッキーじゃないということですね。それは多分、分かってもらえるだろうなと思います。スタートも良かったし、多少ハイペースだろうが前の馬も交わせなかったくらいですから。マイラーズカップで4着、安田記念で14着ということで、気持ちが途切れちゃったのかなという気はしますね。



-:マイラーズカップから上積みがないと好走は難しかったのに、少し馬が疲れてしまったと。

小:肉体面での疲労とか、そういうものはなかったと思うんですよ。ただ、すごく無責任なことを言うようですが、去年の天皇賞(秋)から休ませたあと、フェブラリーSから単発でポンポンポンと3回使って、段々と馬の緊張感がなくなってきていたような気がしますね。身体の張りとか、そういう面でも。天皇賞が良すぎたので、あれを基準にみてしまうとちょっとかわいそうですけれど、やっぱりバイオリズム・リズムというか、そういう肉体的、精神的な緊張感というのが段々と下がっていった気がします。

-:カレンブラックヒルの精神的な緊張感を維持するには、どういうローテーションというか間隔が一番いいでしょうか?

小:欲を言えば、休ませる時はしっかり休ませたほうがいいですね。それは放牧に出すとかじゃなくて、放牧に出して、どういう休ませ方をするかということだと思います。

-:乗らないなら、ちゃんと乗らない時間が必要だと。

小:一番いいのは去年のNHKマイルカップの後だとか、今年の安田記念の後のように、1ヶ月や、それ以上の期間で完全に乗らないで、また一からやるという。条件馬とかの場合はそんなの無理ですけれどね。やっぱりオープン馬でも2週間の短期放牧でガラッとリフレッシュする馬もいると思うんですけれど、この馬に関しては、ちょっとメリハリを付けたほうがいいような気が僕はしますね。

-:そういう意味では、今回は楽しみが大きいですね。

小:そうですね。フレッシュですごく元気です。

カレンブラックヒルの小林真也調教助手インタビュー(後半)
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【小林 真也】 Shinya Kobayashi

中学3年でテレビゲーム「ダービースタリオン」にハマったのをキッカケに、競馬に興味を持つ。早田牧場、天栄ホースパークでの勤務を経由し、トレセンへ。

大橋厩舎に所属した後、現在の平田厩舎で攻め専として勤務。一昨年のマーメイドSを勝ったブライティアパルスが思い出の一頭。「膝を骨折してから掛かるようになってしまって潜在能力の半分くらいしか出してやれなかった」と悔やむ。気難しく、普段からうるさかった同馬が輸送した時、夜明けとともに馬房から外に出してレースまで延々歩かせていたのを懐かしむ。

牧場時代から秋山騎手のフォームに憧れていた。「自分じゃあそこまでキレイに乗れないですけどね(笑)」調教後も事務作業を淡々とこなす頭脳系ホースマン。


【高橋 章夫】 Akio Takahashi

1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて17年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。