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濱野陣調教助手

1年前はまだ1600万下クラスの身だったアンコイルド。今年1月にオープンクラスに昇格すると、夏は北海道シリーズへ。函館記念で2着、札幌記念で3着と好走を見せると、栗東に戻り迎えた京都大賞典も2着。そして初のG1挑戦となった天皇賞(秋)も4着と健闘。その勢いは留まるところを知らない。しかし、夏から休みなく使われ次のジャパンカップで6戦目。歴戦の疲れが心配されるところだが、今回は当コーナー初登場となる濱野陣調教助手に、大一番に向けての態勢を語っていただいた。

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テンションが高くても結果を出す馬

-:ジャパンカップに出走予定のアンコイルド(牡4、栗東・矢作厩舎)ですが、前走の天皇賞(秋)は金曜日輸送になりました。金曜日輸送が向かない馬の一頭なのかと思ったのですが、いかがですか?

濱野陣調教助手:いや、そこは全馬同じ条件ですからね。あまり気にしていなかったです。

-:府中へ行ってみての馬の様子などはどうでしたか?金曜日に入るというのは、通常とは違う形で、普通なら土曜日の朝は競馬モードに入るところだと思うのですが。

濱:土曜日の朝は大人しかったのですが、レース前の日曜日はテンションが上がってしまい、丸洗いしなければいけないくらいに全身汗だくでした。レースへ向けて、用意しようとしたら、ドッカドッカと音がするので、何かなと思ったら、かなりのテンションの上がりっぷりで、前の日の方がテンションは大人しかったです。

-:普通は前の日がレースだと勘違いして、土曜日の方がテンションは上がりますよね?

濱:初めての金曜日輸送でしたからね。

-:そこからパドックに曳かれて、何かいつもと違うところはありましたか?

濱:最近ちょっとうるさいんですよね。もともと大人しい馬だったのですが、天皇賞ではテンションが高かったです。

-:僕達がパドックを見る時は、前回よりは大人しめな方がいいんですか?

濱:それでも、走っている時はうるさいんです。京都大賞典の時はうるさくても走りましたし、大人しくても走りますし、よく分からないです。

-:パドックの気配では判断しないほうがいいですか?

濱:判断しない方がいいと思います。

馬場状態、展開は不問のタイプ

-:ファンは夏から使い続けて、レース数が多いことを気にしていると思います。

濱:僕もそれが一番心配だったのですが、夏に北海道で(馬の)温泉に浸かってから、馬もどんどんと良くなったんです。使い減りもしにくくなり、こっちに帰って来てからもまた良くなりました。今が成長期なのかなと思います。

-:それにレースを使っている数も多いですし、札幌記念の馬場の悪さから、影響を受けて馬もいたと思います。普通のレース以上に疲労が残ったんじゃないかと思ったのですが?

濱:といっても、走れていますし、関係なさそうですね。

-:逆に能力的なものを感じて、京都大賞典は楽しみにしていて、その通りでしたね。

濱:ええ。札幌記念の時よりも馬が良くなっていたので、楽しみでした。

-:レースの週中の時も、濱野さんに「具合はいいよ」と教えてもらっていたので、馬券は当たりました(笑)。そういった意味では、天皇賞は馬場も直前までどうなるか分からなかったですし。

濱:渋った馬場がいいんじゃないかと言われていますが、良馬場でも関係ないでしょうからね。

-:札幌記念のレース内容より、京都大賞典の方が僕は良かったと思います。

濱:そうですね。僕も良かったと思います。新たな脚というか、今までになかった一面が出たと思います。


「乗っている感触としては、天皇賞よりも良いんじゃないかと思います」


-:そして、本番の天皇賞(秋)でも4着でしたからね。

濱:よく頑張ったと思います。レース中に見失って、“どこに行ったんだろう”と観ていたら、ゴールしたら前の方で入線。“これはもしかしたら好走したのかな?”って思いました(笑)。

-:見失ったんですか?

濱:ゲートに行っていて見失って、直線入って「おっ!」と思ったんですけど、ジャスタウェイがバッときたので、“これはダメだわ”と。そこからは見失って、そうしたら4着で、よく頑張ったと思います。

-:その楽しみはあと一戦くらい続きそうですね。前走よりも、一気にガッと落ちた感じはないですね?

濱:“デキが落ちる”というよりは、もう一回、楽しみですね。馬に聞いてみないと分からないですよ。疲れがあるのかもしれないし。それでも乗っている感触としては、天皇賞よりも良いんじゃないかと思います。

リベンジが身上の頑張り屋

-:今回のジャパンカップというのは、上位陣もそんなに順調に来ていない懸念もするんですよね。アンコイルドが好走するためには、まずはアンコイルドのコンディションが良いことですね。

濱:ジェンティルドンナらが強いのは確かですからね。ただ、僕の仕事はアンコイルドのコンディションを整えることですからね。

-:位置取りとしては、差して良いタイプですか?

濱:どこでも良いんじゃないですか。

-:京都大賞典の時は、ちょっと後ろ過ぎるのかなと思って見ていました。

濱:僕もそう思っていましたが、直線では「きたきた!」って叫んでいました。だから、分からないんですよね。



-:この馬は最後に頑張るんですよね。札幌記念でも。

濱:最後にロゴタイプを差し返しましたもんね。あれは凄かったです。

-:諦めそうなところで頑張っていたので、この馬は凄く頑張り屋なんだと思いました。僕らが馬券を買う時って、ハナを争うので、そういう頑張り屋さんのところって、差が出てきますよね。

濱:それでいつも人気しないので、馬券を買う人達にとってはまだおいしい存在ですよね。今回もたぶん6、7番人気くらいですよね。

-:ということは、気楽にですか?

濱:気楽に挑戦です。エイシンフラッシュには勝ちたいですね。この間、負けましたので。あの馬、だいたいリベンジはしているんですよ。トウケイヘイローにもリベンジしたし、先着を許した馬には勝っているので。ジェンティルドンナには追いつかないけど、この間のレースを見ていたら、エイシンフラッシュは上手いこと行けば、負かせるんじゃないかと。

-:再現となればいいですね。最後に、アンコイルドのファンにメッセージをお願いします。

濱:毎回、一生懸命走ってくれますし、次も一生懸命走ってくれると思うので、応援お願いします。


【濱野 陣】Jin Hamano

7つの厩舎を渡り歩き、現在は矢作芳人厩舎に所属する38歳の調教助手。そんな中で最も思い出に残っているのは初重賞を取った大久保龍志厩舎のナイキアースワーク(06年・ユニコーンS優勝)で、一番可愛かった担当馬は「乗っていたら凄く気持ちが良かった」という同厩舎のエーシンダードマン(07年・菊花賞4着)。馬との触れ合う上でのモットーは「痛いトコなく、体調良く送り出す。それが仕事だと思います。未勝利、500万が一番勝ちやすい」。期待しすぎず、マイペースで接することをポリシーとし、充実した毎日を担当馬と共に過ごしている。


【高橋 章夫】 Akio Takahashi

1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて17年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。