【振り返れば馬券になる!】今回は参考外!?現役屈指の実力馬の敗因は…

この週末、検量室前で取材した方で同様の感情を抱いた方は多いと思うが、検量室前でショウガの匂いが充満していた。理由は不明。特に酷かったのは土曜のお昼頃で、鼻が曲がるような匂いであった。

東京競馬場では天皇賞(秋)が行われた今週末から、『振り返れば馬券になる!』をお届けする。ルメール騎手渾身のガッツポーズのすぐ脇で、肩を落とす2着のモレイラ騎手の表情は実に印象的であった。出遅れて流れに乗れず10着と大敗したスワーヴリチャード(牡4、栗東・庄野厩舎)に騎乗したデムーロ騎手はこれまで見たことのないくらい落ち込んでいた。悲しげな表情で「スタートでぶつかってしまい終わってしまいました。久々で気持ちが足りなかったです」と振り返るイタリア人名手。勝負事の難しさ、競馬の奥深さを改めて感じる2日間だった。

ただし今年の天皇賞(秋)はレース後半1000mが57.4。これは東京芝2000mにおいて歴代2位タイに速く、かつ今の東京芝は走りやすく上がりが出やすい馬場を考えれば、後方になった時点でチャンスはほぼないと言っていいだろう。現役屈指の実力馬スワーヴリチャードは本来持続力で勝負するタイプ。展開も合わなかった。次走で人気を落とすようなら逆に妙味があるのではないか。

とにかく東京芝の上がりが速い。春の東京開催も速かったが、この秋も高速上がりがバンバン飛び出し、「上がりが速く厳しいレースだった」と話す騎手は少なくない。影響を受けた1頭と思われるのが、日曜の東京10R・紅葉Sで7着のバティスティーニ(牡5、栗東・池添学厩舎)。速い上がり勝負にも強い父キングマンボ系だが、この馬自身は速い上がり勝負が苦手なクチ。メンバー中上がり3F最速タイムだったのは、これまでの14戦でわずか2度。どちらも35秒台であった。レース上がり3F33.5で勝ち馬が上がり3F32.9というレースではどうしてもラスト苦しくなってしまう。騎乗したルメール騎手も「リラックスしてレースに臨めました。よく伸びたが、ラスト150mで甘くなってしまいました」と話していたように、上がりが速過ぎた可能性が高い。上がりの掛かるコースに替わって巻き返しを狙う。

芝からはもう1R。土曜の東京2R・2歳未勝利で4着だったトーセンジンライム(牡2、美浦・古賀史厩舎)。デビューは芝1200mだった馬で、距離を伸ばしながら8→5→6→4着と次第にパフォーマンスを上げてきた。騎乗した江田照男騎手は「今日の上がりだと厳しい」と、レース上がり3F33.2を敗因に挙げる。ただ江田騎手の表情は明るい。「使いつつレースぶりは良くなっていますよ。距離は守備範囲だし、次が楽しみ」と期待感を抱いていた。ローレルゲレイロ産駒と一見地味な血統だが、半兄は東京スポーツ杯2歳Sなどを制したブレスジャーニー、母系はエアグルーヴらと一緒。『隠れ良血』を次回も忘れずに購入しておきたい。

ダートからは日曜の東京2R・2歳未勝利で11着だったケイアイブロンズ(牡2、美浦・池上和厩舎)。1番人気に推されたものの、行きっぷりが本物ではなく、ズルズル下がって大敗してしまった。管理する新進気鋭の若手調教師・池上昌和師は「2戦目から今回まで続けて使った分、中間はケアしながら調整していたんです。その分テンションが高かったですね。そして鼻出血を発症していました…」と苦い表情を浮かべながら敗因について話してくれた。力のある馬だけに、リフレッシュしてからまた実力を発揮してくれることだろう。


レース後、ジョッキーたちから発されるコメントは様々である。
「うまくいった」
「調子が良かった」
「馬が強かった」
etc…

もちろんこれらのコメントも非常に重要ではあるのだが、よりオイシイのは、負けたジョッキーのコメントだろう。検量室に引き上げてくるジョッキーの表情はそれぞれ違う。悔しそうな表情を浮かべて戻ってくるジョッキーも多い。道中の不利、自身のミス、理由は様々だが、彼らのコメントこそ、次に繋がる。このコーナーでは現場にいたからこそ知りえる敗因、そしてジョッキーの表情などを取り上げながら、次走以降妙味のある馬を挙げていきたい。