研究員ヤマノの重賞回顧

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2月2日(土)、東京競馬場で行われた東京新聞杯(4歳上、G3・芝1600m)は、道中先頭1、2番手でレースを引っ張った藤田伸二騎手騎乗の6番人気ローレルゲレイロ(牡4、栗東・昆貢厩舎)が、後続を引きつけ直線ギリギリまで追い出しを我慢する味なレースで、13番人気リキッドノーツの猛追をクビ差抑え優勝した。
さらにハナ差の3着に12番人気タマモサポートが入線し、3連単2,543,450円の大波乱の決着を迎えた。なお、1番人気のカンパニーは4着に敗れた。

優勝したローレルゲレイロは意外にもこれが重賞初勝利だった。
今までG1で2回の2着を初め、重賞で5回も2着していた実力馬にしてみれば、この勝利は少し遅すぎたとさえ言えるかもしれない。
それでも、NHKマイルC 2着後は4走連続二桁着順と低迷を続けていただけに、今回の勝利は格別だろう。
ところで今回の見事な復活劇の予兆が、調教で顕著に現れていた事をご存知だろうか?
直前の追い切りで栗東坂路1番時計をマークし、さらにその前の週にも、2番時計の馬より1秒以上も速い1番時計をマークしていたのだ。
馬の状態の判断は、時計だけでは推し量れない部分はもちろんあるが、この“2週連続で好調教”というのはかなりプラスポイントとなることを覚えておいてほしい。
さらに、今回の調教時計が、好調時の昨年春の自己ベストを上回っていた以上、ノーマークにはしてはいけない。
2着馬リキッドノーツにしても、直前の追い切りは抜群の内容だった。 好調教馬が見事に結果を出した今年の東京新聞杯だったと言えよう。


翌2月3日(日)、京都競馬場で行われた京都牝馬S(4歳上牝、G3・芝1600m)は、好位からレースを進めた安藤勝己騎手騎乗の2番人気アドマイヤキッス(牝5、栗東・松田博資厩舎)が、逃げ粘る9番人気ザレマをゴール前で差し切り優勝した。さらに1.1/2馬身差の3着には6番人気キストゥヘヴンが入線した。1番人気のブルーメンブラットは追い込むも届かず4着に敗れた。

勝ったアドマイヤキッスは、3歳時は牝馬クラシック3冠で全て1番人気に支持されたほどの素質馬。
昨年は常に掲示板は賑わすものの勝ちきれない競馬が続いていたが、これでようやくキッカケをつかんでくれたことだろう。次戦が真に楽しみである。
ところで、私が戦前から注目していたのは、1番人気に支持されたブルーメンブラットの方だった。
というのは、立て直した秋3戦の充実ぶりには目を見張るものがあったのだが、この馬の好走に待ったをかけるマイナスデータが存在したからなのだ。
それは過去10年で14番以降の枠に入った馬は3着以内に皆無だったというデータだ。
8枠の馬はそれなりに結果を出していた馬もいるのだから、多頭数の外枠は不利だという傾向だということなのだろう。
もちろん今回の敗因はそれだけではないだろうが、少なくとも不安要素として警戒することはできたはず。
なるべくマイナス要素や死角が少ない馬を探すこと。それが馬券的中への一番の近道なのだろう。


翌2月4日(月)、東京競馬場で行われた根岸S(4歳上、G3・ダート1400m)は、中団を追走した岩田康誠騎手騎乗の1番人気ワイルドワンダー(牡6、美浦・久保田貴士厩舎)が、逃げる5番人気タイセイアトムを1.1/4馬身差し切り優勝した。さらに1/2馬身差の3着には3番人気アドマイヤスバルが入線した。

勝ったワイルドワンダーは、戦前、G1フェブラリーSが最大の目標であり、ここは叩き台の一戦だと囁かれていた。だから多くの人は今回勝負度合いは高くはないと踏んでいた向きもあるのだが、それでこの完勝とも言える強い勝ち方をするとは。これは本番でもいよいよ目が離せない存在となった。前途洋々だ。
ところで、その華やかさとは裏腹に、このレースを最期に生涯を終えた、名バイプレーヤーとも呼べるべき存在感たっぷりの優駿がいたことも、どうか忘れないで欲しい。
その名はトウショウギア。
故障によりレースを中止した彼に下されたのは、予後不良という悲しい宣告。
この悪天候に見舞われなかったらどうだったのだろうかと考えると、今更ながら残念でならない。
ダートの全11勝のうち過半数の6勝までもを東京ダ1400mで挙げていたスペシャリストだっただけに、今後のこの路線が寂しくなるのは間違いないだろう。
それにしても、この“予後不良”という悲しい言葉が、科学の進歩などにより近い将来聞かなくなることを切に願う。今はただ、彼の冥福を祈るのみである。