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騎手コラム

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落札総額は史上最高86億円超え!セレクトセール2017・1歳馬市場回顧

1歳馬総括

7月10日、「セレクトセール2017」(主催:日本競走馬協会)の当歳馬市場が北海道・苫小牧市にあるノーザンホースパークにて開催された。


札幌市では7月上旬としては実に125年ぶりの猛暑に見舞われるなど、異例の晴天が続いていた北海道。そんな灼熱の太陽の下、ノーザンホースパークにて、節目の20年目を迎えたセレクトセール。ココ数年は毎年のように売上レコードを更新する国内最大級のセリとしてお馴染みであり、そして今年も例に漏れず、外の暑さに引けを取らない熱気溢れる市場となった。


セリ開始前恒例の、セレクトセール出身の活躍馬紹介は今年も豪華ラインナップ。サトノダイヤモンドセイウンコウセイら、この一年でのG1馬の映像が流され、各オーナーを祝福。それらが終了すると、満を持して上場番号1番・ラルケットの2016(牡、父ルーラーシップ)が登場。半兄には先月の新馬戦を好タイムで快勝したステルヴィオという血統もあってか積極的に声がかかり、5200万円まで上がったところで『ヒシ』冠でお馴染みの阿部雅英オーナーが落札。


シルヴァースカヤ

▲最初のミリオンホースと鳴ったシルヴァースカヤの2016

序盤からセリは活況を見せ、13番目にはこの日最初のディープインパクト産駒にして一発目の目玉と言える、シルヴァースカヤの2016(牡)が登場。全兄には目下4連勝中、屈腱炎明けでも圧巻のパフォーマンスを示しているシルバーステートという良血馬。1億円からのスタートが宣告されると、会場内からは何とも言えない溜息がこぼれるも束の間、各方向から威勢よく声がかかり、みるみる内に価格が高騰。2億7000万円でハンマーが鳴らされると、期せずして拍手が沸き起こった。


落札したのは、近年のセレクトセールにて高額馬を多数落札し、武豊騎手を主戦に据えている(株)キーファーズ。取材陣がコメントを求める中で……


「武豊騎手の夢(凱旋門賞制覇)を叶えることがキーファーズの夢です」


と一言のみ。短い言葉にキーファーズ陣営の切なる願いが詰まっている。来年以降、武豊騎手を背にターフを駆ける姿に大いに期待したいところ。


リッスン

▲リッスンの2016は「サトノ」の里見治オーナーが2億7000万円で落札


その後もセリは熱を帯びていき、この日一番の落札価格をマークしたのはリッスンの2016(牡、父ディープインパクト)。落札したのは当セールではお馴染み、『サトノ』冠の里見治オーナー


これまでビッグタイトルに縁のなかった里見オーナーだが、この1年で国内外のG1を延べ6勝。うち5勝がサトノダイヤモンドサトノクラウンサトノアラジンと、いずれもセレクトセール出身馬によるもので「ここまで頑張ってきたのは間違いじゃなかったかな」とこの1年を振り返りながら、それでもなお、良血馬への飽くなき執念を燃やす里見オーナーの次なる夢は“ダービー制覇”。一昨年はサトノラーゼン、そして昨年はサトノダイヤモンドで涙をのんだ栄冠へ、サトノ軍団の挑戦は続く。


ラヴズオンリーミー

▲ラヴズオンリーミーの2016を落札した(株)DMM.comは新クラブ法人設立を発表


そして、この日最大のサプライズ発表は、新鋭馬主からの「一口クラブ創立宣言」だろう。G1馬リアルスティールの全妹にあたるラヴズオンリーミーの2016(めす、父ディープインパクト)を1億6000万円で落札したのは、大手動画配信サービスで知られる(株)DMM.com


落札後の囲み取材に応じた(株)DMM.com取締役・野本巧氏の口から発表されたのは、DMM発の一口馬主クラブ『DMMバヌーシー』の発足だった。WEB・アプリ上で完結する決済システム、1万口という口数の多さ、預託料や維持コストを前払いの預り金とし引退時に余剰金を返還する仕組みなど、これまでのクラブとは一線を画する新しいクラブの形を提案するDMMバヌーシー。正式なリリースは7月下旬~8月上旬を予定しているとのことで、こちらについても楽しみに待ちたいところ。


終盤に差し掛かってもセールの盛況は続き、運営側の想定以上に競り合いが多発したからか、予定時刻を約1時間オーバーする形で初日の上場が終了。この日の落札総額は86億3450万円、1頭当たりの平均価格は約3997万円、いずれも過去最高の数字をマークする結果に、取材陣からも驚きの声が漏れたのは言うまでもない。


確かに、高額落札が相次ぐ萌芽はあった。世界各国の活躍牝馬を相手に迎えるリーディングサイアー・ディープインパクトの産駒人気は天井知らず。


加えて、今もなお健在のキングカメハメハ、今年のクラシック戦線を牡馬(スワーヴリチャード)・牝馬(アドマイヤミヤビ・リスグラシュー等)の双方で沸かせたハーツクライ、今年デビューの初年度産駒が早速勝利を積み重ねているロードカナロア、そしてセール直前に産駒初勝利を挙げたオルフェーヴルなど、魅力的な種牡馬が五指に余るような状況。そこに、セレクトセール黎明期からの顔ぶれであるお馴染みのオーナー達に加え、新興馬主が続々と参入してきているのだから、毎年のように売上レコードを更新するのも納得ではある。


吉田勝己

▲大盛況に終わった初日を振り返るノーザンファーム吉田勝己代表


かくして、ノーザンファーム・吉田勝己代表をして「それにしても今回の結果は非常に驚きました」とまで言わしめたセレクトセール2017・初日は閉幕。そして、同時に述べた「明日、どうなるかはもうわからない。予測が付かないですね(笑)」という一言が、更なる“ミリオンホース”の続出を予感させた。


そう、この日はあくまで、翌日ますます白熱する競り合いの前兆に過ぎなかったのである。