今年の日本競馬を彩った名馬たちが顔を揃えるグランプリ『有馬記念』。古くはTTGの3強対決、オグリキャップ感動のラストラン、トウカイテイオー奇跡の復活、近年でも無敵で1年を駆け抜けたテイエムオペラオー、ディープインパクトの連勝を止めたハーツクライの奇襲。次元の違いを見せつけた昨年のオルフェーヴルなど名勝負がいくつも思い浮かぶ。一方で、小回り中山の2500mというトリッキーなコース形態から波乱も多く、1991年には単勝オッズ137.9倍のダイユウサクが大金星を挙げている。
今年は凱旋門賞から帰国後、ここ1本に備えたファン投票1位ゴールドシップに、ここが引退レースとなるジェンティルドンナ、ジャスタウェイ、トーセンラー、ヴィルシーナ、さらにジャパンCを制したエピファネイア、ダービー馬ワンアンドオンリー、春の天皇賞2連覇のフェノーメノ、G1・3勝のメイショウマンボら超豪華メンバーが集結。2014年の真の主役はいったいどの馬か!?
ファン投票1位の牡馬は堅実!
04年 ゼンノロブロイ 牡4 1着
05年 ディープインパクト 牡3 2着
06年 ディープインパクト 牡4 1着
07年 ウオッカ 牝3 11着
08年 ウオッカ 牝4 不出走
09年 ウオッカ 牝5 不出走
10年 ブエナビスタ 牝4 2着
11年 ブエナビスタ 牝5 7着
12年 オルフェーヴル 牡4 不出走
13年 オルフェーヴル 牡5 1着
14年 ゴールドシップ 牡5 ?
ファン投票1位の馬は過去10年7頭が出走して3勝、2着2回。着外に終わった2頭はどちらも牝馬で、データ面ではファン投票1位となった牡馬のゴールドシップには大きなアドバンテージが出来た格好になる。
中心ステップはジャパンCだが
前走ジャパンCからの参戦が全出走馬の1/3を超えるのべ66頭。出走数が多いためアベレージは低くなってしまうが、このステップが中心となるのは間違いない。
アベレージという面ではひと息入れて年内最終決戦に臨む天皇賞(秋)、菊花賞、そして凱旋門賞遠征組が圧倒的に高い。菊花賞組で馬券に絡んだ3頭はいずれも菊花賞を勝っての参戦。一方で天皇賞組は2ケタ着順からの巻き返しもある。
前走G1以外で連対を果たしているのは金鯱賞組。ちなみに、今年の出走馬はないが、ステイヤーズSからの参戦はジャパンC、天皇賞(秋)に次ぐ3番目の頭数だが馬券絡みは過去10年1度もない。
過去10年注目データ
★日本のトップホースが集結する一戦。最も成績を挙げている世代は、一般的に「サラブレッドが完成する時期」といわれる4歳馬。勝率、連対率、複勝率いずれもトップの数字をマークしている。出走頭数の大小もあるが、基本の狙いとしては3歳から5歳までとなる。
7歳以上の激走は、凱旋門賞からの帰国初戦だった04年2着タップダンスシチー以外いずれも前走がG1で0秒8差以内。この舞台では押さえの評価までとなる。
★過去10年の勝ち馬10頭のうち、8頭が前走3着以内。2着も7頭が前走3着以内で、総決算のG1らしく、ハイレベルの戦いで好成績を残してきた馬がグランプリでも好走している。
馬券的に面白いのは、前走で中途半端な着順だった馬ではなく、2ケタ着順の大敗を喫した馬。前走が凱旋門賞だった04年2着タップダンスシチー、高速馬場適性のなさを露呈した昨年の3着ゴールドシップ以外はいずれも人気薄。好走馬の共通点を探ると、04年3着シルクフェイマスを除けば中山での好走歴を持っていた。
★キャリア5~10戦での馬券絡みはいずれも3歳馬。連対を果たしている馬は全てクラシックホースで、クラシックを勝って連対を外したのは09年の皐月賞馬アンライバルド、10年のダービー馬エイシンフラッシュの2頭。
キャリア11戦を超える3歳馬はウオッカ、メイショウサムソンといったダービー馬でも馬券圏内がない。
器用さが問われるコース形態もあるのか、芝のG1としてはリピーターが多く、勝てなくとも2度の2着がある馬が1頭。2度3着がある馬が3頭いる。かつてはナイスネイチャが3年連続3着という珍記録もあった。中山巧者は要注意だ。
★一流馬、一流ジョッキーが揃い、それぞれのジョッキーが大舞台でその走りを目の当たりにしているためなのか、勝ち数の差はあるが、2~3着はほぼ互角。乗り替わりはさほど大きなマイナスにはなっていない。
ちなみに武豊騎手は過去10年で4回乗り替わりでの騎乗があるが、2度の4着が最高着順となっている。
★トリッキーな中山2500mという条件でもあり、上位入着馬の脚質も様々。勝ち切るという点では上手に立ち回れる先行馬が有利とのデータが出ている。
一方で中団から脚を伸ばした馬も成績は良く、人気を背負った06年ディープインパクト、09年ドリームジャーニー、12年ゴールドシップといった勝ち馬も含まれる。
勝ち馬は4角10番手まで。歴戦の強豪が集まるだけあって、直線一気で突き抜けるのは難しい。
★枠番別では過去10年で「4」枠だけ未勝利。しかし、2~3着は3回ずつあって複勝率は最も高い。
馬番別では「1」「9」「13」が2勝で、「8」「12」「15」「16」が馬券絡みなし。「13」の2勝は光るが、それ以外は全て着外。外めの枠はやや分が悪いデータが出ている。
