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小林真也調教助手

当日480キロ台なら割引が必要

-:成長分に関しては、NHKマイルCを勝っているだけに、やや早熟な馬なんじゃないかと疑惑を持っているファンもいると思います。あの時の体つきというのは、まだ成熟した大人の体つきじゃなかったと思うし、その上積みというか、今の成長した馬体というのを期待したいところです。

小:NHKマイルカップの時は、獣医さんが見ても「同年代の馬と比べて未熟」だと言っていました。それは天皇賞の時もそうだったんですけれど、最近になって「ようやくしっかりしてきたね」と言ってもらえるようになりました。“身体の成長=競走能力の向上”ではないですけれど、早熟ってことはないと思います。僕の考えるピークは天皇賞(秋)で、その後はちょっとリズムが合わなくて、能力を出せないだけで、いわゆる早熟馬が年齢を重ねて走らなくなっていくというのとは、ちょっと違うと思いますよ。

-:では、もう一肌脱いだブラックヒルが見られそうですか?

小:体は成長しているし、分厚くなっていると思います。もっとも、それがすべて必要な筋肉なのかはわかりません。最近の流行として、プリッとした体がもてはやされているのですが、僕らは別に、馬っぷりの良さを競っているわけではないので。かといってわざと絞り上げる必要もないと考えています。

-:馬それぞれに適性な筋肉や脂肪の量があるということですね。

小:ただ、間違いなく体は大きくなったというか、年齢を重ねた分しっかりしてきたなあと、乗っていても思います。


「NHKマイルカップの時は、獣医さんが見ても『同年代の馬と比べて未熟』だと言っていました。最近になって『ようやくしっかりしてきたね』と言ってもらえるようになりました。“身体の成長=競走能力の向上”ではないですけれど、早熟ってことはないと思います」


-:気になる馬体重についてですが、安田記念に出走した時が472キロ、おそらくトレセンにいる時は480キロ台くらいだったと思うんですが、現在はどれくらいですか?

小:今はようやく絞れてきて、480キロちょうどくらいですね。トレセンに戻ってきた時が500キロくらいあったので、そこから少しずつ落としていきました。ただ、この馬はなかなか落ちにくいんです。同じオーナーでカレンミロティックという馬がいて、あの馬はどれだけ太って帰ってきても、勝手に落ちていくので楽ですが、ブラックヒルは1回太るとなかなか絞れなくて……。休養期間が長いので仕方ない部分もありますし、今回は輸送もありませんが、なんだかんだで、当日は470キロ近くまで戻ると思います。

-:レース当日の朝に、480とか478くらいが目安ですか?

小:あえて数字を出すなら、474前後でしょうか。それくらいは締まってないと厳しいのかなと思います。まだまだ贅肉が目立っているのが現状です。

-:休み明けで馬体重にこだわりすぎると調教過多になって、馬が精神的にイラッとしてくることもあると思います。そのさじ加減はどのようになされていますか?

小:平田厩舎の調教は基本的には坂路メインなので、少なくともどの馬でもオーバーワークということはないですし、そういう面では心配していません。今は落ち着いてリラックスしていますよ。



-:では、気にするのは太め残りだった場合ですね?

小:そうですね。480キロくらいだと割引が必要なのかなと思います。でも、昨年の毎日王冠(1着)の時も、かなり太い状態で、レース当日になってようやく絞れた、という状況だったのですが、その時と比較すると、同じ太めであっても、今のほうが引き締まっていますね。

-:時計にはなっていなくても、本数自体は豊富に乗り込まれてきていますよね。

小:2ヶ月くらいトレセンで調整してきているので、そういう意味ではちゃんと乗り込んできています。ですので、太すぎるということはないと思います。

-:むしろレースで、カレンブラックヒルの本能に火がつくかどうかということですね。

小:そうですね。あとは、日本を代表するトップジョッキーの岩田騎手に期待したいですが、それだけの騎手にG1で乗ってもらえるということで、リーディングジョッキーの貴重な一鞍ですから、失礼のない状態にしなければいけないなと思っています。



返し馬の燃える姿は良し悪し

-:他馬との力関係についてはどのような見解ですか?

小:個人的には、グランプリボスは能力をしっかり発揮してくればかなり手強い相手だと思います。今回はルメール騎手が乗るということで、乗り難しくて力を出しづらい馬に乗せれば、めちゃくちゃ怖い相手です。

-:ファンからすると、どの馬を馬券の軸にするかで大変迷うレースだと思います。

小:ただ、ブラックヒルの場合は他の馬どうこうというよりも、昨年までの自分の走りができるか、爆発力を出せるかという点が重要です。

-:今年の傾向として、週末にやたら雨が降ることが多いので気になるところですが、この馬にとっては馬場の悪化はかなりのプラス要素になると思いますが、いかがですか?

