JRA賞

乾杯する清水久詞調教師、北島三郎オーナー、武豊騎手

感動、感謝、夢は語り尽くせない。1月29日(月)、都内のホテルで「2017年度 JRA賞授賞式」が行われ、2年連続の年度代表馬に選ばれたキタサンブラックが表彰された。式には北島三郎オーナー、管理する清水久詞調教師、主戦の武豊騎手も出席。2015年1月31日のデビュー戦から丸3年の月日が経ち、あらためてキタサンブラックとの思い出や、早ければ2021年にデビューする産駒への期待を語った。

北島三郎オーナー「ブラックの仔は孫のようなもの」

-:キタサンブラックが2年連続で年度代表馬に選出されました。改めて今のお気持ちをお聞かせください。

北島三郎オーナー:生まれて今日まで、こんなに嬉しいこと、感動することは初めてです。80歳をすぎて感動を与えてもらって、馬と携わってくれた皆さんに感謝しています。ありがとうございます。

清水久詞調教師:選んでいただいて本当に嬉しいですね。ありがたい限りです。

武豊騎手:このような名馬に騎乗させていただいて、本当に幸せだと思います。

JRA賞

授賞式に出席した北島三郎オーナー

-:キタサンブラックとの一番の思い出を挙げるとしたら、どんなものがありますか?

北:よく自分たちの本職でも「どの歌が一番思い出がありますか」と言われるのですが、ブラックに関しても毎回走るたびに思い出ばかりなんですね。最初のときと、最後のときと、それから泥々になってヨレながら走った姿と……、いろいろあるんですよね。その中からあえて選びなさいと言われると、着外になったときのほうがすごく印象に残っています。励みにもなりましたし、ほんのわずか3年の間に、この馬は私に素晴らしい宝物をくださったなという気持ちでいっぱいです。

清:オーナーがおっしゃる通り、負けたレースも含めて3年間トータルが思い出に残っています。いろいろな経験をさせていただきましたし、なかなかこれだけの馬に巡り合うことはできませんので、本当に感謝の気持ちしかないですね。

武:私も順番は付けられないですけど、この馬とコンビを組めたことが幸運でしたし、本当に騎手として励まされました。非常に感謝しています。

JRA賞

壇上でトロフィーを受け取る武豊騎手

-:授賞式でも産駒の話になりました。北島オーナーはキタサンブラックの子どもたちにどんな期待をお持ちですか?

北:この馬と最初に出会った時、自分の子供と一緒なんですよね。自分自身は何もしていないんですよ。携わってくれた調教師の先生、厩舎のみなさん、乗ってくれた豊さん、みなさんの力でここまでになったブラックが、今月の31日でデビューから丸3年なんですよね。たった3年でこういう足跡というか歴史をいっぱいくださって、夢をくださって、元気をくださった。それだけで感謝の思いでいっぱいですね。(引退は)寂しかったんですけど、ブラックは大輪を咲かせてくれたから、調教師の先生とも相談して、今度は新しい道を……ということで北海道に帰りました。ブラックの仔は絶対に走ってくれると思うので、私もまた応援に行きたいと思っていますし、豊さんに乗ってもらって勝ってくれたらいいな、という気持ちです。

-:2021年のデビューになりますね。

北:ブラックの子どもは私にとっては孫ができたみたいで、かわいいですね。楽しみにしています。

-:清水先生は調教師として、キタサンブラックの産駒にどんなところを受け継いでほしいと期待されていますか?

清:現役の途中くらいに、菊花賞と天皇賞・春を勝たせていただいて、ブラックは種牡馬入りだなと意識し始めた時点で、少しでも箔をつけて、1つでも多くG1を勝たせてあげて送り出してあげようという気持ちになりました。ブラックが本当によく頑張ってくれたおかげで7つのG1を勝てました。その7つの内容が2000mから3200mと幅広いですし、スピードも見せていますし、天皇賞・秋のようなパワーのいる馬場でも結果を出しました。(2017年の天皇賞・春では)あのディープインパクトのレコードを破るようなスピード決着でも結果を出してくれまして、かなりの評価をいただけたのは僕自身も嬉しいですし、ホッとしています。いろんな部門で走れて、何より丈夫だということが素晴らしいと思いますので、しっかりと子どもたちに遺伝してほしいと思っています。

-:キタサンブラックが引退して約1カ月ですけれど、清水調教師の中でお気持ちの変化などはありますか?

清:北海道に送り出した直後は、長い長い夢から覚めたような現実に戻されたような気分でした。

JRA賞

キタサンブラックを管理した清水久詞調教師

清水久詞調教師「長い長い夢から覚めたような気分」

-:武さんはどういった良さを引き継いでほしいですか?

武:これまでも話してきたのですが、キタサンブラックはスピードもあり、スタミナもあり、勝負強さもあり、どんな場面でも結果を出せる馬だったので、そこが子どもたちに受け継がれていけばいいなと思っています。

-:コンビを組んで2年でしたけれども、今だから言える、乗る際に気をつけていたことはありますか?

武:ゲートはいつも気をつけていました。(2017年の)天皇賞・秋で1度だけ出遅れてしまいましたけど、本当に調教をよくされている馬という感じで、大人というか、非常に頭のいい馬だったので、騎手としては頼りになる馬でした。

-:武さんは有馬記念でオグリキャップ、ディープインパクト、そしてキタサンブラックと、本当に国民的スーパースターのラストランを見事に勝利で飾られました。国民の期待を背負ってラストランに臨むというのは、どういった心境なんでしょうか?

武:いろんな思いはあるんですけれど、そういう馬にたった1人乗るジョッキーが自分であるということにすごく幸せを感じますし、もし負けたら……とゾッとするようなことも考えました。ただ騎手としてやるべきこと、やらなくちゃいけないことをやろうというだけだったので、どちらかというと光栄だなと思っていました。

-:最後に2018年の抱負、目標を聞かせてください。

北:歌を歌って56年です。馬を持ってから54年です。こんな名馬と出会って、こんな賞までいただいて、世間の競馬をあまりやらない人までがブラックの名前を覚えてくださって、本当に感動します。お世話になりました。と同時に、また引き締めて新しい出発をしたいと思います。

清:ブラックは本当に頑張ってくれて、2年連続でこういう光栄な場に連れてきてくれたので、本当に感謝しています。いい経験をさせていただいて財産になりましたので、それを無駄にせず今年も頑張ります。オーナーのお馬さんをはじめ、またこの場に来られるように一生懸命やっていきたいと思います。

武:私にとってもこの2年間はキタサンブラックが大黒柱のような存在で、支えられていたのですが、彼は引退したので、今年は私自身の真価を問われる年だと思っています。ますます頑張っていきたいです。気合入ってます!

キタサンブラック

1月7日、京都競馬場で引退式を行ったキタサンブラック