ジャパンCの海外馬 目玉はフリントシャー[和田栄司コラム]

ウイークエンドロンシャン、ブリティッシュチャンピオンシリーズ、ブリーダーズカップが終了して国際競走の舞台は、日本、香港で行われる極東シリーズに場を移す。まず29日に行われるジャパンカップ、予備登録馬は既に発表されているが、招待受諾馬の紹介はまだされていない。ここでは海外のウェブサイトに載った記事の中から来日濃厚な馬を紹介して行こう。

凱旋門賞が終了した時、2着フリントシャーと3着ニューベイについて、ジャドモントファームズのレーシングマネージャーのテディー・グリムソープ氏は、どちらか日本に行く予定であることを明かした。後日、JC予備登録を見てそれがフリントシャーであることが分かる。また10月15日の米ブラッドホースには、ジャドモントファームズがフリントシャーの次のレースをBCターフにするかJCにするか、決定に苦しんでいると報じている。

仏アンドレ・ファーブル調教師は、当初BCターフとJCの両方のレースを使うことを決めていた。しかし、ダンシリの5歳の息子は、ウエストナイルウイルスの予防接種を受けていない為、両方走ることは許されなかった。また日本の検疫規則によると、米国で走った欧州馬が60日以内で日本に輸送する場合、予防接種をするか、戻って最低2週間欧州に留まっていなければならないルールがある。JRAのJCに出走する期限は11月19日、調教師は悩んだ。

ウエストナイルウイルスのワクチンを接種されていない為、日本と米国の両方での出走が出来ないという条件、陣営はワクチン自体に問題があると考えて接種させなかった。ジレンマはこの2日後、BCターフを回避してJC1本にターゲットを絞ることになったが、BCターフには凱旋門賞を勝ったゴールデンホーンがラストランに選んでいた為、一緒のレースを避けたと陰口を叩かれたが、真相はそうではなかった。

フリントシャー(牡5、父ダンシリ)は、2年連続凱旋門賞で2着した。通算成績は、18戦5勝、2着9回、3着1回、数字が示すように連対率が0.777と凄い。今季は、春先のドバイシーマクラシックを目指したが、いずれもドルニヤの2着に終わった。6月には英国に遠征してコロネーションカップ3着の後、帰国してサンクルー大賞典で2着。更に8月29日、米サラトガ競馬場に遠征してソードダンサーS(芝12F)に出走、中団の内5番手から3コーナーで先頭に立ち、レースレコード2分23秒77で3つ目のG1タイトルを得た。

兼ねてからファーブル調教師は、馬場が良ければフリントシャーの力を相当なものだと認めている。凱旋門賞は3年連続で出走しているが、重馬場で行われた初年度は8着に終わったものの、馬場の良かった昨年と今年は2着、晴天で行われることの多いジャパンカップでは能力を十分発揮出来ると思われる。高速馬場は初めてになるが、今年はテンに速い馬も少なく、中団の前でポジションを取り、直線早めに抜け出しを計ると推測出来るので期待したい。

独ギャロップオンラインが伝えるところによると、9月27日ケルン競馬場のオイロパ賞を勝ってG1初勝利を挙げたナイトフラワー(牝3、父ディラントーマス)がJC参戦を口にした。8戦2勝、2着5回の成績で、唯一の大敗は仏オークスに遠征した時の8着だけである。独オークスは前哨戦を勝ったが2着に終わった。しかし、9月に入り、バーデン大賞で古馬相手に2着と健闘、続くオイロパ賞で2勝目を挙げた。主戦ジョッキーのアンドレアシュ・シュタルケ騎手は短期免許を交付され、前乗りするのも陣営の意欲の表れ。

ドイツからは1日ミュンヘン競馬場のバイエルン大賞典を逃げ切ったイトウ(牡4、父アドレルフルック)もJC参戦に乗り出した。今シーズン、一般戦の後、準重賞、G2を逃げ切って3連勝。その後も、ベルリン大賞2着、オイロパ賞4着とG1戦でも逃げ続けて3戦目にしてG1タイトルを手にした。ここまで10戦6勝、2着1回、3着1回、4歳になって急成長した1頭である。

3日、豪フレミントン競馬場で行われたメルボルンカップで2着に入った愛マックスダイナマイト(セン6、父グレートジャーニー)も、日本と香港から招待を貰って喜んでいる。但し、メルボルンカップ入着馬のJC参戦はあまり良い結果を残していない。メルボルンカップが3200mのマラソン競走で、決して凱旋門賞のようなクラシックディスタンスで行われるレースでないからである。


海外競馬評論家 和田栄司
ラジオ日本のチーフディレクターとして競馬番組の制作に携わり、多岐にわたる人脈を形成。かつ音楽ライターとしても数々の名盤のライナーを手掛け、海外競馬の密な情報を把握している日本における第一人者、言わば生き字引である。外国馬の動向・海外競馬レポートはかねてからマスメディアで好評を博しており、それらをよりアップグレードして競馬ラボで独占公開中。