小:実際、そういう馬場で勝っていますし、雪が降っているレースにも出た馬ですから、他馬と比較して雨が降っても割引になることはないと思います。ただ、G1なので良馬場で全馬気持ちよく走って欲しいという気持ちもありますね。


「(レース前の)落ち着き具合と結果の下降線がリンクしているような気がします。大人しい返し馬の時は負けているので、少し折り合いに苦労するくらいのほうがいいのかなと思うのですが」


-:その他のポイントとして、年齢的にズブくなってきているという点を踏まえると、パドックで落ち着きすぎていると良くないのでしょうか?

小:元々この馬が持っているモノなのでそれほど気にしていませんでしたが、やはり昨年の天皇賞(秋)まではうるさかったですね。段々、パドックから本馬場入場までが落ち着いてできるようにはなってきたので、それはいいことなのですが……。

-:個人的には、その落ち着き具合と結果の下降線がリンクしているような気がします。大人しい返し馬の時は負けているので、少し折り合いに苦労するくらいのほうがいいのかなと思うのですが。

小:活力があるくらいのほうがいいのかなと思うのですが、なかなかコントロールができないですよね。めちゃくちゃうるさかった馬を、なんとかして大人しく馬場入りできればいいなあとは思っていましたが、先出し以外に何か工夫するところがあったかと言われると、なかったと思うので……。


-:でも、NHKマイルCで先出ししたカレンブラックヒルが返し馬で目の前を通った時に、「速すぎやろ!」と思った記憶があります。

小:そうなんですよね。常識にかかった馬場入りができるようになった点を、敢えてうるさくさせる必要はないと思うので、その辺は人間がどうこうする部分ではないような気がします。

-:今回の返し馬で、吹っ飛んでいくような姿が見られた場合は、逆にプラスだと考えたほうがいいかもしれないですね。

小:ファンの皆さんは安心するかもしれませんが、新馬から見てきた僕らにとっては、やっぱりアクシデントが怖いです。本当は先出しも良くないんです。他の馬に迷惑がかかってしまうことがあるので、先出しという手段をとっていますが、みんなと一緒に馬場入りできるような馬にするのが、僕らプロの仕事ですから。ですので、僕らは気が気じゃないですが、ファンの方々にとっては喜ばしいことかもしれませんね。



-:あとは気になる馬具についてですが、メンコはどうされますか?

小:メンコはしないと思います。帰厩当初はエネルギーが有り余っていたので、少しの間だけ装着していたのですが、今は外しているので。被せるとしたらパドックから輪乗りまでだと思います。

-:最後に、カレンブラックヒル復活を願うファンの皆さんにメッセージをお願いします。

小:僕らが思っていた以上に、今回の乗り替わりに関して反応が凄く大きくて、それだけ多くのファンに愛されているんだなと感じました。もう少し突っ込んだ乗り替わりの話については、須田鷹雄さんのブログを見ていただければと思います。馬の状態に関しては、今年の中で一番フレッシュな状態ですし、動きはまだ重い部分もありますが、それよりも大切な活力という点が戻ってきていると思います。ピークだった天皇賞に比べるとさすがに劣りますが、今年の3戦の中では一番いい状態で出せると思うので、期待してください。

-:ありがとうございました。

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【小林 真也】 Shinya Kobayashi

中学3年でテレビゲーム「ダービースタリオン」にハマったのをキッカケに、競馬に興味を持つ。早田牧場、天栄ホースパークでの勤務を経由し、トレセンへ。
大橋厩舎に所属した後、現在の平田厩舎で攻め専として勤務。一昨年のマーメイドSを勝ったブライティアパルスが思い出の一頭。「膝を骨折してから掛かるようになってしまって潜在能力の半分くらいしか出してやれなかった」と悔やむ。気難しく、普段からうるさかった同馬が輸送した時、夜明けとともに馬房から外に出してレースまで延々歩かせていたのを懐かしむ。
牧場時代から秋山騎手のフォームに憧れていた。「自分じゃあそこまでキレイに乗れないですけどね(笑)」調教後も事務作業を淡々とこなす頭脳系ホースマン。


【高橋 章夫】 Akio Takahashi

1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて17年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。