平林雅芳の目

トピックス

土曜阪神11R
ラジオNIKKEI杯2歳S(JpnⅢ)
芝2000m
勝ちタイム2:01.7

勝ち馬ロジユニヴァース(牡2、美浦・萩原厩舎)

■・・・ここまで強かったのか!!ロジユニヴァース

いつもどおりにパドックで馬の入場前からスタンバイ。ジックリと馬を観てやろうと待ち構えていた。
周回しだした馬を観ていても、正直リーチザクラウンが勝つものと決めてかかっていた。
ちょっと細めの体は、スッキリしていて見た目にもいい。
逆に2番人気のロジユニヴァースは(あれっ?こんな馬だったっけ?いい馬だったと思っていたのになぁ~)と感じるほどに均整がとれてない、休み明けのような馬体。
『そうか太いんだ!』と、デビュー戦から札幌で大幅に増えて、また今回の10キロ増に答えを見た想いであった。
『これなら怖くもなんともないぞ』
ロードロックスターも、ちょっと締まりのない体をしていると、もう敵ではなく見ていた。
わずかに『元気の良さから、トゥリオンファーレが2着か3着あたりに来そうだな』と思った程度の、パドックでの馬の見立てであった・・・。

ゲートが開いた。 ここの処のリーチザクラウンと違って、ゲートオープンからスコーンと出て行く感じでなく、ややユッタリめで出て行った。
むしろロジユニヴァースが後でもたつくだろうと思っていたのに、ゲートも意外なほどスンナリ出ていて、すぐに先に行こうかの勢いで付いてきた。
『ああ横山典Jらしいな、相手をこの馬と絞っての先行策をとって来たのだな』と、1、2コーナーをリーチザクラウンの後を追走するロジユニヴァース横山典Jを心静かに見つめていた。

向こう正面に入ったあたりで、2番手のロジユニヴァースとの間よりも、ロジユニヴァースとその後続との差の方が大きく開いた。
緩いペースで行っているわけではないのが良く判る。
でもロジユニヴァースも付いていくぐらいのペースなんだから、そう速くもないのだろうとみていた。
2番手で相手をマークする乗り方なんだから、離されて息を入れさすよりも、少しでも接近して存在感をアピールしながらの追走だろうと、横山典Jの心の中が手に取るように判る感じがした。
『しかし相手はそんな普通の馬とは違うんだぞ』と、『リーチザクラウンを負かしにきたら後で後悔するぞ』と、3角過ぎたあたりでは思うほどだった。

3角過ぎて、一旦リーチザクラウンロジユニヴァースの差が開いた瞬間もあったように思ったが、4角手前ではまた接近してきていたロジユニヴァース
その後のグループも当然ピッチをあげて追い上げてきているから、かなり縦の差はなくなった。
直線入り口ではもうそんなに大きな差がなくなった。

4角のカーブで、一旦下がり気味で2番手を譲った格好だったロジユニヴァースだが、曲がりきったところで鞍上が押しあげたこともあり、加速がついて一気に前のリーチザクラウンをも交わした。

内ラチ沿いを廻ったリーチザクラウンは、もう一度伸びるいつもの感じでなかった。
一旦交されたロジユニヴァースとの差は致命的な差となっていて、少し差し返し気味なところは見せたものの、前を行くロジユニヴァースとの差は決定的となった。
外から伸び脚を見せていたトゥリオンファーレとは、勢いからも交わされそうなものではなかった。
でも明らかに勝負に負けた脚色となってしまっていた。
4馬身もの差をつけ、ロジユニヴァースが無傷の3連勝。関東馬ながら遠征先でばかりの3勝目となった。

引き上げてきた馬上の武豊Jに聞くと、『伸びなかったね』との言葉が返ってきた。
それより前に顔面笑みの横山典Jが、『マークして乗ったんだから』と当然の勝利とばかりに声をかけながら、目の前を通って行った。
完敗である。らしくないリーチザクラウン。本当に競馬は難しい。
パドックでロジユニヴァースの馬体をこきおろしてしまった自分の眼。
成長期なんだろうか?
負けたこともショックであったが、これほどに良く見えなかった馬が楽勝したことがショックであり、競馬の難しさをまたまた嫌というほど思い知らされた。

帰り際に橋口師が報道陣に『うちの馬より強い馬がいたという事』と総括して引き上げていった。
本当にその言葉どおりの今回の結果である。あの体で勝たれたらと思ってしまう。でもリーチザクラウンもこれで一息入るだろうし、また充電してのクラシックロードとなるだろう。
まだまだ戦いはこれから長い間続くのである。 負けてイロイロな事を学ぶのだしと前向きに考えておこう。


日曜中山10R
有馬記念(GⅠ)
芝2500m
勝ちタイム2:31.5

勝ち馬ダイワスカーレット(牝4、栗東・松田国厩舎)

