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重賞メモランダム【皐月賞】
2010/4/20(火)
日曜の中山は、晴天に恵まれた。ただし、前日まではみぞれ交じりの雨。なかなか気温も上昇せず、馬場の乾きが遅い。9R以降はやや重に回復したものの、上がってくるジョッキーのゴーグルには泥が付いている。上位拮抗の様相に、馬場適性というファクターも加わり、直前になっても豊富な役者の顔ぶれがくるくると頭のなかを駆け巡っていた。4Rの3歳未勝利(芝2200m)をユウガナルで勝った岩田康誠騎手は、「馬場が重い」とひと言。続けて話そうとして思い止まったのは、皐月賞へ向けて強気なコメントを期待する報道陣の心を察知したからに他ならない。感性で乗るタイプでも、この日はひしひしと押し寄せるプレッシャーを隠そうとしなかった。「作戦は企業秘密」と言い残し、足早に検量室内へ去っていった。
不可抗力とはいえ、直前の10R(セントラルコースト)ではスタートで落馬。その実力を考えれば、最近は流れに乗れていないように映る岩田騎手の御法が、今年の皐月賞ではひとつの焦点となった。
それでも、ヴィクトワールピサ(牡3、栗東・角居厩舎)は、パドックでも他を圧倒する輝きを放っていた。不穏なムードを簡単に打ち破ってしまうほどの能力も、実証済みである。
「責任重大な代打騎乗。落とせないレースだと思っていたが、武豊さんが教え込んだだけあって、とても乗りやすかった。特有の重厚感があり、僕よりも馬のほうが落ち着いていたからね」
折り合いに専念したぶん、前半の位置取りは中団より後ろだったが、脚を温存しながらも、勝負どころでは無理なく射程圏に進出。終始、インにこだわったことが、同馬の決め脚を際立たせた。熾烈な2着争いを尻目に、1馬身半の差。ぐいと抜け出した瞬間に、勝利を確信した岩田騎手は、左腕を突き出しながらゴールした。まさに会心の騎乗だった。
「本番前のレースは、どこを通るかをイメージして乗っていたよ。内が荒れていても、外も水分を含んで走りにくいと見た。勝ってくださいという感じで、1頭ぶん開いたところを突いたんだ」
岩田騎手と同様、ネオユニヴァース産駒がアンライバルドに続く連覇を飾った。瞬発力が持ち味のサンデーサイレンス系のなかでは、強靭さも兼ね備えた血であり、ここ一番で真価を発揮する。母系も確か。半兄に安田記念に勝ったアサクサデンエン(父シングスピール)やスウィフトカレント(父サンデーサイレンス、小倉記念優勝など)がいる。
「現時点でも課題は見当たらない。精神面を整えることや、柔軟性を高めて故障させないことに全力を注ぐだけ」
と、角居勝彦調教師。晩成の傾向にあるファミリーなのに、同馬は5連勝でクラシックの一冠目を奪取。断然の完成度も誇っている。
「育成時代から誰もがトップホースと見込んでいた。まだ半分の夢がかなったところ」
と話すのは、生産者であり、共有馬主でもある社台ファームの吉田照哉代表。早くも気持ちはダービーへ飛んでいる。主戦の武豊騎手がどんな手綱さばきを見せるのか、いまから楽しみでならない。
勝ちタイムは2分0秒8。馬場状態を考慮すれば速く、同馬の優越性とともに世代レベルの高さも物語る。
2着にはヒルノダムール(牡3、栗東・昆厩舎)が追い込んできた。勝ち馬とは対照的に外を回しながらの健闘だけに価値がある。
「4コーナーで詰まり、いったんブレーキをかけた。あれは痛い」
と、藤田伸二騎手。ダービーでも侮れない一頭となった。柔軟なフットワークは見どころがたっぷりあり、距離延長の不安はない。母父ラムタラの影響を受け、気性面はいかにも粗削り。これから伸びる余地もかなり残されている。
11番人気に甘んじていたエイシンフラッシュ(牡3、栗東・藤原英厩舎)が3着。鼻肺炎による熱発があり、京成杯から3か月もレース間隔が開いてしまったとはいえ、さすがに徹底的に馬づくりを追求するプロ集団の仕事。直前の追い切りでも絶好の反応を示していた。決して恵まれての好走ではない。キングズベスト産駒で、母父はプラティニ。こちらも距離延長は大歓迎である。
4着のローズキングダム(牡3、栗東・橋口厩舎)は、もっと切れ味が生きる馬場が望み。ただし、今回も馬体を減らしてしまい、たくましさに欠けることも確か。どうつくり直してくるのか、今後の調整に注目したい。
先行タイプに厳しい展開のなか、アリゼオ(牡3、美浦・堀厩舎)が5着。大外枠の不利もあった。平均ペースで流れれば、ダービーでの巻き返しは十分にある。
大きく期待を裏切ったのが、11着に敗れたエイシンアポロン(牡3、栗東・岡田厩舎)。スローに流れた弥生賞(2着)では差のない競馬ができたものの、体型を見ても、この距離は長かった印象。
ヴィクトワールピサが一歩抜け出したことは間違いないが、別路線組にも、注目馬が多い牡馬クラシック戦線。上位勢の順位が固まったわけではなく、まだまだ難解な戦いが続く。
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