関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

榎本優也調教助手

防音対策でメンコを新調

-:向こうでのエサとか水の手配とかはもちろんちゃんとしていると思いますが、ジャスタウェイならではの工夫というのはありますか?

榎本優也調教助手:こっちから持っていける限りの物を揃えてもらっているので、取りあえず普段通りにやってみて、様子を見ながら調整していこうと思っていますけどね。

-:向こうの民族衣装でターバンを巻いている姿とかに反応しなければ良いですけどね?

榎:ハハハ(笑)。意外にそういうのは大丈夫だと思いますけどね。

-:花火も、馬房は防音をされているところにあるから、そんなに影響はないみたいな話は聞いていますが、それにももしかしたら反応するかもしれないですよね。

榎:それは結構早い内から言われていたので。オーナーさんとか、ドバイに行ったことがある人がそういう話をしていたので、一応いつもよりもシッカリとメンコは防音できるような素材のやつを作ってもらったりはしました。

-:耳の綿を多めにとかですか?

榎:そうです。ウェットスーツみたいな素材を使っているみたいなんです。レースでは外しますけどね。



-:ゲートに入る前に外すのですか?

榎:外してもらう感じです。何か僕らはゲートまでは付いていけないみたいなので。そういうことも初めてなんでね……。

-:馬が戸惑うかもしれないですね?

榎:そこも心配と言えば心配ですね。もともと厩舎にグルームが付いてくれるという話もしていたんですけど、その人らはパキスタン人とかインド人みたいなので、現地の人ではないのかもしれないですね。

-:そういうゲート入りの時に榎本さんがいなくても馬が戸惑わないようなスクーリングはするのですか?

榎:向こうに行ってからはできないですもんね。一応、向こうに行ってからもゲートを練習した方が良いかな、という話を今日、ユウイチさんとも話をしたので、するつもりではいますけど、僕が全く触らないで、という練習はできていないですよね。

-:ただ、馬体減りを回復させたい時に、ゲート練習をするというのも馬にとっては?

榎:様子を見てよほど酷かったら、それどころじゃないかなと思います。



テレビの前でパドックの気配に注目

-:レースの1週前に出ていくことになるのですが、ほとんど向こうで調教をするというのは頭にはないという感じですね?

榎:やるとしても、本当にサッと、というところですね。

-:でも、それが世界で勝っている馬の主流になりつつありますからね。追い切り映像を見ても本当にキャンターで、多分カーリンとかもすごいカニ歩きの映像を見せられて、これで何が分かるのかなというので勝っていたから。

榎:ユウイチさんもそういうのを知っていて言っていたのかもしれないですけど「気を緩め過ぎないようにだけお願いします」と言われたので。多分、それは先生にも伝わっていると思うので。

-:良い意味でピリッとした状態で?

榎:ちょっとピリッとさせる程度のことはするのかなという感じです。

-:あの馬の性格的に緩くなり過ぎるというのはあり得ないと思いますが?

榎:多分、僕が今日見ていた感じですけど、入りがちょっと遅かったでしょ。最近は本当に乗りやすいんですよ。その分、緩んでいるのかなと感じたのかもしれないですけどね。

-:それはトレセンの環境での追い切りで見せる仕草で、レースとはまた違いますからね。

榎:でも、今までで一番乗りやすいぐらいのスタートをしたんじゃないですか。僕も最近は思いますもん。

-:それは良い意味で古馬になってからのズブさと、体の成熟とが噛み合ってきたということですね?

榎:すごく良い意味で僕は捉えていますけど。



-:あとは今持っている良い体のラインを、いかに萎まさずに本番を迎えられるかですね。体重的にはどれぐらい減っても大丈夫な計算でいるのですか?

榎:取りあえず最後に量ったのは先週になってしまいますけど、10キロくらい減っても天皇賞(秋)よりは増えている感じです。この間の中山記念と変わらないくらいかなと思います。

-:ファンがテレビで見ていて、体重以外に体のラインとか丸み、その辺を注目しておいたら良いですね。あとは気合が乗り過ぎて、テンションが高くなっていてもダメでしょうしね?

榎:そこが一番重要かもしれないですね。

-:メンコを着けていたら、それほどでもないかもしれないけど。

榎:結構、ダメな時はダメなんですよ。中山記念の時はすごく大人しかったんですけど、前に中山金杯で行った時は大変だったんですよ。そこは本当に読めない。

-:金杯と言うと、1年前の話ですね。去年1年間で、ジャスタウェイはかなり成熟度合がアップして、晩成のハーツクライの血が騒いでいるのではないですか?

榎:はい。お父さんにちょっとでも近付けたら良いなと。

-:瞬発力だけだったら、お父さん以上にあるかもしれないですね。お父さんよりもフットワークは良いと思います。

榎:勝ちたいですね。本当に一生に一度の大チャンスでしょう。

-:榎本さんは今年2勝もしている連勝男ですからね。最後にジャスタウェイを応援している方はかなり多いと思うので、夜中にテレビを観て熱くなるであろうファンにメッセージをお願いします。

榎:去年の末からドンドンと力を付けてきてくれて、中山記念でも良い競馬をしてくれました。本当に最高の形でドバイに向かうことができそうなので、あとは輸送をクリアしてもらって、ジャスタウェイらしい走りを見せられるようにシッカリとやっていきますので、応援よろしくお願いします。

-:まずはとにかく無事で、日本のファンにジャスタウェイの勇姿を見せていただけるように頑張って下さい。ありがとうございました。

●ジャスタウェイの榎本優也調教助手インタビュー(前半)はコチラ⇒

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●前回のジャスタウェイについてのインタビューはコチラ⇒



【榎本 優也】Yuya Enomoto

競馬ラボでは『トレセンLIVE!』のコーナーでコラムを担当。
大の競馬ファンである父親の影響で、幼い頃から阪神競馬場、京都競馬場へ足を運んでいた。 武豊騎手に憧れてジョッキーを志すも、目の悪さで受験資格をクリア出来ず断念。 しかし、競馬関係の仕事に就きたいという思いに変わりは無く、牧場勤務を経て、25歳の時にJRA厩務員課程へ入学し無事卒業する。

しばらくの待機期間を過ごし、09年5月に須貝尚介厩舎で待望の厩務員生活をスタート。 7月には持ち乗り助手となり、それ以来、2頭の競走馬を担当している。

同年10月17日、4回京都3日3Rの2歳未勝利で、担当馬ニシノマナザシに初めて武豊騎手が騎乗。 憧れの存在との初仕事に喜びと緊張を感じる。

その後は、アスカクリチャン、アスカトップレディ、クリーンエコロジーなど、厩舎の代表馬の育成を担当。2012年に担当するジャスタウェイがアーリントンC(G3)で重賞初制覇。NHKマイル、日本ダービーと駒を進め、遂には2013年に天皇賞(秋)をも制覇。G1という頂に辿り着いた今、更なる飛躍へ向けて、日々精進している。


【高橋 章夫】 Akio Takahashi

1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて17年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。


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