■・・・風と共に!!ダイワスカーレットの有馬。

京都からの新幹線の中でも、競馬新聞を穴があくほど見ている人がいたし、中山競馬場へ向う電車内で聞こえる会話は有馬記念のことばかり。
凄い人の数と一緒に駅の改札口を出た。
オケラ街道も、けっこうな血気あふれる人で行きは活気がある。
レースが進みドンドンと場内は混みあって来出した。
目的の場所へは、どうやらいつもの時間では行けないようだ。
パドックを見に行くか、馬場入場から返し馬の方を観るのかの二者択一しかできない様子。
パドックの各馬の気配はモニター画面で見守って、馬場へ入ってくる出走馬を待つことにした。

ダイワスカーレットが早めに内馬場から出てきた。
1コーナーへとキャンターで飛んで行ったのだが、馬場入場の際、鞍上の安藤勝Jを空へ放り投げるように勢いをつけて入ってきた。
競馬業界ではこれを『馬がカブっている』と言う。
これはいい意味合いの表現であり、走りたくて仕方がない時にみせる仕草のひとつで、大体、吉兆である傾向が多い。
(ああ~、いい調子なんだな~)と走りたくて仕方ないダイワスカーレットの背中を羨ましく観ていた。
マツリダゴッホも1コーナーへと躍動感あふれるキャンターで走り抜けて行った。
メイショウサムソン丸山助手中田厩務員さんを左右に引き連れ、ダートコースから芝へと入り二人が手綱を離すと、4角の方へとキャンターで走り去って行った。
武豊Jは気合を入れることもなく、何のアクションもなく静かに午後のまぶしい日差しの方へと向かい、そのまま左へ、3コーナーの方へと走っていくのを観ていた。

スタンドを埋め尽くす人、人、人。
眩しいほどの光の中に、頭ばかりが見えるスタンドは異様な光景だ。
音楽隊の生演奏の後、歓声と同時にゲートが開いた。
3コーナー手前からの観にくいところからのスタートで、場内はアナウンスとオーロラビジョンが頼りだ。
外からダイワスカーレットがスッと先頭に踊り出たのに、一斉に場内から『オーッ』と安心の歓声が上がった。
そして内から白帽子のカワカミプリンセスが、外からあのお馴染みのメイショウの勝負服が、スッと2番手グループに上がって行くのが見えた。
思わず(うん、いいよ!いいよ!)と横山典Jらしい戦法、武豊Jの前が相手、前を負かさねばと勝ちはないと腹をくくった先行策に嬉しくなった。

1周目のゴールを過ぎ、目の前を地面を揺るがす音とともに、それぞれの想いを乗せて各馬が通り過ぎて行った。
軽快に先頭を行くダイワスカーレット、それを追いかけるカワカミプリンセスメイショウサムソン
その姿に、その姿勢に、胸がしめつけられる想いで、『結果はもういい、この先行策だけで有馬記念での役目は十分に果たした』と、私は二人のベテラン騎手の戦法に感謝の言葉を心の中でつぶやいていた。(いい!いい!、これでいい。よくやってくれた)と・・。

3角過ぎ、メイショウサムソンの武豊Jの手綱だけが、いち早くしごかれるのが見えた。
ペースが上がった時に苦しくなってきている様子だ。
まだみんなが動いてない時なのにだ。
そして4角手前で、ダイワを追いかけてサムソン、その外にスクリーンヒーロー、さらにその大外にマツリダゴッホも横に並びしかけてきた。
でもダイワスカーレットの脚色にはまだ余裕があった。

直線を向いて安藤勝Jの右ステッキが飛んだ!
結局、一度も他の馬に並びかけられることなく、先頭でゴールを通過。

2着には、最後方から進んでいたアドマイヤモナークが、直線で大外に出して鋭く伸びる目立つ脚色で突っ込んできた。
そして馬込み中から出てきたエアシェイディと、やはり後方から差し込んできたドリームジャーニーが、ゴール前で重なりあって入った。
一旦は2番手に上がっていたスクリーンヒーローが5着。
マツリダゴッホは外々を廻る競馬になったにしろ、信じられない直線の伸びのなさ。どうしたんだろう・・・?

ウオッカが負け越しているダイワスカーレット
世紀を代表する牝馬2頭。
負けたのが4回だけ、それも大きなレースでしか負けた事がないダイワスカーレット
先行して粘り強い、近代競馬にうってつけの脚質。
着差は2馬身ないほどであるが、完勝と言えよう。
来年は海外遠征が控えているそうだ。
大きな夢を実現しそうなダイワスカーレット
今年は凱旋門賞馬ザルカヴァと強い牝馬の優勝もあった。
今やレディファーストではなく、女性上位の時代だと言えるのではなかろうか。