ちなみに日本中が感動した90年オグリキャップのラストランは4枠8番だった。
★馬体重別を見ると、幅広いレンジで好走馬が出ている。ひとつ特徴を挙げると、冬の中山、2500mといかにもパワーが要りそうな条件で軽量馬が苦戦かと思いきや、サンプルが少ないとはいえ440キロ以下の馬がのべ6頭で2勝、2着2回。高いアベレージを叩き出しているのは注目。
増減に関しては10キロを超えるマイナス体重は割引。プラス体重では、07年にプラス12キロのマツリダゴッホが勝利。3着は3回ありいずれも人気薄。好走したは04年3着シルクフェイマス以外、中山の重賞で好走歴を持っていた。
★種牡馬で光るのは何といってもステイゴールド。サンデーサイレンスとともに4勝をマークしているが、出走頭数が大きく違い、勝率36.4%、複勝率は54.5%で5割超え。今年もゴールドシップ、フェノーメノといった有力馬を送り出す。
ディープインパクト産駒は昨年のダノンバラード(15着)が初出走。ラストランとなるジェンティルドンナの走りは注目される。
種牡馬の名前を見るとパワータイプが目立つ。
★2010年以降に行われた中山芝2500mで最も多くの勝鞍を挙げているのは松岡騎手。単複の回収率もプラスとなっているのだが、現時点で騎乗予定はなし。
10回以上の騎乗機会があってアベレージが高いのは蛯名騎手。(3-6-5-16)と勝ち味に遅いものの、掲示板に名を連ねることが多く、複勝回収率は139%に上る。同様に内田博、北村宏騎手も複勝回収率がプラスとなっている。
最後の舞台も『西高東低』
過去10年、関西馬8勝、関東馬2勝で圧倒的に西優勢。2着馬は全て関西馬となっている。今年は登録段階から関西馬が圧倒的優勢ムードだが…。
地方馬はコスモバルクが04年から6年連続出走も05年の4着が最高で、他の5年はいずれも2ケタ着順。
07年から外国馬も出走可能となっているが、まだ出走した馬はいない。
騎手の所属別では栗東所属が5勝、2着5回と数は勝るが、アベレージでは外国人ジョッキーがリード。イメージ通りに頼れる存在となっている。
堅軸1番人気。大穴の台頭も目立つ
過去10年、1番人気は6勝、2着3回で連対率は驚きの90%。長い歴史の中には波乱の結末も度々あるが、ここ10年に関していえば、ファンの夢が走るドリームレースらしい結果となっている。
1番人気を軸に出来るレースだが、ヒモはかなり難解。6~9番人気の馬が7回、2ケタ人気の馬も5回馬券に絡んでいて、2008年には1番人気のダイワスカーレットが勝ちながら、2着に14番人気アドマイヤモナーク、3着に10番人気エアシェイディが入って3連単98万馬券も飛び出している。
2ケタ人気の馬で馬券に絡んだのべ5頭のうち、前述のアドマイヤモナーク以外は前走が重賞勝ち、もしくはG1で掲示板に載った実績があった。
人気順別成績 | ||||
人気 | 成績 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 |
1番人気 | (6-3-0-1) | 60.0% | 90.0% | 90.0% |
2番人気 | (2-0-2-6) | 20.0% | 20.0% | 40.0% |
3番人気 | (0-1-1-8) | - | 10.0% | 20.0% |
4番人気 | (1-1-0-8) | 10.0% | 20.0% | 20.0% |
5番人気 | (0-1-0-9) | - | 10.0% | 10.0% |
6~9番人気 | (1-2-4-33) | 2.5% | 7.5% | 17.5% |
10番人気以下 | (0-2-3-55) | - | 3.3% | 8.3% |
波乱あり、横綱相撲あり、感動のフィナーレありと、暮れの風物詩として数多くの記憶に残るレースを積み重ねてきたグランプリ『有馬記念』。近年は小回りの中山を嫌って、来年に備える陣営も多くなっている中で、今年は史上最高といわれたジャパンカップ組が大挙参戦。ファン投票1位で、2年前の覇者ゴールドシップとの文字通り頂上決戦が実現した。
どの馬からも買えるドリームレースで軸に指名するのは、ジャパンC組の挑戦を受けて立つゴールドシップ。コース実績十分で、乗り替わりも1度騎乗して勝っている岩田騎手なら何ら問題なく、データ面でも死角らしい死角が見当たらない。ファン投票1位の期待に応えてくれるはずだ。
馬券の肝はヒモ選び。人気面で美味しい存在となりそうなのが、トーセンラーとラストインパクト。前者は名うての京都巧者だが、右回りは全般にわたって見ても安定した走りを見せている。中山での大崩れは敗因が道悪とハッキリ。良馬場条件だが、人気の盲点となりそう。
もう一頭のラストインパクトは重賞2連勝の上がり馬。春の日経賞3着当時よりもはるかにパワーアップしており、G1以外では好相性を誇る金鯱賞からの参戦。父ディープインパクト、母系にビワハヤヒデ、ナリタブライアンの兄弟がいる活力ある血統で、一発の魅力十分だ。