平林雅芳の目

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セントライト記念(Jpn2)
条件からの挑戦。下克上の戦国時代突入か!

そんなに強くはないのだが、シトシトと降る雨で下はかなり濡れてしまっている。
発表は芝はやや重だが、実際はもっと悪くなっている印象である。
昼頃はいったん明るくなった空もまた薄暗くなって、観にくい中山競馬場であった。

わぁー!と驚きの声があがった。

厩務員さんや助手がレースを観戦している2階で観ていた私の目の前を過ぎて、1コーナーを過ぎた瞬間に廻りからも場内からも大きな悲鳴が聞こえた。
いったい何が起こったのか判らない。
キングスエンブレムのゲートオープンからずっと双眼鏡越しに追いかけ、目の前を過ぎるのを肉眼で確認。
好位置をキープしたキングスエンブレムに「やれやれ」と思ったところでの歓声である。
視野の端っこに馬が転倒しているのと、数頭の馬が外へ逃げて行くシーンが見えた。 これは大変な事「何があったんや!」と驚くとともに、とんでもないアクシデントがあったのが判った。
あわてて向こう正面を行く馬達を追いかけるが、何がなんだか競馬に没頭できてない。
3角を過ぎて、4角手前で内の5、6番手を持ったままで進むキングスエンブレムが双眼鏡の中で映っている。
「これはいい!チャンス十分だ!」と期待感が膨らむ。
4角廻って武豊Jの手応えもまだいい。
内の馬を避けるように、馬首を外へ向けて前の馬をさばこうとしている。
勢いもあるし、そこを超えたら、と思うと期待感が膨らむ。
ドキドキと自分の心臓の音が大きく聞こえる。
直線半ばだ、もう出てもいい頃。
まだか、もう先頭に踊りでてもいい。
まだか、まだなのかと双眼鏡を外し肉眼でゴールを探す。

かなり先にあると思っていたゴールがもう直ぐそこである。
キングスエンブレムがいる位置はまだトップでも何でもない。
遅すぎる!
遅い・・!
そして1着に赤い帽子が入ったのが見えた。
そこから間があってキングスエンブレムは6着?
え!7着???・・・。

直ぐ傍で見ていた石坂厩舎の助手の古川さんに思わず声をかけてしまう。
「何着・・?」「7着ですかねぇ・・」とちょっとトーンが落ちた声で返事があった。

そのまま検量室前に降りて引き上げてきたキングスエンブレムと武豊Jが枠場に入ってくるのを待つ。
「すみません。いい手応えだったんですが伸びませんでした。でもウンと良くなっていますよ」と石坂師に報告する武豊J。
悔しさがありありと出ている。
4角までは完璧。
あそこで大きな期待を持ったのは鞍上も一緒だったようだ。

検量室の取材ベースのところに設けてある数台のモニター画面。
レースが終了同時に流れるパトロールフィルム。
数人の報道関係者が見上げている。
何度も何回もゲートオープンから問題の1コーナー過ぎの場面を観た。
最内枠で7、8番手のラチ沿いに居たリノーンリーズンが急に歩様が怪しくなり外へ動きだす。
隣にいたナリタダイコクに寄っていく。
それを察知した動きに、外のダイバーシティなどがモロに影響を受けた。
転倒したリノーンに後から来ていたフジヤマラムセスが乗っかかりこれも落馬。
ナリタダイコクが外へ逃げて、そのまた外へとダイバーシティが逃れる。
その時に鞍上の横山典Jは後を大きく確認するほどの動き。
アクシデントを見て、鞍上の安否まで確認しているかのようなスローな動きであった。
そして最後方のロードニュースターの幸四郎も大きく外へ回避していった。

リノーンリーズンが故障。
それにフジヤマラムセスが絡んで転倒した。
これに大きな不利を蒙ったのが、前に来ている馬ではナリタダイコクダイバーシティ
4着5着だから勝敗まで絡んでいたのは必至だっただろう。
前々で競馬していたグループが入った競馬。
ちょっとゆるくなった馬場コンディションとアクシデント。
好位で追走していたダイワワイルドボアに栄冠が降りてきた、そんな感じだ。
これも運以外の何物でもない。
マイネルチャールズノットアローンの2着争いはわずかにマイネルが凌いだが、馬場にも札幌記念のひと叩きも利いていたのだろう。
キングスエンブレムは馬の間を抜くのに時間がかかってしまい、結局は伸びきれず。
ここらに気性面の課題があるのかも知れない。
ダイバーシティがものすごく大きな星を逃したのと、ナリタダイコクも同様な感じ。
この2頭には運がまだ味方してくれなかったようだ・・・。

ちょっと何とも言えないセントライト記念となってしまった。
菊花賞に通ずるものかは何とも言えない。
やはり今週の神戸新聞杯組が大きく立ちはだかっているような気がする。