研究員ヤマノの重賞回顧

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12月8日(土)、阪神競馬場で行われた鳴尾記念(3歳上、G3・芝1800m)は、好位からレースを進めた8番人気ハイアーゲーム(牡6、美浦・大久保洋吉厩舎)が、逃げていたエイシンデピュティをゴール前ハナ差交して、3年7ヵ月ぶりに重賞勝ちを成し遂げた。

ハイアーゲームと言えば、キングカメハメハ、ハーツクライと激闘を繰り広げたダービーをまず思い浮かべるファンの方も多いことだろう。
当時のそのライバル2頭はとうに引退しているだけに、ハイアーゲームのこの復活劇は驚嘆に値する。
ダービーでは、今をときめくダイワメジャーに大きく先着しているのだから、復調さえすればこれくらい走れても全く不思議はないのかもしれないが、今まで9戦して連対すらなかった右回りで復活を成し遂げるとは、ただただ頭が下がるばかりだ。
そしてドラマチックな復活劇は、今年の有馬記念へと続き、今年のグランプリをまた一段と盛り上げて私たちを楽しませてくれることだろう。
ところで、このハイアーゲームの華々しい復活劇とは対照的に、儚く散っていった馬がいたことを忘れてはならない。
3年前の覇者サクラセンチュリーである。
同馬は3走前のハイアーゲームと同様、長期休養からここを足がかりに復活に向けて再スタートを切るはずだった。
ところが、最後の直線で足元に故障を発生しレースを中断。診断の結果は左前繋靱帯断裂で予後不良。こんな悲劇の結末を迎えることになろうとは…。
残念ながら、この馬の勇姿を見ることはもうできない。
年の瀬を前にして、思い起こせば今年も不幸にして去っていった馬たちがいた。
ナタラージャ、モノポール…不幸にして去っていった彼らのことを、私たちは決して忘れはすまい。
『華やかな光と、儚い翳は表裏一体』。
そんな複雑な思いを噛み締めさせられた今年の鳴尾記念だった。


翌9日(日)、中山競馬場で行われた朝日杯フューチュリティS(2歳牡牝、Jpn1・芝1600m)は、好スタートを決めた3番人気ゴスホークケン(牡2、美浦・斎藤誠厩舎)が、道中軽快に脚を伸ばし、最後まで後続を寄せ付けることなくそのまま逃げ切り快勝した。

このゴスホークケン、鷹(ゴスホーク)と犬を組み合わせたというユニークな名前のイメージとは裏腹の物凄いポテンシャルを秘めていた。
最終追い切りでは、美浦のポリトラックで65.0-50.4-37.2-11.6の時計をほぼ馬なりでマーク。
まだデータが少ない新設されたコースで時計の目安が掴み切れていなかったが、それでもこの時計はレース前に大きく注目できたほど優秀なものだった。
そして1/8の抽選を乗り越え、さらに起用に立ち回れるこの馬に打ってつけの1番枠を引く強運ぶりには驚かされた。
もちろん運だけではなく、その強さも際立っていた。
抜群のスタートを決めると、あれよあれよと言う間に逃げ切り勝ち。
優勝タイムはマイネルレコルトのレコードにあと0.1秒なのだから、“鷹犬”まさに恐るべし!
そういえば、先週の阪神JFを優勝したトールポピーも抽選をくぐり抜ける強運を持ち合わせていた。
強い馬というのは、生まれながらに天運までも手繰り寄せる力をも持ち合わせているのかもしれない。